国民生活センターがモール3社に協力依頼 海外事業者の鉄サプリメント長期使用による鉄過剰症に関して
独立行政法人国民生活センター(以下:国民生活センター)は2024年12月25日、「医師からの事故情報受付窓口」に寄せられた情報をもとに、海外事業者が製造・販売する「鉄サプリメント(※1)」の使用によって、鉄過剰症等を発症した事例を公表した。
あわせて海外事業者が製造・販売する鉄サプリメント5銘柄の鉄含有量と表示の調査し、消費者への情報提供およびインターネットショッピングモール運営事業者への協力依頼などを行うことを発表した。
※1:鉄を摂取することを目的とした錠剤・カプセル状の健康食品
続発性鉄過剰症や肝機能障害が疑われる
今回、医師からの事故情報受付窓口に(ドクターメール箱)に寄せられた事故情報は以下の通り。
◆鉄サプリメントにより一日54~108mgの鉄を約3年間摂取した結果、続発性鉄過剰症と診断された。
◆鉄サプリメントにより一日36mgの鉄を約11カ月摂取した結果、鉄過剰状態と肝機能障害が疑われた。
テストの結果、対象銘柄(※2)の一日当たりの摂取目安量に含まれる鉄量およびパッケージに表示された鉄量は、日本人の食事摂取基準に示された推奨量を大きく超えるものであったという。
テスト対象銘柄には米国の1日摂取量に占める割合が表示されていたが、この数値を目安に摂取すると、過剰摂取につながるおそれがあると考えられる。通信販売サイトには、商品名や1日当たりの摂取目安量に含まれる鉄量は日本語で記載されていたが、一部サイトでは、注意表示は商品パッケージの画像のみが表示されていた。
※2:テスト対象銘柄は、インターネット通信販売の大手ショッピングモール(楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピング)および、Google検索で「鉄サプリメント」および『鉄分 サプリメント』と検索した際に上位に表示された、海外事業者が製造・販売する鉄サプリメント5銘柄(錠剤2銘柄、カプセル3銘柄)が対象。テスト実施期間、検体購入:2024年7月~8月、テスト期間:2024年8月~10月
注意喚起や啓発を行う等の協力を依頼
今回のテスト対象銘柄を購入したサイトは、全て日本語で記載されている一方、販売者の所在地に海外の住所が示されていることから、個人輸入に該当するものと考えられる。
こうした状況を受け、国民生活センターはアマゾンジャパン合同会社、LINEヤフー株式会社、楽天グループ株式会社のモール運営事業者3社に向けて「海外事業者が製造・販売する鉄サプリメントによる事故の未然防止のため、注意表示を日本語で記載するとともに、購入者に対し、長期間の過剰摂取に関する注意喚起や啓発を行う等の協力を依頼」すると発表。さらに、行政への要望として消費者への周知啓発も呼びかけた。
安心・安全な市場構築のためには製造元、販売事業者やモール運営会社、行政が連携しつつ、それぞれによる消費者への注意喚起・啓発活動が求められる。健康食品関連の商品を取り扱う事業者は特に留意が必要だろう。
※参考:独立行政法人国民生活センターによる報告書海外事業者の鉄サプリメントの長期使用により鉄過剰症を発症