Yahoo!ショッピング、2027年までにストアとユーザーの取引トラブル“ゼロ”を目指す 「安全・安心への取り組み」に関する説明会レポート

湯浅 英夫

LINEヤフー株式会社は2024年9月12日、「Yahoo!ショッピング」の安全・安心への取り組みに関する記者説明会を行った。同社が「安全・安心への取り組みレポート」を公開するのは今回が初めて。説明会では出店者や広告主、消費者が安心してYahoo!ショッピングを利用できるよう、審査の厳格化、不適切なストアや商品の排除、不正行為の防止といった取り組みを強化していることが示された。

ECの普及とともにトラブルが増加している現状

EC化率の高まりとともに、増加傾向にあるネットショッピングにおけるトラブル。説明会に登壇したLINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)の執行役員 コマースカンパニーショッピング統括本部長 畑中基氏によれば、Yahoo!ショッピングにおいて、あらかじめ悪意を持って大量注文を受けて商品を発送せずに逃亡する「未着詐欺」やニセモノを売る「偽造品の販売」がこれまで多く発生したという。また、そうしたトラブルを起こすストアには「商品価格が相場よりも明らかに安く設定されている」などの傾向が見られるという。

記者発表会に登壇したLINEヤフーの畑中基氏

安全・安心に向けたYahoo!ショッピング“3つの取り組み”

前述のようなトラブルを減らしユーザーに安心してモールを利用してもらうため、Yahoo!ショッピングでは「信頼できるストアの厳選」「不適切なストアや商品の排除」「不正行為の防止」という大きく3つの対策を掲げている。

Yahoo!ショッピングの取り組み。以下、図版は全て「Yahoo!ショッピング 安全・安心への取り組みレポート 2024年上半期(1月-6月)」より

まず「信頼できるストアの厳選」のためには、これまでPayPayモールにおけるストアの厳選、ブランド直営店や正規代理店のマーク表示、さまざまなスコアを通じて一定以上レベルに達しているストアを“優良ストア”として認定することなどを行ってきた。これらに加え、2024年以降は出店審査を厳格化しているという。

Yahoo!ショッピングでは、ストアの出店前に行われる出店審査と、会社概要やストアページなどの設定の完了や違反商品がないことなどを確認する開店審査の2段階がある。その出店審査の厳格化として実施されているのが、「個人事業主・法人の在庫証明審査」と「携帯電話やフリーアドレスメールからの申し込み禁止」だ。それらによって不正が疑われるストアの出店を抑制した結果、出店審査の合格率は2023年上半期の25.2%から、2024年上半期には11.2%に低下したという。この合格率の低下は、言い換えれば、その分信頼できないストアの開店を阻止でき、Yahoo!ショッピングの安全性が向上したことになる。

また開店審査でも、ストアのページをはじめとするさまざまな角度からチェック。“入り口”を絞ることで不正を抑止する取り組みと言える。出店を検討している事業者側としては不正行為を行わないのは当然として、在庫証明がしっかりできるようにしておくことや、申し込みに携帯電話やフリーアドレスを使わないといったことが求められる。

「ECモールという事業を行っている以上、より多くの商品、より多くのストア様に出店いただいて販売機会をしっかりと提供させていただきたい。またお客様にこれまでにない商品、ご近所で売っていない商品との出会いを提供するためにも、できる限りの商品を取り入れたいと思っている。その一方で、お客様にとって不都合な商品や不正が疑われるストア様に関しては、“入り口”で排除させていただくことが結果的にお客様の安全・安心につながると考えている」(畑中氏)

同社では「信頼できるストアを厳選」する取り組みを引き続き強化していくという

不適切なストアや商品の排除

取り組みの2つ目は「不適切なストアや商品の排除」。Yahoo!ショッピングでは、これまでも開店しているストアや商品の審査(途上審査)、商材の取り扱い審査、ブランドをはじめとする権利者からの申告による審査といった社内外からの審査を行ってきた。しかし急に業態を変えたり、いきなり不正な商品を販売したりといったケースに対応しきれず、“すり抜けてしまう”事例があったという。こうした事態に対応するため、同社ではチェック体制を強化中だ。PayPayでも導入している(electronic Know Your Customer 電子本人確認)などを使って事業者の身元を確認するほか、さまざまなアクセスログも使って不正の疑いがある事業者をリスト化して途上審査を厳しくすることで、不正ストアの撲滅を進めているという。

事後対応になりがちだったストアの不正行為に対して、不正が起きる前に対処できる形になり、その結果休店・退店ストア数が減少しているという

また、特定の商材に関する審査を強めており、仕入れ書類提出必須化をはじめとするブランド審査の強化や、審査対象商材の追加といった取り組みを実施。権利者からの申告に基づいた出品物削除も行われ、知的財産権保護プログラムなどによって、違反が疑われる出品数は大幅に減少しているという。これらの対策には大手のブランド、メーカーを中心に定例会を行うなど密に連携して取り組んでおり、メーカー側から好評だという。

特定商材の審査を強化し、権利者からの申告に基づく出品物削除も実施。消費者が被害を受ける前に不正な商品を排除するための取り組み

不正行為の防止

3つ目の「不正行為の防止」は、不正レビューの排除と不正決済対策が主となる。

自己注文による「やらせレビュー(サクラ行為)」がはびこり、消費者の公平な判断を阻害している状態は当然好ましくない。そのような不正なレビューに対して、Yahoo!ショッピングではデータ分析によって「やらせレビュー」を定義付け、該当者の投稿を大規模に削除するなどの対策を行っている。 また、業界全体で被害額が増加傾向にある不正決済に対しては、「自社開発の不正検知システム」「EMV3Dセキュア」「24時間365日体制で、人の目視による判定」という3段階で判定。結果として不正決済による被害金額を抑制できているという。

2024年上半期の不正決済による被害発生金額は2023年上半期に比べて82.9%減少

2027年までにストアとユーザー間の取引トラブル“ゼロ”を目指す

説明会の締めくくりとして、畑中氏は「2027年までにストアとユーザー間の取引トラブル“ゼロ”を目指す」ための取り組みを紹介。さらに強化していくものとしては、審査の対象になる商材の拡大、「やらせレビュー」の自動判定やそれを繰り返すユーザーへの対応、不正のパトロールにAIを導入するといったものを挙げた。一方、新たな取り組みとして言及したのは、下記の3つ。同社ではこうした対策によって、安全・安心をさらに強化していく考えだ。

●グループ企業・サービスとの連携を強化し不正を取り締まるノウハウを蓄積して横展開していく
●無在庫転売の情報を集めるためにストア専用の申告フォーム(ご意見受付フォーム)を設置する
●問い合わせになかなか対応しない、商品をなかなか発送しないといった“不誠実なストアへ”の対応も新たに開始する

「安全・安心への取り組みレポート」は今後も定期的に公開される予定

「インターネットショッピングが拡大する中で、不正・悪事を行う人が一部にいるのは間違いない。Yahoo!ショッピングのみならず、ネットでの買い物は楽しいものであり、安心・安全なものであることを業界を通じてアピールしていきたい。(中略)“入口”と“途上”での対策、不正決済及び不正レビューへの対応といったことによって、お客様にとって安心・安全で、健全に商売をされているストア様・事業者様にとっても、よりしっかりと商品を売ることのできる売り場にしていきたい」(畑中氏)


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

湯浅 英夫 の執筆記事