広告からブランドへのファンを醸成!SpartyのLINE広告活用法
オンライン広告は必要不可欠な集客手段であるものの、広告費の高騰に悩みを抱えるEC事業者は少なくない。そうしたEC事業者の新たな一手となるのが、多くの人が日常的に使用するコミュニケーションアプリ「LINE」に広告が掲載できる「LINE広告」だ。女性に人気のヘアケアブランド「MEDULLA」を展開する株式会社Spartyの坂口光氏と、同社の広告運用を手がける株式会社CyberACEの小山内義貴氏に、LINE広告の活用について話を伺った。
ブランドを傷つけない訴求ができるLINE広告
――MEDULLAがLINE広告の活用を始めた経緯について教えてください。
坂口:「MEDULLA」は2019年1月にブランドをリニューアルして以降、オンライン広告を積極的に活用しています。主要プラットフォームはほぼ網羅しており、中でもSNS広告への出稿が多くなっています。リニューアル当初はFacebook広告が順調でしたが、広告の出面を増やしたいと考え、2019年の夏からLINE広告への出稿を大幅に増やしました。
出稿を重ねていくうちに効果が上がってきたことで、この半年ではオンライン広告にかける予算の半分ほどがLINE広告になっています。LINE広告に注力した背景には、LINE広告の広告審査基準、他のSNS広告の配信量を増やしてもCPAが上がらなかったことなどの理由があります。
小山内:LINE広告の配信面には、LINEアプリ内のトークリスト最上部のSmart Channelやタイムライン、LINE NEWSなどのファミリーサービスがありますが、LINEを利用するユーザー属性と「MEDULLA」の商品ターゲットとの親和性が高いという特長があります。また、広告審査についてもユーザー観点を大事にしている印象があり、CTR重視の露骨なクリエイティブや不快感を与えるような表現の広告と競う必要がありません。
結果、「MEDULLA」というブランドイメージを傷つけずに自然な訴求ができています。
坂口:広告からブランドのファンになる方も多いのではないかと思います。そのため、「MEDULLA」としては獲得につなげるだけでなく、ユーザーに受け入れてもらえる広告を配信していきたいと考えています。クリーンな広告をユーザーに届けられるという点で、LINE広告の審査をポジティブに捉えています。
価格訴求にならない、商品の本当の魅力を伝える広告を出したい
――MEDULLAでは、ユーザーがMEDULLAを手にしたくなるような、ワクワク感のあるコンテンツを提供することを意識しているそうですね。
坂口:「MEDULLA」のWebサイトでは、9つの質問に答える診断コンテンツを用意しています。診断を通じて髪質や髪のお悩みなどをヒアリングすることで、お客様一人ひとりに合ったシャンプー&リペアを提案しています。また、診断をしていただくと商品ボトルにニックネームを入れることができ、お客様だけの「MEDULLA」をお届けすることができます。オンライン広告からWebサイトに流入したユーザーのうち、約8割の方がこの診断まで進んでいます。
小山内:掲載する広告においても、商品の価格より商品の魅力を訴求する内容を意識しています。
一般的には初回500円割引といった価格訴求の反応で良好な結果を得られることが多いかもしれませんが、「MEDULLA」の場合、パッケージのオシャレさや香り、成分のベネフィットを訴求したクリエイティブの反応が良いですね。LINEは月間利用ユーザー数が8,400万人(2020年3月末時点)と多いため、響くクリエイティブを見つけることで、購入者を大幅に増やすことができます。
社内にLPを分析しながら、制作する部隊があり、どんなクリエイティブが効果的なのかを広告から遷移するLPも含め、分析しながら運用を進めています。
坂口:また、「MEDULLA」では新規のお客様に長く使用していただくため、デジタルヘアケアサポートというサービスを展開しています。一度商品を購入したユーザーは商品の使用感や使用後の髪の悩みなどをフィードバックすることができ、次回購入の際にその情報が反映された処方・香りの商品が届きます。
広告でも新規のユーザーへ訴求する際は、二回目以降の購入で上記のようなサービスが利用できるという訴求を行い、商品だけでなくサービスも含めたトータルで「MEDULLA」をお求めいただけるように工夫しています。実際、デジタルヘアケアサポートを使われたお客様は、使われていないお客様よりもLTVが高い傾向にあります。
広告代理店に運用を依頼する際のポイント
小山内:LINE広告の運用にあたっては、弊社が効果的な訴求の検証を重ねてクリエイティブを制作し、Sparty様がチェックするというフローをとっています。
クリエイティブの変更は週に一回程度。配信ボリュームにもよりますが、一週間程度で広告の効果が見えてきます。クリエイティブの制作では主に次の二点を軸に進めています。一つがA/Bテストを行いながら効果の高いクリエイティブを見つけ、そのクリエイティブを軸に他広告にも展開していくこと。
もう一つが、新しい訴求軸のクリエイティブを増やしていくことです。LINE広告のように掲載面が固定されている媒体は、GoogleやYahoo!などの他媒体に比べ、クリエイティブの疲弊スピードが速いと感じます。配信方法に関しては、LINEの圧倒的なリーチ力を活かし幅広い年齢層にアプローチしています。
またLINE広告の勝ちパターンとして、手動入札よりも自動入札の方が効果が出やすい傾向にあるのですが、ただ入札の設定をするだけでなく、自動入札が最適化しやすいアカウント構造や配信設計にする必要があります。
CyberAgentグループでは、LINEのアルゴリズム等を分析する専門部隊を設置して、常に媒体のアルゴリズム動向を追っており、弊社もその分析結果を利用しております。その分析したアルゴリズムによって、オペレーションを決めて実行しているのが特徴です。
これらをベースにしつつも、LINE広告のコンサルタントが案件に応じてターゲティング検証などのPDCAも行い、最適な配信を発掘していくことも大事だと思っております。
――広告運用を代理店に任せる上でSparty社が気をつけているポイントは?
坂口:「MEDULLA」というブランドのことを理解して好きになってもらうことです。そのためブランドとしてどんな姿を目指していくか、CyberACE様にも常に共有するようにしています。
例えば弊社は有楽町マルイと渋谷ヒカリエに店舗を構えていますが、お客様との会話の中で、「MEDULLA」がどんな印象を持たれているか、どんなところに魅力を感じていただいているかも伝えるようにしています。また、クリエイティブの素材を積極的に提供していくことも意識しています。弊社としても広告クリエイティブの重要性は認識しているため、必要な商品の素材は随時CyberACE様とも連携し、必要があれば撮影も新たに行います。
小山内:LINE広告の効果を高めるために、最もインパクトが大きいのはクリエイティブです。「クリエイティブを修正したところ、一日の配信金額が三倍になった」という事例もあるくらいです。
Sparty様はクリエイティブの重要性をご理解いただき、素材を支給してもらえるのでとてもありがたいです。我々としても、LINE広告でどういったクリエイティブであれば効果が出やすいのかを日々追求していますし、LINEからの情報提供があればそれを逐一Sparty様に共有するよう心がけています。
獲得だけでなくLTVを高める!今後の事業展望
――LINE広告を実際に活用して感じる、魅力や強みは何ですか。
小山内:SNS広告としてFacebookやTwitterを活用している企業も多いですが、LINE広告はLINEの圧倒的なユーザー数を基盤にターゲティングの精度が向上し、他媒体に引けを取らないサービスになってきていると思います。
LINE広告は新機能がどんどん追加され、効果的に運用できる土台が整いました。蓄積してきたアルゴリズムや運用の細かいナレッジを活用し、事業者様に貢献できると考えています。
坂口:タイムラインやLINE NEWSなど、「MEDULLA」がターゲットとする20~30代の女性ユーザーが普段使っている配信面に広告を出稿することで、ブランドとして狙っている層に商品を認知していただけるのがLINE広告の魅力です。
現状、前述した「MEDULLA」のフィードバック機能から得られたお客様の悩みはマイページ上で返信を行っていますが、将来的にはLINE公式アカウントを連動させて、よりパーソナライズしたコメントを返すことができればと考えています。多くの方が日々利用しているLINE上でコミュニケーションが取れれば、お客様にとっての利便性向上につながると思います。
小山内:「MEDULLA」の事業を伸ばすには、新規獲得も大事ですが、LTVを高めることが重要だと考えています。
LINEは2019年12月より、LINE公式アカウントやLINEポイントADで取得したデータをLINE広告の配信対象として活用できる「クロスターゲティング機能」をリリースしました。そういった機能を活用して、継続率の高いお客様に近い属性のユーザーにも拡張して配信するなど、広告配信の面でもLTVを上げて事業の成長をサポートしていきたいです。
また、クリエイティブ面で新たな施策としては、LINEの配信面においてADフォーマットの開発などが増えており、新しくリリースされた「カルーセル」という広告フォーマットを実施したり、獲得効率が良い動画の在庫も、過去は配信在庫がそこまで多くなかったのが、直近増加してきているので、再度、動画を試したりしています。ここは、LINE社と密にコミュニケーションを取りながら、マーケット状況を正しく捉えて、検証することが大事だと思っております。
今後は弊社グループ会社の「CyberHuman Productions」というCG素材を使ったクリエイティブで、リモート環境下でもCGを使うことで複数の素材を作れたり、先日リリースしたAI活用して事前に効果を予測したクリエイティブが配信できる極予測AIなど、新しい領域にも取り組んでいく予定です。