飲酒で胃がん・大腸がん・食道がん等リスク増! 厚労省が「飲酒ガイドライン」公表で酒類販売に翳りも

ECのミカタ編集部

厚生労働省は2024年2月19日、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表した。2023年11月に案が公表されて以来、酒類を販売する事業者を中心に高い関心を集めてきたが、正式にガイドラインが公表されたことで、国内市場にどのような影響を与えるのか、いよいよ注目されそうだ。

「考慮すべき飲酒量(純アルコール量)や配慮のある飲酒の仕方」が示される

2024年2月19日に厚生労働省が公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、「アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されることを目的」に作成された。

端的に言えば「適切な飲酒量の判断」に役立てられるように、酒に含まれるアルコールの量(純アルコール量)での健康へのリスクを示したものとなる。

アルコールによる影響には個人差があり、体調によっても影響には差が出るが、世界的にも増加傾向にある「脳卒中」や、「高血圧」「胃がん」などの要因ともなっている。

だからこそ、今回のガイドラインでは、基礎疾患等がない20歳以上の成人を中心に、飲酒による身体等への影響について、年齢・性別・体質等による違いや、飲酒による疾病・行動に関するリスクなどを分かりやすく伝える。その上で、「考慮すべき飲酒量(純アルコール量)や配慮のある飲酒の仕方」、飲酒の際に留意したい事柄(避けるべき飲酒等)を示すことにより、飲酒や飲酒後の行動の判断等に資することを目指すという。

大腸がんの場合は、1日当たり20g程度以上の量の飲酒で発症の可能性上昇

「考慮すべき飲酒量」のポイントとなるのは、「純アルコール量」だ。飲んだ酒量のうち、「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」で計算できるという。

例えばビール500ml(5%)の場合の純アルコール量は「500(ml)×0.05×0.8=20(g)」で20gとなる。

ガイドラインによれば、世界保健機関(WHO)では、アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略を示しており、また、循環器疾患やがん等の疾患の予防コントロールのため、アルコール有害使用の削減に関する目標なども含めた行動計画を発表している。また飲酒量(純アルコール量)が少ないほど、飲酒によるリスクが少なくなるという報告もあるという。

気になるのは、目安だろう。

例えばガイドラインでは、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまう。また大腸がんの場合は、1日当たり20g程度(週150g)以上の量の飲酒を続けると発症の可能性が上がるという研究結果もあるとしている。なお、これら研究結果に基づく疾病ごとの発症リスクが上がる飲酒量(純アルコール量)については、以下の表に示したものが参考となる。

出典:厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(ECのミカタで編集)


【注】
・上記の飲酒量(純アルコール量)の数値のうち、「研究結果」の欄の数値については、参考文献に基づく研究結果によるもので、これ以上の飲酒をすると発症等のリスクが上がると考えられるもの。
・「参考」の欄にある数値については、研究結果の数値を元に、仮に7で除した場合の参考値(概数)。「0g<」は少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるもの。
・「関連なし」は飲酒量(純アルコール量)とは関連がないと考えられるもの。
・「データなし」は飲酒量(純アルコール量)と関連する研究データがないもの。
・「※」は現在研究中のもの。なお、これらの飲酒量(純アルコール量)については、すべて日本人に対する研究に基づくもの。


その他の参考として、国内では「生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上)を飲酒している者の割合を男性13.0%、女性6.4%まで減少させること」を重点目標として示している。

さらに2024年(令和6年)度開始予定の「健康日本21(第三次)」では、「生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上)を飲酒している者の減少」(※)を目標とし、男女合わせた全体の目標値として10%を設定し、健康づくりの取組を推進することとしている。

※これらの量の飲酒をしている者の減少を目標としたもの。なお、これらの量は個々人の許容量を示したものではない
厚労省では、今回のガイドラインを通じて、適切な飲酒量の指標として「純アルコール量」の活用を浸透させたい考えを示している。

「若い世代は飲酒量が減っている」とされる中、ガイドラインでさらに酒類の販売量は落ちるのか

経済産業省が2021年9月に公表したレポートによれば、国内酒類市場は縮小傾向にある。コロナ禍の影響もあったが、酒類消費は、家庭内の消費額が7割程度を占めており、家庭内での消費の動向が、国内酒類市場に強く影響すると考えられるが、その家庭内での消費額が2013年以降、微減傾向にある。

特に、「若い世代ほど飲酒習慣が少ない傾向」があり、世代ごとに、飲酒習慣(週3日以上かつ1回に飲む酒量が1合以上)を持つ人の割合を見ると、40代から60代の世代でその割合が高く、各世代とも3割弱と高めだ。だからこそ今回の厚労省のガイドラインが意味を持つとも言える。

しかし、若い世代は買わない、40代以上の、いわば酒類販売のメインターゲット世代も「アルコール健康障害の発生を防止」するために購入を控える様になったらどうなるのか。

経産省のレポートでは「他方で、近年、酒類の輸出数量は大きく伸びており、感染症拡大前の2019年は、2013年の2倍近い数量となっています。輸出数量は、国内販売数量の2%弱と非常に小さいため、輸出数量の増加が国内市場の縮小を補うまでには至っていませんが、今後、輸出が拡大することで、国内市場の縮小を補うことも期待されます」とまとめられている。

今後、EC事業者としても、越境ECに力を入れていく必要性がますます出てきそうだ。


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