Yahoo!広告で非承認の多い表現は? LINEヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」発表

湯浅 英夫

LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)は2024年6月25日、2023年度(※1)の「広告サービス品質に関する透明性レポート」を公開した。これは同社が提供する広告サービスについて、その品質と透明性向上のための取組をまとめたもので、広告がどのように審査されているのか、審査の結果承認しなかった件数やその事例などを紹介。2019年度より公開されており、今回からLINE広告の審査についてのレポートも公開されている。

ネット広告を利用する事業者にとって、「Yahoo!広告」「LINE広告」でどんな広告が非承認となるのかは把握しておきたいところ。同日行われた記者説明会の内容を基に、今回のレポートのポイントをお伝えしたい。

※記事内の画像の出典は、全てLINEヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」記者説明会資料より

2023年度、Yahoo!広告では7819件のアカウントを非承認

今回の「広告サービス品質に関する透明性レポート」では、Yahoo!広告とLINE広告それぞれの取組が説明されている。まずYahoo!広告には、Yahoo! JAPANの検索結果ページに掲載される「検索広告」と、その他のサービスで表示される「ディスプレイ広告」がある。広告の審査は大きく2つで、広告掲載申し込み時の広告主やサイトを審査する「広告アカウント審査」と、実際に広告として掲出する広告クリエイティブやリンク先の表現を審査する「広告素材の審査」だ。審査は、ガイドラインに基づいて、システムによる審査と“人の目による審査”の両方が行われる。

Yahoo!広告審査の流れ

Yahoo!広告の広告アカウント審査では、2023年度に7819件のアカウントを非承認とした。これは2022年度とほぼ変わらない件数(※2)だが内訳は変化しており、「不正な広告表現や広告手法」「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」を基準とした非承認数が若干減少したという。半期で比較してみると、アカウント開設時審査ではサイトが存在しないときに表示されるエラー表示などの非承認や、「広告表現において過去に重大な違反実績があもの」の非承認が増加。アカウント開設後審査では、下の図のように「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」が非承認理由のトップ。昨今問題となっている投資詐欺の疑いのある広告アカウントを含む「その他、当社が不適切と判断した場合」の非承認がやや増えている。

アカウント開設後審査による非承認理由内訳(開設後審査)

医薬部外品や化粧品の非承認が増加

次に、Yahoo!広告における「広告素材の審査」について見ていこう。こちらの非承認数は2022年度の約1億3355万件から、約9690万件へと減少。2022年度に比べて、「最上級表示・No.1表示」の掲載基準で非承認となる広告の入稿数が減ったことが大きな要因としている。また、ディスプレイ広告における広告素材の審査で非承認となった理由を半期で比較したのが下の図だ。

ディスプレイ広告 広告素材の審査による非承認理由内訳

目立って増加しているのが「A:薬用化粧品(医薬部外品)」で、薬用化粧品の使用体験談を用いて認められた効能効果の範囲を逸脱した広告が多く入稿されたことが要因の一つだという。その事例として、たとえ認められた効能効果であっても、それを体験談として表現されることで「誰にでも効く」「間違いなく効く」といった保証表現になるという薬機法(※3)の解釈に基づいて非承認としていることが紹介された。

Yahoo!広告「広告素材審査の非承認の多い事例」より

ユーザーに不快感を与える表現はNG

同じくYahoo!広告 ディスプレイ広告の広告素材審査において、非承認となった理由として上半期よりも若干増加したのが「E:ユーザーに不快感を与えるような表現」基準での非承認だ。たとえば人体部位の局部アップやコンプレックス部分を強調した表現、また、過度な肌露出など性的な印象を与える表現が非承認の多い事例として紹介された。性的表現に関しては、写真やキャッチコピーなどから間接的に性的なものを連想させる表現も非承認としている。広告を出稿する側としても直接・間接を問わず、このような表現が非承認の対象となることを把握し、それを避けるべきだろう。

Yahoo!広告「広告素材審査の非承認の多い事例」より

このほか、競合他社の企業名・商品名・サービス名などをキーワードやクリエイティブに使って関連のないサイトに誘導する広告や、「公式」という文言を用いてユーザーを誤認させて公式ではないサイトに誘導する広告もNGだ。LINEヤフーでは、こうした違反広告をなくそうと注意事項を公開しており、今回のレポートでも「広告品質向上のための取り組み」として紹介されている(※4)。同社の広告掲載基準を知るうえでも、事業者はレポートと共に目を通しておきたい。

記者説明会に登壇したLINEヤフー株式会社 MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部長 一条裕仁氏(左写真)と、同社 MSカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部 ポリシー室長 中村茜氏

※1:Yahoo!広告:2023年4月1日~2024年3月31日、LINE広告:2023年10月1日~2024年3月31日
※2:Yahoo!広告アカウント審査による2022年度の非承認数は7893件
※3:薬機法=「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のこと。医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などについて、製造、販売、広告などに関するルールを細かく定めている
※4:LINEヤフー for Business「【Yahoo!広告】「競合他社名」や「公式」などを広告に使用する際の注意事項」
参考:LINEヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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