2020年、IT先進国のAI科学者たちが日本ECの買い物体験を変える

ECのミカタ編集部

良質な買い物体験とはなにか。台湾有数のAIテック企業awoo は、顧客のマイクロニーズを的確に捉えることで良質な買い物体験を提供しようとしている。アジア初のオムニチャネルマーケティングオートメーションプラットフォーム「nununi(ヌヌニ)」を引っさげ、日本市場に本格参入を果たしたawoo。最先端のAI科学者たちは日本のECをどう変えようとしているのか。awoo Japanの執行役員 事業開発責任者である吉澤和之氏にお話を伺った。

台湾でハイレベルなAIソリューションが誕生する理由

――awooと台湾のECについて教えてください。

awooは2015年に台湾でSEOの会社として設立されました。その後Eメール配信のプラットフォームをリリースし、わずか1年で台湾のシェアNo.1を獲得して急成長してきたスタートアップです。
2018年に日本に進出し、2020年に新規顧客の獲得とエンゲージメント・CRMまで一気通貫で支援できる、アジア初のオムニチャネルマーケティングオートメーションプラットフォーム「nununi」をリリースしました。

台湾はもともと半導体産業や製造業が栄えていたという背景もあり、優秀なエンジニアがたくさんいます。しかしそれだけに頼っていると当然リスクがあるので、IoTやICTに参入しようと台湾政府が積極的に計画を立てていきました。AppleやAmazonなどIT企業の下請けをやっている土壌があり、IoTやICTは親和性があったんです。政府自体がDXの視点を持っていて、人工知能大国を目指して投資をしています。

そういった経済的な発展の経緯と、文化的な熱量、変革に強いというマインドもある。消費者も最先端のものをすぐ受け入れる風潮があり、デジタルに対する抵抗感もないのでしょう。台湾のマーケティングは進んでして、EC市場もどんどん成長しています。

――IT先進国である台湾で、nununiはどのように誕生したのでしょうか。

商品の特徴を商品詳細ページやカテゴリーページ内の情報やその他の様々な情報をもとに、まるで人間の脳と同じような思考プロセスでAIが解析し、その解析した情報をタグとして商品に付与します。例えば「この商品はアクリル素材でふわふわで、女子会のシーンに最適で、清潔感があります」というような、暗黙知のような情報を特性としてグルーピングするのです。

お客様は必ずしもその商品が欲しい訳ではなく、「ふわふわ系のものが欲しい」というような漠然としたニーズで来ている方も多いと思います。そういうお客様が「もう少し何か見たいな」という時に、その「ふわふわ系」のタグをクリックすると、タグに関連する商品でLPが自動生成され、見にいくことができるようになります。

今までは、「Tシャツ」カテゴリーを選んで商品を見て「ちょっと違うな」と思ったら「ワンピース」カテゴリーを見て……ということしかできませんでした。「ふわふわ系」「リゾートスタイル」というような漠然としたニーズの場合、いちいちカテゴリーをまたがなければいけなかった。それがストレスなくタグベースで回遊することができるようになるのです。買い物体験としては、これがあるべき姿だと思っています。

この仕組みが生まれたのは、awooのエンジニアのトップが、とあるアメリカのメディアサイトでタグを見つけたことがきっかけでした。タグを使ってみたところ、そのレコメンドの精度が高かった。そこから、これをECサイトに使えないか、と転換していったのです。

これまでのECでは実現できなかった「偶然の出会い」

これまでのECでは実現できなかった「偶然の出会い」

――漠然としたニーズの商品をレコメンドできるのですね。

消費には目的買いや指名買いなどの能動消費と、レコメンドでの受動消費、それから偶発消費の3パターンがあります。偶発消費は「行動していたら何かのきっかけで見つけた」という体験ですが、行動して・それによって何かに気づいて・それを受け入れる、という3要素がある。まず行動しなくちゃいけないんです。

レコメンドは人の行動にしか着目できないので、Tシャツを見ている人にはTシャツしかレコメンドできません。本当にそれでいいのか。しかも、まとめておすすめしてくれるのはいいけど、自ら行動していないから確率が低い。確率を上げるには「これ欲しいな」と思うきっかけが必要で、nununiタグはその行動の一つの要素になるのです。

「リゾートスタイルが欲しい」という購買動機の場合、Tシャツというカテゴリ内では絞り込むことができるかもしれないけど、本当はTシャツが欲しい訳ではないんですよね。リゾートスタイルのサンダルが欲しくなることもあります。
そうやって関連性をつけるのはユーザーの行動だけではできなくて、商品特性の理解というのが必要になってくる。これを掛け合わせないといけないんです。

はじめはTシャツを探しに来たんだけど、リゾートスタイルに関連するキーワードのタグをクリックして行動してみて、そこで「あぁ、サンダルも欲しいよね、これいいじゃん」という気づきになって買う。そこで偶発消費につながるのです。

ECは能動消費と受動消費ばかりになっていて、この偶発消費が欠けているんです。実店舗では「夏のリゾート特集」などのポップアップを作られるのに、今までのECではなぜなかったのか。一つは、手動で自分たちで企画して制作しなくてはならないというリソースの問題です。もう一つは、「来週末のデートに着る服が欲しい」というような、その人だけのモーメント・その人だけのニーズには対応できないということ。そこをnununiなら補填してあげることができます。

お客様はなぜそれを買いに来たのか。おしゃれになりたいとか、モテたいとか、デートするからとか。そういう購買背景をきちんと理解した上で商品をおすすめする。そのためには、まずはECサイト上で売っている商品をきちんと理解しないと、正しいレコメンドができません。商品理解が大切だというのは当社が提唱している概念です。「何を買うのか」よりも「なぜ買うのか」、「何を売るのか」よりも「なぜ売るのか」、そこがこれから重要になってきます。

ECのための繊細なAIでマイクロニーズを的確にとらえる

ECのための繊細なAIでマイクロニーズを的確にとらえる

――AIで自動化できるというのは大きいですね。

日本のECは運用を外部に委託したり広告代理店を使ったりと切り出すことが多いですが、台湾では自社で運用するのが主流。ECの事業主がサイトの構築から商品の発注まで、すべてやっています。SEOも1人〜2人でやっていて対策が追いつきません。ECサイトの競争力を高めるためには、デジタル化が必要なのです。
nununiはSEOも自動で対策できますから、少人数での運用でも負荷なくできます。導入の際にAPI連携したり商品データフィードを渡したりは必要になりますが、フィードバックの定期レポートもあり、ほぼ自動化でやることはありません。

弊社のAIは人間と比べても精度は90%以上。台湾にいる10名以上の優秀なAIサイエンティストがEC事業者の細かいニーズを満たすために開発した繊細なAIです。リアルタイムでトレンドが変わったりしても、AIが自ら再帰学習できるようになっています。

間接的なパフォーマンスなのでどこまで貢献したかは難しいけれど、nununiの導入で自然流入が30%くらい改善したり、コンバージョンレートも2〜3倍にあがります。既存のページにもタグを貼り付けることで、コンテンツ最適化や外部リンク最適化ができるので、既存ページへの新規顧客の流入増加も期待できます。

――nununiはSEOや転換率にも効果があるのですか。

単純にタグで回遊をさせるだけではなく、生成されたLPがSEOの効果を向上させてトラフィックを上げ、新規のお客様を獲得していきます。SEOの自動対策はサイト内回遊にもつながるので、獲得から転換、顧客維持まで一気通貫で課題解決ができるのが支持される理由です。

SEO対策のために大量のページを生成するツールはあっても、サイト全体をAIで自動化して支援するというマーケティングプラットフォームは、おそらく他にないでしょう。nununiは集客もできて転換もできる。エンゲージメントと回遊率が高まって直帰率が減り、コンバージョンにつながっていく。さらにCRMとしてもタグベースでメール・LINEで追いかけることができます。

――顧客のエンゲージメントを向上させるだけではないんですね。

例えば「Tシャツが欲しい」というのは大きいマクロのニーズ。でもTシャツでも人によって嗜好が違います。ロゴTがいい、Vネックがいい、ハイネックがいいと、いろんなニーズがある。僕はシンプルな無地の黒か白がいい。これがマイクロニーズです。
そのマイクロニーズを起点に、いかにスムーズにワクワクしながら商品探しをしてもらえるかが、このサービスのキモになります。

オンラインとオフラインでニーズが違うということはなく、どちらで買おうとタイミングの違いだけで欲しいものは変わりません。でも今はそこのデータが連携されていない。オンラインとオフラインをどう定義するかというのもありますが、とにかく一気通貫の体験をさせなければいけません。その垣根をなくすためには、デジタルコマースが必要なのです。

ECの店舗に来ているお客様の潜在ニーズを店舗のお客様に伝えて、それを営業トークに使っていくこともできます。ブランドの定義づけや体験価値、ストーリーにデジタルマーケティングをどう活用していくかはチャレンジです。

コロナ禍で厳しい状況ではありますが、マイクロニーズや購買動機を捉えてお客様に楽しい買い物体験を提供し、EC事業者の成功を支えていきたいと本気で願っています。
リテールではAIの力が必須です。人とAIがインテグレーションしないといけない。awoo Japanが日本の小売業界のDX化を推進できるようにしていきます。


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