楽天、第1Q決算で過去最高の5136億円連結売上収益記録を発表 黒字化達成へ計画通り進捗
モバイル事業での苦戦が続き、14四半期連続で損失計上が続いている楽天グループ株式会社(以下、楽天)が2024年5月14日、2024年度第1四半期(2024年1-3月)の決算を発表した。前期では3394億円の赤字を計上し、23年ぶりに当期の配当は行わない「無配」を発表したが、今回の決算では過去最高となる5136億円連結売上収益を記録。「通期黒字化達成に向けて計画通り進捗」と手ごたえを語った。
連結売上収益は、過去最高の5136億円
2024年1月から3月までの連結売上収益は、前年同期比約8%増の5136億円を達成。連結Non-GAAP営業損失は254億円となっており、これは前年同期の690億円と比較すると435億円改善している。また事業活動におけるキャッシュ・フロー創出力を評価する指標として楽天グループが重視しているEBITDA(Non-GAAP営業利益に減価償却費などを加算して算出)においては、第1四半期の連結EBITDAは前年同期比493億円増の528億円の黒字を達成。
懸念されていたモバイルセグメント、契約回線数増加による増収および、継続的なコスト削減効果により、前年同期比3.6%増で売上収益は998億円を記録。損失改善が継続している。今後はローミング拡大や5Gエリアの拡張を進めて、家族プログラムや子供プログラムなど新しいサービスを展開していくという。また、楽天モバイルは楽天エコシステムにも貢献。MNO契約者(BtoC)によるエコシステムBtoC ARPU(Average Revenue Per Use:平均単価)押し上げ額はプラス約1055円に上り、グループ利益の押し上げ額としては98億円になるという。楽天ではさらなる契約者拡大に向け、使用エリアを拡張。現在は全国の70%にとどまっている楽天モバイルサービスエリアを、2026年までに低軌道衛星で構築するモバイル・ブロードバンド通信(Space Mobile)により、100%を目指すという。
国内ECの流通総額はマイナス4.7%だが、楽天市場の競争力は堅持
では気になるEC事業はどうか。実は今期の増収は、国内EC事業ビジネスおよび海外事業への収益性が改善していることが大きな理由。
国内ECは、流通総額では1.3兆円と、前年同期比から4.7%マイナスだったものの、三木谷社長は「赤字が大きく出ているユーザーから、私たちとともにしっかりと健全な収益を上げられるユーザーへとシフトしていることが背景にある。量とともに質を追い続けているため、大変申し訳ないところもある」と理解を求めた。一方、「楽天市場の競争力は引き続き非常に強い」と自信ものぞかせた。
流通総額は減っているものの、楽天市場のユニーク訪問者数は継続的に増加しているといい、2023年のSPU(スーパーポイントアップ:対象サービスの条件を達成すると楽天市場での買い物のポイントがアップするプログラム)改定後も競争力は堅持され、またSPUポイントに占める利益貢献ユーザーへの付与割合が大幅に増加し、改定後の生産性向上も確認されているという。
国内ECのNon-GAAP営業利益の成長率は、前年同期比で2.7%の成長に留まった。しかし「2023年12月のコスト移管、全国旅行支援、ペイメントオンライン移管などの一過性の要因がなければ、20%ぐらいは増えていただろう。ベースラインとしては20%のプラス成長といってもいいのではないか」(三木谷社長)
楽天グループの物流サービス利用店舗は、成長率が高い
国内EC競合との対策として楽天グループが注力しているのが、楽天市場に出店している店舗向けの物流アウトソーシングサービスである「楽天スーパーロジティクス(RSL)」など、店舗を中心に展開する物流サービスの提供だ。RSLを導入している店舗は一般の店舗に比べて12.5%成長率が高く、契約店舗数は年々伸長。
「現在保持している6つの大型倉庫のうち、4施設はすでに満床になり、黒字化してきている。またそれ以外にも物流事業について様々な効率化を行っており、今後も収益改善プラス流通事業黒字化に向けた取り組みを加速していきたい」(三木谷社長)
楽天銀行を軸にしたフィンテック事業の組織再編を検討
注目のフィンテック(銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスや事業領域)も顧客基盤を拡大し、取扱高が大きく伸びている。楽天はフィンテック企業として、クレジットカード、デビットカード、楽天ペイなど多彩な支払い手段を提供。楽天銀行の単体預金残高は10.5兆円を超え、営業利益率は19.2%と力強く成長している。特に楽天証券の口座数が伸びており、NISA口座数は国内トップクラスの520万口座を達成。PayPayなど競合を抑え、QRコード決済の総合満足度1位の楽天ペイは、第1四半期に営業黒字を達成している。今後はこれらフィンテック事業を統合し、効率化を進めていく方針だ。
「14年前、2010年日本のキャッシュレス比率は13.2%だったが、最新データでは40%を超えつつある。最終的には欧米並みの70%から80%になるのは間違いなく、当社の事業もそれに合わせて拡大していくと見ている」(三木谷社長)
出店店舗向け「Rakuten AI」による店舗運営支援を推進
最後に、今年注力している生成AIはどうか。
改めて生成AIによるEコマースの進化を推進・支援していくことを表明。出店店舗向け「RMS AI アシスタントβ版」を2024年3月28日に提供開始し始めているが、今後も出店店舗に「Rakuten AI」やAIの基礎知識を学ぶ動画講座「楽天AI大学」を提供し、AI知識の取得や運用コストを削減。AIツール活用によるビジネスの加速をサポートして、店舗運営の効率化や生産性向上の支援を行うという。