ソフトバンクC&Sが総合通販向け「リピート育成プログラム」を開始! ~何から始めたら良いか分からないEC事業者のCRM内製化をサポート~
EC市場が成長し、新規獲得のコストが高騰する中で、リピート獲得の重要性が増している。その中で「CRM」という言葉もよく聞くようになり、ツールもさまざまに登場している。しかし、総合通販においてはCRMの成功例は少ないようだ。その原因が、そもそもツールを使いこなせていないこと、そして単品通販と総合通販のCRMが異なることにあるという。ソフトバンク コマース&サービス株式会社(以下「ソフトバンクC&S」)では、その課題を解決するための、CRMツール提供と導入サポートをセットにした新サービス「リピート育成プログラム」を開始した。同社のMD本部 MD戦略室 マーケティングバンク課 井上将平氏とWC Marketing株式会社(以下「WC Marketing」)代表取締役 渡辺祥弘氏に伺った。
ツールを導入しても続かない事業者が多い理由
ソフトバンクC&Sでは、もともと「Marketing Bank(マーケティングバンク)」というサービスを提供している。ここには、ソフトバンクC&Sがベンダーから仕入れたデジタルマーケティングに関するさまざまなツールやソリューションが集まっている。利用企業は、その中から自社にあったツールを見つけ、導入することができる。
しかし、主に中堅以下の企業のツール導入に際して、課題を感じていたと井上氏は言う。
「ベンダーにヒアリングをすると、『トライアル導入期間に試用されないまま解約されるケースが多い』『導入サポートを求められるが対応できるリソースがない』『ツール導入前に社内で誰が使えるか精査するのに時間を取られることが多い』といった声が多くあがりました。そこで、ツールを提供するだけでなく、その運用サポートが必要だという考えになりました」。
中堅以下の企業では、Web知識水準が十分でないことが多い。そこで、マーケティングツール提供に際し、導入前の社内体制の構築から、導入後の効果測定と施策の提案まで、人的コンサルとレポート代行による運用サポートをセットにしたのが、今回開始するプログラムだ。
ツール提供の実績が豊富なソフトバンクC&Sと、マーケティング支援に長けたWC Marketingがタッグを組み、その時限りのサポートではなく、最終的に利用企業がツール運用を内製化できるようにサポートしていく。
サービス提供開始から当面の間は、特にニーズが感じられるEC市場向けの「CRM」に注目し、「リピート育成プログラム」としてCRMツールの導入サポートとコンサルティングサービスを提供していく。CRMというとEC業界では単品リピート通販をイメージしがちだが、今回のプログラムで注目すべきは、CRMの実施が難しいと思われていた総合通販においても、リピート施策のためのCRMツールの導入とコンサルティングを提供する点である。
利益確保にはリピート施策!効果が出るCRMとは
渡辺氏は、これまで、さまざまなEC企業のマーケティング支援を行ってきた。その中で、総合通販のリピート施策について、「現状ショップを運営している企業の担当者は、なぜCRMをやらないといけないのか?というところから説明をしてあげる必要があり、その重要性を理解できている企業はまだ少ない。」と指摘。
CRMの一番の効果は、わかりやすい話だと利益率を上げていきショップの売上を安定させることができる点だ。
顧客にショップのファンになってもらい、継続的にリピートしてもらうことで、新規顧客の獲得に熱心にならなくても売上や利益を安定させることができるのがCRMのメリットだ。
「新規顧客の獲得には一般的に獲得単価の2〜3倍の広告費がかかるといわれているが、CRMで売上を立てる場合は圧倒的にそのコストは下がります。
加えて言うと、新規顧客の獲得コストが2〜3倍かかるということは、その後顧客にリピートしてもらわないとお店としては儲けが出なくなってしまうということ。CRMを強化してリピート顧客を育成することで、獲得に使った広告費を回収でき、かつその後の利益につなげていくことができます。」と渡辺氏は続ける。
お客様がリピートでどんどん買ってくれることで、新規獲得のために必要な広告費も上げていくことが可能であるため、CRMを行うことは結果的に集客にも影響していき好循環が生まれる。
しかし、単品通販では定期購入などの仕組みが形成されている一方で、総合通販では、そのためにまず何をすれば良いのか分からないというEC事業者が多い。「単品通販とは戦略が全く異なるのですが、成功している企業は施策の運用を内製化していて、ノウハウが外部に公開されていないため、コンサルティングができる会社もほぼないと思います」と、渡辺氏は現状の問題を指摘する。
単品通販のリピート施策は、最初にどれだけ広告費をかけて新規顧客を取れるかが勝負で、後は定期に落とし込み離反されないようにして、数年継続すれば元が取れるというところがある。しかし、総合通販はそうはいかない。
効果の出るリピート施策では、単品通販は商品に顧客がつくが、総合通販ではショップ自体に顧客がつく。同じ店で買い物をしている顧客でも、趣味嗜好、買い物に使える金額は人それぞれだ。それにより、選ぶ商品や購買頻度にも違いが生じる。
総合通販のリピート施策について、渡辺氏は「まずお店を好きになってもらうために、お客さん一人ひとりの喜ぶポイントを探し当てます。百貨店では店員さんがお客さんを見て自然と行っていることですが、EC店舗で行うためにはツールが必要です」と説明する。
ここで、井上氏も説明した、ツールを導入しても使いこなせないという問題がある。現状、総合通販のリピート施策は、「ツールはあっても施策がない」状態だそうだ。施策がない、つまり何をすれば良いか分からないとき、多くのショップが行うのが、割引だ。しかしそれは本末転倒だと言う。
「割引しかしないと、だんだん割引がないと買わないお客さんばかりになってしまいます。そうならないために、購入頻度の高いお客さんに対しては、たとえば発売前の商品を先行して紹介するなど、特別なオファーを行う必要があります。また、初回購入を二回目につなげるための割引はありですが、その後のフォローが必要です」。
そういったリピート施策を実現するツールはすでにある。しかし、実際にツールを活用して、顧客を分析し、その一人ひとりに対して、どのタイミングで、どのチャンネルを使って、どんな内容の接客を行うか、具体的な施策を立てられるEC企業が少ない。そのネックになっている施策立案の部分をサポートするのが、「リピート育成プログラム」だ。
「リピート育成プログラム」は3ヶ月で施策を行う
「『リピート育成プログラム』では、3ヶ月で施策実績を勝ち取れるように進めていきます」と、井上氏。最初の1カ月で、問題に対してどうアプローチするのか、対象者設定やストーリー設計、特典・コンテンツ設計などツールを活用してCRM施策を行えるような準備をして、2~3ヶ月目でまずは仮説に基づいて施策の運用を行う。そしてその結果を分析、レポートを作成して、次の施策の提案を行う。効果が出てくるのは4ヶ月目以降が目安だ。
このプログラムの特徴について、「ツールを提供して終わりというのではなく、何が問題で、その問題に対する根本的な課題は何で、その課題に対してどういう施策を行ったら良いのか、また、施策実施後の分析とレポート作成から次の施策につなげるところまで、お客様に付き添って一緒に見ていくというスタンスです」と井上氏は説明する。
それにより、基本は、EC企業がCRMツールを使ったリピート施策の運用を内製化することを目指している。継続してお願いすることも可能だが、いずれにせよ、総合通販のリピート施策のノウハウが社内に蓄積されていくようなサポートの仕方になっている。
導入すべき企業とは?CRMの効果測定
このプログラムにより、CRMツールを導入して効果を上げられる企業は、「会員数が最低でも1万人以上」が目安になるそうだ。リピート施策で効果を上げるためには、まず、すでにそれなりの顧客が存在する必要がある。
また、CRMは、何を指標として効果を見れば良いのか分かりにくく、分析が難しい面がある。そのため、導入しても継続しづらいということがあるだろう。その分析とレポートを、リピート育成プログラムでは代行する。
このプログラム自体はスタートしたばかりだが、渡辺氏が過去に同様のコンサルティングを行った企業では、「1年間やってみて、毎月400万円をかけていたリスティング広告をとめたけれど、その分をリピートがまかなっていて、売上が変わらなかったという事例もあります」とのこと。
リピート施策では、売上だけ見ると変わっていなくても、その途中過程のKPIが上がっているということがよくあるそうだ。
「たとえば、優良顧客を購入頻度の高さに応じてF3、F4、F5と設定して、F3~F4の割合が下がっていたのが維持できるようになったとか、F5への上がり方が何%上がった、つまり優良顧客が増えてきて安定しているという見方ができます」。(渡辺氏)
こういった値の設定から、分析レポートまでサポートしてもらえるので、ツールの導入結果を社内向けて報告しなければいけないという場合も助かるはずだ。
CRMから大手に負けない施策のサポートを
「CRMというのは、シンプルに言うと『お客さんがどうすれば喜ぶのか』ということです」と渡辺氏は言う。同時に「Webでは細かなところまで数値を出すことができるため、数値にだけとらわれてしまいがちになり、施策よりも数値に執着してしまう担当者が多くなってしまっている」数値はあくまでヒントを得るためと、やったことの答え合わせをするものであり、それが本質ではない。と指摘する。
お客さんが喜ぶ商品をそろえるのは前提として、それを誰に、どんなタイミングでどういった情報を提供していくかということがリピート施策のポイントとなる。単品通販以外で、高いレベルでそれが提供できているのが「ZOZOTOWN」だと言う。しかし「ZOZOTOWN」は社内でそれを完結できる仕組みができていることが推測され、同じことをするには費用も人材もとんでもなくかかってしまう。
では中堅企業はどうやって対抗していくのか。
実は、マーケティングツールはそれぞれ専門的な機能を備えており、外部のそういったマーケティングツールを駆使することで「ZOZOTOWN」に近しいCRMを実現することも可能になる。
今後の展開としては、CRMツール以外にも導入サポートを行うツールを増やしていくという。井上氏は、「現状、導入サポートのできるツールが300ぐらいあって、個別の問い合わせも多いので、いずれは今回の『リピーター育成プログラム』と同様の形でやっていきたいということは思っています。また、もっとシンプルにレポート作成だけ提供するといった形もあって良いかなと思っています」と、今後の展開を説明する。
今回は、まず「リピート育成プログラム」として、CRMツール導入によるリピート施策の支援となる。総合通販で、既存顧客はそれなりにいるが、リピートにつながりにくい、CRMを強化したいが何から始めたら良いか分からないというEC企業は、まずは相談してみてほしい。