楽天、Amazon、LINEヤフーは「送料無料」表示どう見直した? 消費者庁が取組事例を公開
2024年6月4日、消費者庁は「送料無料」表示の見直しに関して、2024年5月時点で同庁が把握している主な取組事例を掲載した。掲載されたのは公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)、アマゾンジャパン合同会社、LINEヤフー株式会社、楽天グループ株式会社・楽天市場、株式会社ファンケル。それぞれの取組について、当該サイトをもとに見ていこう。
3大モールの「送料無料」、どうなった?
早速、今回の消費者庁に掲載された取組事例を見ていこう。
出典:消費者庁「「送料無料」表示の見直し取組事例」
公益社団法人 日本通信販売協会
■事業者団体としての取組として、団体作成の「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」の中に、「『送料無料』表示の見直しや、表示する理由や仕組みを説明することに努めます。」と明記。
出典:公益社団法人 日本通信販売協会「通販業界における物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」
なお、上記自主行動計画には、「通販の最大の特徴として、注文した商品が、自宅まで届く点が挙げられます。物流革新緊急パッケージでは、『宅配の再配達率の半減に向けた緊急的な取り組み』が求められていることを受け、当協会の基本方針として、『再配達の削減』を目指します」と説明されており、送料無料表示についてはこの自主行動計画の中の7つの取組の1つとして挙げられている。
アマゾンジャパン合同会社
■通販サイトのトップページ上のリンク先である企業情報サイトに、持続可能な配送を目指した取組内容の紹介コンテンツを新たに追加。
■「送料を無料とする仕組み」について説明を加えるとともに、持続可能な配送を目指した取組を紹介するとともに、SNS等でも同サイトを周知。
出典:アマゾンジャパン合同会社「Amazon が改善を続ける物流と配送:お客様、ドライバー、そして配送パートナーのためのイノベーション」
上記サイト冒頭で、Amazonは「持続可能な配送を目指してAmazonが取り組み続けていること」として送料無料に触れており、持続可能を目指しながらも「よりよいお買い物体験」のため、「一定の条件を満たす場合には、お客様に配送料を別途請求しない(送料無料とする)など、さまざまなサービスを展開」していると説明。そのうえで、「なお、送料無料の場合であっても、配送に携わるドライバーの皆様に適正な運賃をお支払い」している点を明記している。
LINEヤフー株式会社
ヤフー株式会社、LINE株式会社ほかが合併し、LINEヤフー株式会社となったのが2023年10月1日。それ以前からYahoo!ショッピングでは日時指定に力を入れてきた経緯がある。
出典:LINEヤフー株式会社「物流の2024年問題とは? 多様化する配送ニーズに対応 Yahoo!ショッピングの取り組み
また、LINEヤフーのコーポレートサイトで公開している上記のインタビューの中で、「指定日配送を選択しやすいよう、UI(ユーザーインターフェース)の改善など」を行ったとしている。さらに「実店舗在庫サービス」では店頭にて送料無料で受け取れることを明記している。
楽天グループ株式会社・楽天市場
■オンラインモールのトップページ上のリンク先である消費者に配送負荷の軽減のための行動を促すページに、「送料無料表示について」のコンテンツを新たに追加。
■「送料を無料とする仕組み」について図表を用いて説明を加えるとともに、物流の持続可能性に関する取組を紹介。
出典:楽天グループ株式会社「再配達をへらそう 配送の負担軽減のために」
楽天の場合、上記サイトで配送負担軽減・持続可能な配送のための取組を消費者にも事業者にもわかりやすく解説している。「便利で選びやすい『送料無料』の表示。」の項では、「『送料無料』と表示されている場合でも、商品を届けてくれる人たちがいます。その運賃は商品を購入したショップから支払われており、価格の中に適正に含まれています。」「ショップも、お客様によりお得な価格で提供するため様々な努力を行っています。」とし、同社では「送料無料」表示の意味を「販売事業者と消費者間の売買契約において、『送料』という費目を別途請求しないことを指します。」と明示している。
株式会社ファンケル
■送料無料の表記を「送料はファンケル負担」または「送料当社負担」に2024年5月から順次切り替え、送料や物流に対する消費者理解に努めている。
■「置き配」「おまとめ配送」にポイントを付与するなどの取組を行い配達回数削減にも努めている。
出典:ファンケル株式会社「通信販売のサステナブルな取り組み」
上記にあるように、同社では1997年から同社が購入者の在宅・不在を問わず確実に受け取れるよう「置き場所指定お届け」サービス(現在は日本郵便の「指定場所ダイレクト」に移行)を導入しており、再配達削減にいち早く対応できている。さらに物流2024年問題を受け、送料無料に関して、見直しが行われている。
出典:ファンケル株式会社「3-2 送料・お届け・配送サービスについて」
上記によれば、購入金額(税込)4999円までは送料360円、5000円以上は送料ファンケル負担。さらにファンケルでの通信販売の購入が初めての人は送料同社負担で、購入金額(税込)に送料、冷凍手数料は含まれないことが明記されている。つまり「送料は(運ぶ人がいるからには)無料ではない」という姿勢が見受けられる。
事業者は「送料無料」に関し表示についての説明責任がある
消費者庁では以前より、「送料無料」が通常、「消費者が送料という費目を別途支払うことなく、商品を購入できることを表している」とし、消費者・企業ともども見直しの必要があるとしてきた。特に消費者に関しては、「送料無料だから再配達にもためらいがない」点を問題とし、物流2024年問題と絡めて2023年12月には考え方を示した。
大きなポイントは2つだ。
■送料の表示に関し、「送料として商品価格以外の追加負担を求めない」旨を表示する場合には、その表示者は表示についての説明責任がある。
■消費者庁として、関係事業者等に送料表示の見直しを促すとともに、事業者の自主的な取り組み状況を注視していく。
もちろん、送料無料の表示を変えればすぐに2024年問題が解消されるわけではなく、またBtoCの物流の改善だけで解決するものではない。とはいえ「送料無料」にどう向き合うかは持続可能なEC事業に欠かせないものであり、消費者庁では、引き続き「送料無料」表示の見直す取組を行った事業者の事例を募集していくとしている。各事業者の取組は、今後さらに注目されそうだ。