【ECのミカタFESTA】10月5日 Web基調講演レポート

ECのミカタ編集部

MIKATA株式会社は、2022年10月5日と6日の2日間にわたり、「ECのミカタFESTA2022」を開催した。

ここでは、1日目に行われたWeb基調講演4本の概要をお伝えする。各講演のテーマは、多サイト展開とモールCRM施策、CX向上のためのデータ活用、顧客に愛されるECサイト運営、Shopify移行で抑えたいポイント、となっている。

【基調講演vol.9】【基調講演vol.9】 自社・楽天・Yahooなど、7サイト運営する『福助』の メーカーが売上を伸ばし続けるモール戦略 福助株式会社×株式会社ブランジスタソリューション

株式会社ブランジスタソリューションは、ECサイトからリアル店舗まで、集客や売上アップのためのコンサルティングを行うとともに、デザイン制作からシステム開発、カスタマーサポートや物流、越境ECサポートなど、幅広く解決するソリューションを提供している。

今回講演に参加する福助株式会社は、実店舗が全国に40店舗、ECサイトは自社サイト以外に、楽天市場、Paypayモールなど7サイトに展開し、売上の拡大を続けている。多店舗展開する背景には、新規出店のコストよりも2号店以降の出店コストの方が低く、横展開が可能で効率的に売上拡大が狙えることがある。

各サイトでの役割も特徴を生かし変えているという。自社サイトでは、「公式サイト」の位置づけで、深みのある情報提供やサポートチャネルとして機能させている。また仕様上の制限がないため、さまざまな施策を実施。一方モールは、自社サイトでは取り込めない新規顧客を獲得できる場と位置づけ、それぞれの商圏にいるお客様へのアンテナショップの役割を担う。商品軸で来店されることが多く、多種多様なお客様の声を拾うことができるため、商品開発にも役立つという。

ところが、コロナ禍に伴うEC事業者の増加により、広告の費用対効果が悪化。広告の掲載費用が上がったことで、予算を減らす方針に切り替えざるを得なくなった。こうした状況から、広告や新規顧客だけに頼らないお店作りに取り組んだ。

そんななか、モールサイトの課題も浮き彫りになってきている。かつては「モールにお店を出せば売れる」時代もあったが、現在は、施策と数字を結び付けた施策に取り組む必要がある。しかし、分析をしようにもモールの仕様の都合から、実際には目の前の数字しか追うことができない。セールなどの施策後の効果検証もしづらく、事業者としてはもどかしい状況だ。

こうした状況を踏まえ、ブランジスタソリューションでは、「モールCRM」を提唱している。モールCRMでは、楽天市場の受注データを分析し適切なCRM施策を見定め、ロイヤルカスタマーを醸成することで、新規獲得だけに頼らないお店づくりを目指す。新規顧客の獲得だけに注力しても、売上の増加効果は横ばいになってしまう。そこで、新規顧客への2回目・3回目購入を促すCRM施策を行うことで、LTVの上昇による売上増加を狙う。モールレポート上では、短期間の費用対効果しか把握できない。しかしツールを導入することで、LTVの算出から3回目購入層まで把握することができる。その結果、限界CPAを引き上げることができ、売上向上につながる。

ECでの売上や事業拡大には、販売チャネルの拡大が重要だ。なかでもモール攻略には、CRMが欠かせない。モールアカウントでは、短期間の数値でしか判断できないが、CRM施策を考えるうえでは長期の数値で判断することが求められる。その上で抽出した長期間での数値を分析し、CRM施策を地道に繰り返していくことで、新規顧客だけに頼らないお店づくりを実現できる。

【基調講演vol.10】 U.S.M.H.がRoktと目指す、CX向上のためのデータ活用ビジョンとは ROKT合同会社&カスミ

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(以下:USMH)は、イオングループのスーパーマーケットの事業体で、マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東を統括し、関東一円に520店舗を展開している。昨今の環境の変化により、お客様がスーパーに来ることができない、あるいはお客様から選ばれない状況になり、スーパーマーケットの存在意義がなくなりつつある。こうした状況からの脱却を図るべく、USMHでは生活者中心主義を掲げ、「お客様にとってのスーパーとはなにか」を問い直し、顧客体験の向上に取り組んでいる。

新事業として「突き抜け鮮度」「エンリッチ」「商品との出会い」「繋がり創出」の4つのコアバリューを掲げ、顧客体験向上を目指す。これらの達成のために、DXフライホイールモデルを作成した。「モノの感動」の実現を起点に事業成長サイクルを回していくことで、デジタルプラットフォームへの基礎固めや新たな価値提供につなげていく。

こうしたなか顧客体験の最大化のために、顧客接点、理解、提案に至る過程で、具体的な取り組みだけでなく、いかに仕組みを構築するか、に注目。しかしそれには自社のリソースでは限界があるため、Roktとのサービスの活用に至った。Roktは、ECに特化したマーケティングテクノロジー企業で、世界19カ国に展開している。顧客の持つECデータを活用し、AIや機械学習を駆使して、最適な案内や広告の提供に取り組んでいる。

従来のEC支援サービスは、購入に至るまでの機能に限られてきた。ところがある調査によると、決済の終わった瞬間が最も消費者が買い物を楽しんでいる、エンゲージメントが高まる瞬間であることが明らかになった。そこでRoktでは、購入完了後にさまざまなメッセージを出すことで、再購入や別商品の購入につなげる、施策に取り組んでいる。

またRoktでは、レレバンスな体験にも注目している。レレバンスとは、ふさわしく似合ったものという意味を持つ。ある調査では、それぞれの消費者の嗜好に合うような、パーソナライズされたレレバンスな体験をさせてくれるお店を消費者は愛用する傾向にあるという。オフラインでの買い物が減り、オンラインに移行しつつあるなか、ECサイトの買い物への要求水準は上がっている。そのためEC事業者は、レレバンスの高いフィードバックを提供することが求められるのだ。そのためには、こうしたフィードバックをするためのデータを収集するための、仕組みを整える必要がある。

一方ネット広告を取り巻く環境としては、サードパーティークッキーがプライバシーの観点から規制されるようになり、ネット上のアクティビティの最適化が課題となっている。そこで、ECをはじめとするリテールメディアが持つファーストパーティーデータを活用して、消費者にとっていい広告・案内を提供していくことが、今後主流になるという。

Roktではフルサービスモデルで、キャンペーンの設定・運用をサポート。個人情報保護やコンプライアンスに遵守したオペレーション、データ活用も世界各国のビジネスアナリティクスエキスパートによる知見を集約している。USMHでは、ネットスーパーで商品購入されたお客様に、購入完了直後にミールキットを紹介するほか、お客様属性や嗜好に合わせた第三者の広告配信にも取り組んでいる。

【基調講演vol.11】 「ひとりEC」の著者で有名な健康食品EC「ミウラタクヤ商店」 ミウラタクヤ商店(株式会社モノリス)

競合はユーチューバー? これからのECサイトが顧客に愛され生き残るために不可欠なこと

三浦氏はこれまで、ECサイトの店舗運営や他社の運営支援を10年近く行ってきた。そのなかで、情報の受け取り方やモノが売れづらくなるなど、ECを取り巻く環境は変化したという。これまでは商品があれば、お客様に振り向いてもらうことができた。しかしSNSや動画メディアが普及したことで、消費者の多くが情報に対して受動的になった。こうしたアプリに対抗するために、面白い情報の発信が求められている、と分析する。

その上で、独自ドメインでは「コト」と「ヒト」に重きを置き、接客の充実やコミュニティやコンテンツの拡充といった施策が求められる、と三浦氏は指摘する。その先にあるのは、商品でなく消費者への「よりよい生活」の提供だ。他との違いや販売者である自分たちが何者なのか、どういうメリットを提供できるのか、などを明確にし、消費者が商品選択の際に認識できる言葉で発信することが重要となる。ミウラタクヤ商店では、売上の7割近くがリピートのお客様だ。こうした信頼されるお店作りのためには、お客様の役に立つ情報の発信が重要だと、三浦氏は話す。

ECサイト運営が可処分時間の奪い合いに突入するなか、競合相手となり、現在可処分時間の多くを得ているのが、インフルエンサーだ。自社の商品と関連するインフルエンサーをチェックし、伸びている投稿を分析することで、表現力が磨かれていく。それと同時にECサイトの情報発信として、お客様の役に立つものに変化していき、ECサイトとしての信頼性の向上にもつながる。

これからのECサイト運営はテクノロジーの発達に伴い、より泥臭さが重要になる、と三浦氏は指摘する。
「技術の発達に伴いオペレーションが簡略化されてきています。これまでかけていた労力を営業やコミュニケーションへシフトすることで、お客さまのニーズに応えられ売上向上につながります。中途半端なコンテンツではお客様から振り向いてもらえません。だからこそ、振り向いてもらえる施策に注力することが大切です。そのためにもECサイト運営には、お客様の役に立つ発信が求められるのです。」(三浦氏)

【基調講演vol.12】 Shopifyで大規模ECを構築/乗り換えする時に抑えておきたいポイント 〜システム,デザイン,チーム等〜 株式会社ハックルベリー

【基調講演vol.12】 Shopifyで大規模ECを構築/乗り換えする時に抑えておきたいポイント 〜システム,デザイン,チーム等〜 株式会社ハックルベリー

ハックルベリーは、Shopify向けの日本語アプリケーションを多数提供する国内No.1の開発企業で、展開するアプリは、国内10,000店舗以上で利用されている。ShopifyStoreの構築支援、アプリ制作、広告・CRM運用の3つの事業を手掛けている。これまで大規模ECのカート移行に多数取り組んできた視点から、よくある失敗のポイントについて紹介した。

1つ目は、リプレイスの軸を決めないこと。リプレイスのゴールが何なのか決めないと、ぶれが生じてしまう。そのため、リプレイスの優先度や軸を定めることが求められる。

2つ目は、意思決定者があいまいであること。意思決定者がいないことで、社内の確認や議論の時間が増え、スケジュール遅延が発生し、コストもかさんでしまう。コンサルを入れるのも一つの方法だが、判断ができる人間を社内に設定する必要がある。

3つ目は、要望を複雑にしすぎてしまうこと。複雑な機能がいくつか出てくることで、その後の運用が難しくなり、利便性が失われ顧客にとっても使いづらい仕様になる恐れがある。

これら3つの課題は、連動している。たくさん出てくる要望に対し、軸に沿って優先順位をつけて、誰が判断するか明確にする体制づくりが求められる。そのためには社内外に関わらず、ECに特化したプロチームを組むことが必要だと、安藤氏は話す。
「ECはやることが多く、総合格闘技のようなものだといえます。集客から物流、仕入れ、システム、CS,決済に至る全ての工程に対応し、売上を作ることを理解したチームが求められます。」(安藤氏)

続いてShopifyへの移行について手順を紹介した。手順には大きく6つの段階がある。1つ目の要件定義は、工程の始めに取り組むもので、それだけ重要なステップといえる。ビジネスとしての要件定義と、それを実装するためのシステムとしての要件定義の2種類に分かれるが、それぞれを切り分けて明確にする必要がある。事業とシステムの両面を理解したうえで適切な提案ができることが求められる。

2つ目は設計・デザインのフェーズ。Shopifyでは頻繁にアップデートが行われるため、常に最新のアップデートを把握し、Shopifyのシステム上の制約を理解したチームが求められる。

3つ目は各種システムの実装。開発状況をブラックボックスにせず共有することが大切だ。その際、非エンジニアでも理解できる言葉で適切に共有し、一緒にプロジェクトを進めていけることが求められる。

4つ目は各種設定。Shopifyの設定の仕様を理解し、便利なアプリを把握して使いこなしていることが求められる。実績が豊富で、さまざまなアプリの利用経験がある方が望ましい。

そして、データ移行から最終確認のフェーズでは、移行実績が豊富でトラブルを理解することが求められる。危機感や調整ごとを事前に共有できることが望ましい。

これらを踏まえて、自社に合う人たちときっちり進めていく必要がある。プロチームを選ぶうえでは、危険度の許容度が同じであること、コミュニケーションの相性が同じであること、課題解決能力が高いことを確認するといい。

ECサイトをShopifyに移行すべき理由としては、大きく3つある。1つはインフラが強固であること。インフラが強いことで安心して運用できる。Shopifyはクラウド型のカートでありながら、アクセスが増える時もオートスケールで対応してくれる。

2つ目は低コストであること。月額数千円から利用でき、使い勝手に合わせて料金を選べるようになっている。実際、コストダウンでShopifyへの移行を検討する企業も多い。

3つ目は拡張性が高いこと。約10,000件のアプリがあり、実装したい機能は基本的にすでに存在しており、ノーコードでストアの機能を拡張できる。ハックルベリーでも多数のアプリを作成している。そのほか、標準機能でさまざまなCRM施策が可能なほか、オペレーションを簡略化できることも、Shopifyの特徴といえる。

昨今、EC事業者の増加に伴って広告費が高騰しているほか、運用も複雑化している。こうしたなか、顧客獲得後にお客様と長く関係性を続け、LTVを最大化させることが求められている。Shopifyでは、便利なデータの持ち方ができるほか、取り組めることが多い。

加えて、ShopifyFlowを活用することで、毎日行うオペレーションをノーコードで自動化が可能だ。複数のShopifyアプリを連携することで、さまざまな自動化設定を実現できる。こうした機能により省力化することで、企画やマーケティングに注力でき、リピート率を高めることができる。

Shopifyには、多数のパートナーが存在している。よくコミュニケーションをとることで、自社と相性の合うパートナーを見つけることが、プロジェクトを円滑にすすめるうえで重要となる。


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