「楽天ラクマ」「楽天市場」の連携強化で10兆円達成へ加速も 事業戦略の記者説明会でわかった取り組みと狙い

桑原 恵美子

左から楽天グループ株式会社 長谷川 健一朗氏、髙間 真里氏

楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「楽天」)は2023年9月1日、楽天ポイントが貯められるフリマアプリ「楽天ラクマ」と「楽天市場」の連携強化を中心とした、事業戦略の記者説明会を行った。以下、その概要を紹介する。

物価高に苦しむ楽天ユーザーのニーズに応えたい

楽天は、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」とフリマアプリ「楽天ラクマ」の連携を強固にすることで、「楽天エコシステム(経済圏)」内での利便性を向上させ、モノとお金の循環を促進させることを目的とした戦略「サーキュレーション・ストラテジー」に取り組んでいる。

楽天グループ株式会社 コマース&マーケティングカンパニー 執行役員 市場編成部 ジェネラルマネージャー 髙間 真里氏は、楽天がこうした戦略を考えるに至った要因として、物価高による楽天ユーザーの消費環境の変化をあげた。

「消費者の皆様が価格に非常に敏感になっていることを、実際にサービスを提供していて日々切実に感じている。『よりお得に買い物をしたい』というニーズが高まり、ポイント獲得についても非常に関心が高くなっている。そこで、特にマーケットとして成長著しいCtoCで、より賢くよりお得にお買い物をしていただく施策を提供することで、お客様のニーズにお答えしていきたいと考えた」(髙間氏)

「楽天ラクマ」と「楽天市場」のクロスユース(併用利用)を30%まで引き上げる

成長著しいCtoCを成長戦略に使うために楽天が重視しているのが、楽天ポイントを貯めることができるフリマアプリ「楽天ラクマ」。2012年にスタートした日本初のフリマアプリ「フリル」と、2014年に楽天が作ったフリマアプリ「ラクマ」が統合して2018年に誕生したフリマアプリだ。2018年からは売上金が「楽天キャッシュ」にチャージが可能になったことで利用者が急増し、2021年には3000万ダウンロードを突破。昨年4月にリブランディングし事業者も参加できるようになったことで、さらにサービスが拡大している。

楽天ラクマの特長は、お客のメインの年齢層が低いこと。10代から30代が6割以上を占め、楽天グループ内での若年層の会員獲得に貢献している

楽天グループ株式会社 コマース&マーケティングカンパニー ラクマ事業部 ジェネラルマネージャーの長谷川 健一朗氏は、「楽天ラクマ」が注力している領域は、①新たに事業者が出店できるようになった「ラクマ公式ショップ(リユース)」、②楽天グループの連携、③越境ECの3分野だと語る。

「ラクマ公式ショップ」の1店舗あたりのYoY(前年比)平均成長率約1.6倍と伸びている(※1)。また「楽天ふるさと納税」といった他の楽天グループのサービスとの提携も拡大しており、越境ECの月間取引は1年間で約5倍(※2)と急速に伸びている

※1 毎月10万円以上の取引がある「ラクマ公式ショップ(リユース)」出店事業者さまの、2022年6月度と2023年6月度の同時期比較。取引金額ベース
※2 2023年2月1日~2月28日の「楽天ラクマ」における越境取引での取引数と、2022年同期間における取引数を比較


「当社が成長戦略としてフォーカスを当てているのは『楽天市場』と『楽天ラクマ』の連携。『楽天エコシステム』の強みを生かし、グループ・サービスとの相互送客およびクロスユース(併用利用)を促進して、お客様にさらなる利便性を提供することで、成長を目指していく」(長谷川氏)

「楽天ラクマ」と「楽天市場」の連携を強める最大の狙いは、お互いの足りない部分の相互補完。特に、10代から30代が6割以上を占める「楽天ラクマ」の若年利用者を、利用者の年齢層が上がってきている「楽天市場」に取り込むことに大きな期待を寄せている。

現在「楽天市場」のユーザーで「楽天ラクマ」も併用利用しているクロスユース率は約6%。楽天ではこれを30%まで引き上げるのが当面の目標だという。

「まだわずか6%しか併用利用がないので、非常に高いポテンシャルを持っていると見ている」(髙間氏)

サーキュレーション・ストラテジーのための施策とは

楽天ではECでの商品購入の選択肢の拡大や、不用品の出品・売却のユーザー体験を向上させ、「楽天市場」との回遊性を高めて相互送客を実現するために、以下の3つの施策を打ち出している。

施策①「楽天ラクマ」併用+買いまわりで「楽天ポイント」がもらえる
9月4日から始まっている「楽天スーパーSALE」および8月4日から始まっている「お買い物マラソン」の期間中に「楽天ラクマ」で1,000円以上買い物をすると、「楽天ポイント」の付与率がアップ。もらえるポイントが最大11倍になる。

施策②「楽天市場」で検索すると「楽天ラクマ」の商品も表示される

2022年10月より、「楽天市場」での商品検索時に、特定の検索ワードに該当する商品は、検索結果として「楽天ラクマ」で出品されている商品情報も表示されるようになっている。つまり、新品で購入できる価格と、中古品として購入できる価格の両方が表示されるので、より広い選択肢から比較検討できるようになっているのだ。

「楽天市場」での商品検索時に、「楽天ラクマ」で出品されている商品情報も表示されるように

新品より安い中古価格が同時に表示されると、価格の高い「楽天市場」での売上が下がるのでは、と思うが結果はその逆だそうだ。「楽天ラクマ」を新規利用したお客は、「楽天ラクマ」を利用したことがない顧客と比較すると、「楽天市場」での年間購入金額が8%高いということが、データに現れているという。また「楽天ラクマ」の売上金の使い道で、最も多いのは「楽天市場」で、4割以上を占めているというデータもある。

「あくまでも推測だが、『楽天ラクマ』に親しんだ方が自身の使わなくなった物を『楽天ラクマ』で売るようになり、貯まった『楽天キャッシュ』を使って『楽天市場』でお買い物をされているのでは」(髙間氏)

施策③「楽天市場」で購入したモノなら、「楽天ラクマ」に自動的に出品できる

フリマでの出品は、商品の詳細を記入したり価格を設定したりという手間がかかるので、敬遠する人が多い。だが「楽天市場」での購入し不用になった商品なら、購入履歴「持ち物リスト」から簡単に「楽天ラクマ」に出品できる「自動出品機能」が実装されている(「楽天ラクマ」アプリで23年1月~、「楽天市場」アプリで 8月下旬~)。

「楽天市場」での購入した商品は、自動的に「楽天ラクマ」に出品できる

実際、2022年11月に、「楽天市場」で「楽天ラクマ」または他社フリマアプリを併用している利用者に「購入履歴から「楽天ラクマ」への自動出品機能を利用していたいかどうかを聞いたところ、7割以上が「利用してみたい」と答えたという。

大型セール企画×「楽天ラクマ」「楽天市場」の連携で、成長を加速

楽天の国内EC流通総額の推移を見ると、2022年の年間流通総額は5.6兆円に達している。楽天では今後、さらなるシェア拡大を図り、2030年に10兆円の流通総額達成を目指している。

その牽引力となりそうなのが、年間流通総額3兆円(2020年)を超える「楽天市場」。2023年1月から3月は購入者数が2020年同期より29.1%、購入単価は16.6%アップしている。流通額を底上げしているのが、「楽天スーパーSALE」「お買い物マラソン」などの大型セール企画で、大型セール企画の難関流通総額の4年平均成長率は23.8%にのぼる。また「楽天ラクマ」との連携も大きく寄与している。

「『楽天市場』のショップの買いまわりに『楽天ラクマ』の買い物が適用されるようになったことで、『楽天市場』での購入頻度が増えたという人が3割以上にのぼることもわかっている。楽天では、こうしたデータからも『楽天市場』と『楽天ラクマ』の連携を今後さらに加速させ、もっと便利なサービスに進化させていきたい」(髙間氏)


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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