年末年始のお取り寄せ食品、消費者はいつ、何を重視してECで購入するのか? FORCE-R調査

星野新【MIKATA編集部】

ECコンサルティングなどを手掛けるFORCE-R株式会社(以下、FORCE-R)は、お取り寄せ食品サイトで海鮮系または精肉食品(冷凍・冷蔵)を購入したことのある250人を対象に、「年末年始(12月28日~1月3日)の期間に自宅で食べるために、ECで食品(精肉・海産物)を購入する際の行動調査」を実施した(※1)。

12月は1年で最も消費者のネットショッピングの利用が盛んになる季節(※2)。食品を扱うEC事業者にとっても書き入れ時となるが、ユーザーがいつから、どんな情報を集め、何に重きをおいて商品を購入しているのかを把握しておけば、より効果的な訴求が可能になるはずだ。気になるアンケート結果を、ECのミカタ独占でお伝えする。

※1:今回調査対象とした食品(精肉・海産物)には、「おせち」は含まれない
※2:総務省統計局「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯) -2024年(令和6年)8月分結果」より

調査概要

■調査内容:「お取り寄せ食品」に関するアンケート調査。年末年始(12月28日~1月3日)の期間に自宅用で食べるために、ECサイトで食品(精肉・海産物)を購入する際の行動調査
■調査期間:2024年9月13日~9月14日
■調査対象:お取り寄せ食品サイトにて“海鮮系”または”精肉食品”(冷凍・冷蔵)を購入したことがあるユーザー(モニター)。20代~60代以上/250名
■対象選定方法:アンケートをもとに、所定の条件に合致する対象者を抽出
■調査方法:インターネット調査
■調査主体: FORCE-R株式会社

年末年始のお取り寄せ、情報収集は10月下旬からが最多

今回の調査ではまず、いつ頃から情報を収集するか/実際にいつ購入(注文)したのかを質問。その結果、情報収集を始めた時期として最も多かったのは「10月下旬(54人)」、次いで「11月下旬(50人)」「11月上旬(38人)」の順。購入時期は「12月上旬(60人)」「11月下旬(50人)」の順で多かった

年代別に見ると、20代は情報収集の開始時期が早い傾向があり、全体としては年齢が上がるにつれて情報収集から購入までの検討期間が短くなっており、12月中旬以降では購入者も大幅に減少している。

FORCE-Rでは事業者が各施策を打つタイミングについて、「年末年始の購買需要に対しては、10月下旬に情報発信を開始し、11月下旬から12月上旬に販促費のヤマを作り、“刈り取り”にいくのが良いと考えます」と提案している。

「年末年始(12月28日〜1月3日)の期間に向けて、何か月前から情報取集し始めましたか?」に対する回答

「実際に注文したのはどのくらいの時期ですか?」に対する回答

お取り寄せ食品の理想的な到着日は「2~3日前」がトップ

続いて、商品の受け取りたいタイミングや比較する社数を質問。理想的な商品の到着時期は「2~3日前(106人)」と答えた人が突出して多く、その理由としては「早く届くと冷蔵庫(冷凍庫)などに入らない時があるから」「年末は買うものが増えるから、2日前くらいの日にちで着くとうれしい」といった、商品が届いた後の冷蔵庫・冷凍庫のスペースを気にしている声が多数あったという。次いで「4~6日前(52人)」「1週間前(36人)」となっており、「2週間以上前」と答えたのは最も少ない9人。年末は配送スケジュールが非常に組みにくい時期ではあるが、できるだけ配送日を選択できるようにすることがユーザーの購入検討の材料になることは押さえておきたい。

一方、「お取寄せ商品を購入検討する際に、何社程度比較するか?」という質問に対しては「2~3社」と回答した人が約半数と最も多かった。消費者として価格の比較は必須としても、それ以外ではどんな情報が購入に影響しているのだろうか?

購入検討に重要な画像情報のトップは「調理方法」

食品ECにおいて、商品写真を含めた「画像」が果たす役割の大きさは認知されているところ。商品ページの画像でユーザーを引き付け、購入に結びつけたい事業者は多いはずだ。そこで今回の調査では、ユーザーが「どんな種類の画像を、商品を購入検討するうえで重要としているのか」、そして「商品を購入検討するうえで、どんな情報を検討しているのか」について質問している。

その結果、購入検討するうえで重要な【画像情報】は「調理方法(おすすめの食べ方など)」がトップ、次いで「保存方法」だった。別の質問では8割の人が「年末年始の食事のためには、それ以外の期間にオンライン購入するものより、高額な(奮発した)商品を購入する」と答えており、FORCE-Rでは「いつもより奮発して商品を購入しているため、おいしく食べたいという思いが表れた結果」だと考察している。

さらに同社は「調理方法」「保存方法」が選ばれた理由と、ユーザーに訴求するポイントについて下記のように提案する。

「購入後に実際にユーザーが行う行動をイメージできる情報が必要だと考えています。例えば『保存方法』なら“どのくらいの温度帯での保存が望ましいのか”、冷凍食品であれば“最適な解凍方法”などをユーザーは知りたいと思うでしょう。これらはテキストのみだと見逃してしまう可能性があり、写真付きで説明があることで安心して購入できるというユーザー心理の表れだと推察しています。『調理方法』についても、お肉ならば“どれくらいの時間焼けば良いのか”“焼き色がどれくらいつくのがおすすめなのか”がわかる画像や、“実際に調理している動画”があるとよいと思います」(FORCE-R株式会社 日比野陽介氏)


また、【商品情報】の中では、「消費(賞味)期限」や「お届けにかかる日数・送料」といったものよりも、「生産者のこだわり」と答えた人が多いという結果となった。「ユーザー目線で見ると、同じ価格帯の商品を2~3店舗比較検討する際には、『商品へのこだわり』が伝わり、食べ方についても丁寧に教えてくれるサイトであることが重要だと考えています」(日比野氏)

まとめ

近年続く物価上昇は、一時期に比べて落ち着きを見せているとはいえ、日比野氏は年末年始の取り寄せ食品にも「少なからず影響はあると考えている」という。

「FORCE-Rが『年末年始のお取り寄せ食品にかける価格』についてアンケートを実施した際は、通常時に通販サイトで食品を購入する価格よりも、1.5~2倍程度の価格のものを購入するという結果でした。日頃物価高で節約している方も、年末年始は奮発して購入する傾向があるようです」(日比野氏)

もうひとつ統計を引くと、経済産業省が9月に発表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、2023年の食品・飲料・酒類分野のBtoC-ECの市場規模は2兆9299億円で、2022年に比べて6.5%上昇、EC化率も0.13%ながら上昇している(4.29%)(※3)。これらを踏まえると、コロナ禍を経て、食品をECで購入・取り寄せて味わうことが消費者に定着してきたと言えるだろう。また食品は加工から流通過程まで温度管理の徹底が求められるだけに、物流における温度管理技術の発展も「こだわりの食品を、自宅でおいしく食べられる環境づくり」に寄与していると考えられる。

FORCE-Rが「こだわりの商品を作り販売する事業者に、消費者が求めていることを伝え、売上増につなげてもらう」目的で実施したという今回の調査。同社の分析からは下記のようなポイントが見えてきた。

① 販促活動は10月下旬から開始し、11月下旬から12月上旬でヤマを作る

② “特別なもの”を購入しているというユーザー心理を把握し、商品情報に【こだわり】や【特別感】を記載する

③ おいしく食べることをイメージできるような画像を掲載する

④ 配送日時指定に可能な限り対応する

「おせち」を対象とせず、あくまでも「12月28日~1月3日に、自宅用として精肉・海産物を購入する場合」に絞った調査結果ではあるが、食品ECの年末商戦に向けた施策の参考にしていただきたい。

※3:参考:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」