すべてはあの映画が教えてくれた。ECで叶える新しい本の買い方。

ECのミカタ編集部

「早さ・価格・品揃え」が主戦軸となるECに、セオリーから逆光した新たなサービスが12月1日、登場する。MISSION ROMANTICが手がけるオンライン書店「Chapters」(https://chapters.jp/top)はスローをうたい、「ほしいものが見つかる場」はあえて目指さないという。「偶然の出会いを生み出すサービス体験を提供して、ロマンチックがビジネスとして成立するのかを実証したい」と語る、代表の森本萌乃さんに話を聞いた。

Chapters bookstore

−−サービスの内容をおしえてください。

Chaptersは、毎月本を買うことで、同じ時期に同じ本を偶然読んだ人同士がオンラインでつながるチャンスがある、月額制のオンライン書店です。
選書は毎月、東京・丸の内KITTEにある書店「マルノウチリーディングスタイル」の現役書店員と共同で行い、最初に書店員が選んだ数十冊をChapters運営チームがさらに厳選、「読み進めやすさ」「だれかと感想を話したくなる読後感」「教養として読む価値の高いもの」などの項目に沿って選書が決定します。

本ではなく「読書体験そのもの」を販売したいとずっと考えていて、「思いがけないタイミング×共通性」がサービス体験の基盤です。また選書に手間をかけることで、出会いを求めない人にもご満足いただける書店を目指しています。

着想はあのジブリ映画

−−着想はジブリ映画から得たとか。

2019年の冬に金曜ロードショーで「耳をすませば」を観た時、「絶対これだ!」と思いました。

当時、私が感じていた既存のマッチングアプリへの倦怠感、いつか自分でお客さまに直接サービスを提供したいという夢、この2つがつながって、その夜は眠られなくなるくらいの興奮でした。

2018年の春から地道にパラレルキャリアで起業準備は進めていたのですが、「耳をすませば」をきっかけにアクセルは全開になり、2019年2月に気がつけば株式会社MISSION ROMANTICを立ち上げていましたね。


『耳をすませば』
1995年公開。主人公の月島雫が、父親の勤める図書館で自分が借りた本のどの読書カードにも「天沢聖司」という名前があることに気付き、出会いの伏線となる。

ペインの解消、それだけ?

−−マッチングアプリへの倦怠感とはどういうものでしょうか。

マッチングアプリって、最初に「出会いたい」って意思表示をしないと何も始まらない。その後、ルックスやスペックで人をスワイプして選別していくわけですけど、「自分は何様なんだ」と呆れてしまったんです。

その時に私、別に「出会いたい」わけじゃないと気がつきました。多分「出会えたらいいな」って期待している程度だなと。日常生活では、「出会いたいです!」っておでこに書いて歩かないじゃないですか、笑。マッチングアプリももっとさり気ない「出会えたらいいな」の気持ちを叶えてほしいと思ったんです。

それで、最初は「マッチング」をメインにサービスを作ろうと思っていましたが、徐々に「本屋さん」へと寄っていきましたね。マッチングをメインにした方がサービス設計は分かりやすいけど、私が本当にほしかった「出会えたらいいな」のサービスではなくなってしまうので。

−−あまりこれまでになかったサービスですね。

ペイン(苦痛)を解消しようとか、非効率なものを効率化しようとか、「不」とか「非」がつくものを解消しようというのがイノベーションだと言われることが近年多い気がしています。でも、「それだけか?」と。
私は本来、イノベーションやテクノロジーは豊かに人間が生きていくことのためにあると思っています。
「便利で快適な世の中になったら、人は時間に余裕ができて豊かになる」今はきっとこの考え方がメインでいろんな改革が進んでいますが、私は今の流れのままだと、出来た時間が貧しいものになってしまう危機感がなんとなくあります。
便利で快適なテクノロジーと共存する未来に、時間の使い方についても考えていきたい、というのが私の思想です。

−−読書は「楽しめる時間の使い方」ということでしょうか。

読書はすごくストイックな作業で、動画に比べて理解するのに頭で考える時間が必要です。動画のように早送りする横着もできない。でもその分、読み終えたあとの達成感、半端なくないですか?
活字から登場人物が頭に浮かんでくる、そんな体験は読書でしかできないと思っています。バラエティ番組って楽しいですけど、その楽しさってラクさの前提の上に成り立っていますよね。

今、全国で書店が次々閉店していて読書人口も年々減っていますが、Chaptersを通じて、従来の読書体験が変わって、読書する人が増えればいいなと思っています。電車のなかで読書している人が増えたらうれしいですね。

友達になる最初のきっかけは、共通性を見つけること

サービスの流れ。読書のあと「アペロ」と呼ばれるビデオチャットイベントに参加し、会話が楽しめる。もっと話したいと思えば連絡先の交換へ。

−−Chaptersでは、出会いの前に好きな本という共通性を見つける作業があるということですね。

マッチングアプリを使っている時の違和感から、「共通点を見つけて、出会いたくなって、出会う」という出会いが本来持つ自然な流れを実践したかったんです。人と出会って、友達になれるのってやっぱり共通性を見つけたときですよね。たとえばお酒とか、部活とか。
普通に生きている延長に、共通点のある人とふいに出会えることが良いなと思っていて。そんな人が友人や、恋人候補になる「かもしれない」と。プロフィール欄には、顔写真や職業の入力はありません。

−−サービスを通じて「主人公になってもらいたい」と別のインタビューでおっしゃっていました。

Chaptersは誰にでも開かれていて、「選ばれた人」はいません。
どんなドラマや映画もヒロイン・ヒーローは限られた人だけですが、ここでは利用者全員が映画のように出会える可能性があります。
アイディアはフィクションが起点だったけれど、リアルに落とし込むと等しく全員が主人公になれる可能性を持てたと感じて、主人公という言葉を使いました。

「こんなもの作れっこないよ」を作る

−−森本さんが考える現状のECの課題を教えてください。

ECのいいところって時空・場所を超えられることだと思っています。「理想の出会いを作り出したい」というとき、普通は図書館とかバーとか、場所の設定から入ると思いますが、ECなら場所は関係ありません。
私はECのメリットである「早い」「安い」「品揃え」に、「楽しい」、という定性軸を持ち込みたいと思っています。

−−EC業界にはこういう目線が足りない、とかは?

なんだろう・・・。
頭で描ける範囲でとどまらなくていいのでは、ということですかね。手法で入るのではなく、あるべき姿を考えるべきというか。「こんなもの作れっこないよ」というものを作るのがイノベーションと思っています。
私の場合は、ファンタジーの世界をリアリティに持ち込むことから、アイディアをふくらませていきましたし、アイディアの原点はいつも映画や小説。これからもその視点は大切にしたいと思っています。

今回Chaptersの開発に関わってくださったチームが本当に素晴らしくて、「頭で想像したことをなんでもできると思って、一旦サービス設計してください」って言ってくれたんです。今テストアップで出来上がったものを見ていて、「本当にこんなものできるんだなあ」と感動しています。

EC業界に足りないもの...。でもやってみて思ったのは、発送とか在庫の管理とか実務のフローに関わる部分は非常に大変でした。そんな中で、業務を効率化するツールが増えていて、「このツールを使って効率化しよう」とか「コストカットしよう」とか、ツールありきの発想ってしがちだなと。でも、それだと結局みんなが等しく下降していくのではと思います。

ツールを作っている人って、多分「これを使いこなして、見たこともないものを作ってくれ」と作り手に思いを託しているんじゃないでしょうか。ツールありきで考えない、本当に世界を変えるのは、「もっとこうなったら良いのに」と考えるちっちゃな発想なんだと、そう信じたいです。

私の中でChaptersは、比較対象も前例もないので「ロマンチックがお金になるか」という実証に近いです。今はスタートラインに立ったところ、その仮説の検証が終わるまで止まれません。楽しみです、すごく。

森本さんプロフィール

1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。
2013年に新卒で電通に入社、プランナー業務に4年間従事。外資コスメサブスクリプション「My Little Box」、オーダースーツ「FABRIC TOKYO」の転職を経て、2019年に自身の会社である株式会社MISSION ROMANTICを創業。パラレルキャリアで起業と会社員を並行したのち、2020年から自分の事業へ一本化。2020年12月にオンライン書店”Chapters bookstore”をオープン。

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