3大ECモールが牽引し前年比13.0%増、一方EC事業者の倒産は過去最多 Nint調査

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ECのミカタ編集部

2024年日本のEC市場、3大ECモールが牽引し前年比13.0%増

株式会社Nintは2025年10月9日、経済産業省の調査結果と独自の分析により、2024年日本EC市場規模とEC化率の最新動向の調査結果を公表した。

調査概要

◆調査機関: 株式会社Nint
◆調査対象: Nint推計データ(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)
◆出典
令和6年度電子商取引に関する市場調査(経済産業省)
市場拡大も競合・コスト高でネット通販の苦戦が鮮明 「無店舗小売業」の倒産、休廃業・解散は過去最多(株式会社東京商工リサーチ)
日本EC市場の今と未来がわかる: デジタルで変わる消費行動2025(株式会社Nint)

経済産業省調査が示す緩やかな成長

経済産業省の調査によると、2024年の日本における物販系BtoC-ECの市場規模は15.2兆円(前年比3.7%増)となり、堅調な成長が続いてる。

また、商取引全体に占めるECの割合を示すEC化率も9.78%(前年比0.4ポイント増)と上昇。2025年には10%の大台を超えることが期待される。

◆物販系分野のBtoC-EC市場規模

※出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」よりNintにて表加工

このマクロな成長トレンドの中で、消費者の購買行動の主戦場はどこになっているのか。市場の大部分を占める3大ECモールの動向を詳しく確認する。

3大ECモールが牽引する日本のEC市場

Nintの推計データによれば、2024年における楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングの3大ECモールの流通総額は約11.2兆円に達し、前年比13.0%増という高い成長率を記録。これは、物販系EC市場全体の成長率(3.7%増)の3倍を超える数値となる。

この結果、物販系EC市場全体(15.2兆円)に占める3大ECモールのシェアは73.7%に達し、日本のEC市場の成長において、大手プラットフォームの存在感がより一層強まってきている。

Nintは今回、この成長を「販売数量」と「平均単価」という2つの要素に分解して分析。その結果、成長率13.0%のうち、販売数量の増加が+8.6ポイント、平均単価の上昇が+4.0ポイント寄与していることが明らかとなった。

これは、昨今の物価上昇や高単価商品への需要増加による単価増が成長の一因であることは事実であるものの、それ以上に「ECでモノを買う」という消費行動が量的に拡大していることを示す、極めて重要なデータとなる。

◆3大ECモール市場成長の要因分解(2024年前年比)単位(%)

ジャンル別に見るEC市場成長ドライバー

3大ECモール全体の力強い成長は、すべてのジャンルで一様に起きているわけではない。以下で特徴的なジャンルを確認する。

◆食品、飲料、酒類
市場規模の大きいこのジャンルでは、ECでの購入が日常化したことによる「販売数量の増加」が大きく貢献。メーカーによる値上げはあったものの比較的、低単価の購入が進んでいると考えられる。

◆生活家電、AV機器、PC・周辺機器等
より高機能・高性能な製品への需要が活発化し「平均単価の上昇」をもたらしつつ、消耗品の購入も進んでいる。

◆化粧品、医薬
専門ショップの拡大など裾野が広がり「販売数量」が大きく増加し、高い成長率を記録した。

◆3大ECモール 主要ジャンル別 成長ドライバー分析(2024年)

成長と倒産増加が同時進行

東京商工リサーチの調査によると、2024年のネット通販事業者の倒産は261件(前年比21.3%増)に達し、過去最多を記録。休廃業・解散も増加している。

Nintは特筆すべき点として、倒産した企業の多くが負債額5千万円未満・従業員数5人未満の小規模事業者であることを指摘する。

同社はこの「全体の成長」と「小規模事業者の苦境」という一見矛盾した事象は、EC市場の「二極化」が深刻化していることを示唆しているのかもしれないと分析。参入障壁の低下による過当競争やコスト増といった環境下で、画一的な価格競争や広告施策に陥った事業者が「採算悪化」から淘汰されやすい状況がうかがえると分析している。

◆ネット通販事業者の倒産・休廃業・解散件数の推移

出典:株式会社東京商工リサーチの調査よりNintにてグラフ化

Nintは本結果を受け、次のようにコメントする。

「『数量×単価』を軸とした複雑な成長構造の中で最終消費者と向き合わなくてはならず、裏側では過当競争などを背景に、厳しい状況に置かれる事業者も少なくないという二極化の側面が見られます。このような状況下で、EC事業者が感覚や経験則だけに頼って事業を継続するのは極めて困難です。体力のある大手と価格だけで勝負するのではなく、データに基づいて自社の勝ち筋を発見し、戦略的な意思決定を行うことが、これからの市場で生き残るための重要な鍵であると考えます」

データドリブンなアプローチこそが、激しい競争環境を勝ち抜くために重要となる。本調査結果を今後の販促計画、施策検討に活用したい。