2024年キーワードは「クロスチャネル」。自社EC、Amazon、楽天等各モールは“かけ算”で売上アップを狙え! 1年で売り上げ1.8倍に
アフターコロナで消費者の購買行動が変化している。コロナ禍ではネットの比重が高かったが、新型コロナ5類移行後の消費者行動は確実に実店舗の利用再開の傾向が出てきており、右肩上がりだったEC市場の成長は鈍化。頭を抱えている事業者は多いだろう。こうした逆風の中でも着実に業績を伸ばす企業は、どんなことをしているのか──。
成功企業に共通するのは、「クロスチャネル」における取り組みだ。株式会社いつもの入山貫氏に、2024年のEC業界の展望と、自社ECやモールでの施策を“かけ算”で同時成長させるクロスチャネルマーケティングの重要性、同社の具体的な支援策などについて話しを聞いた。
2024年を勝ち抜くキーワードは「クロスチャネル」! 相乗効果を狙えるアプローチを
──2023年のEC業界の状況を踏まえた2024年のキーワードは?
近年EC市場は拡大傾向にありましたが、昨年5月にコロナ(新型コロナウイルス感染症)の感染症法上の位置付けが5類に移行してからはグーグルの検索トレンドを見ても「ブランド+通販」が減り、「ブランド+店舗」が増加するなど、リアルへの回帰が顕著です。コロナ期は突貫工事で作ったようなサイトでも売上が伸びていましたが、2023年の後半からはそういったショップの成長が鈍化しました。
ただ、やるべきことを正しく実施していた企業のEC売上はしっかり伸びていました。1年で昨対1.8倍の1億円を突破した事例もあります。EC事業者が2024年を勝ち抜くキーワードは「クロスチャネル」です。自社サイトや複数モールで商品を販売している企業も多いと思いますが、それぞれのチャネルで施策を完結させるのではなく、相乗効果を狙った複合的なアプローチが事業成長のカギとなります。
──クロスチャネル化に取り組むことで、EC事業者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
最大のメリットは、複数のチャネルを“同時成長”させられることです。まず前提として自社ECと各モールのチャネルはそれぞれ売り方のセオリーが異なり、売れる商品の傾向も異なります。例えばAmazonは楽天に比べて平均単価が低く、売れ筋商品のターゲット年齢が低めです。このためそれぞれのチャネルを個別に最適化するのは当然です。ただし、これは足し算であり「マルチチャネル」の考え方です。
一方「クロスチャネル」は掛け算で、相乗効果を狙います。個別最適だけにとどまらないEC事業の全体最適化です。同じ投資額であっても掛け算ですから、足し算よりも高い事業成長を実現可能です。例えば、同じ商品であれば、楽天市場でもAmazonでも、顧客の属性はそう大きくは変わりません。商品の探し方や買い方も似ています。これは自社ECサイトも同じことが言えるでしょう。こういう共通部分に着目し複数チャネルのデータを比較・分析すると、これまで見えなかった顧客の輪郭が立体的に浮かび上がります。
具体的な例でいうと、あるジャンルで後発かつ高価格な新商品の売り方や訴求ポイントを発見するために、Amazon広告であえてライバル企業と比較されるような枠に出稿し、いろいろなデータ検証ができました。それによって、知名度を上げるような広告に投資するのではなく、検討客に特徴を比較して買ってもらうほうが効果的な新規客の獲得につながることがわかり、楽天や自社ECでも比較訴求を丁寧に行い、売上につなげることができました。このようにチャネルごとに分断して考えるのではなく、横串を通して戦略と施策を行うことが全体最適につながります。
バラバラなアウトソーシングでは売上拡大が困難 「いつも」ならクロスチャネルのシナジー最大化が可能
──クロスチャネル化を支援するための、貴社の組織体制について教えてください。
近年はAmazonや楽天市場など、特定チャネルに特化した専業コンサルが増えていますよね。実は当社も以前は各チャネルごとに専門部隊を設けていたのですが、複数チャネルを同時にご支援する体制に課題がありました。一方、クライアントは大抵一つのチャネルだけでなく複数チャネルでECを展開しており、本来は部分最適化でなくEC事業の全体最適化を望んでいます。そこで、現在は当社はクロスチャネル事業本部という組織へ進化しています。いわば縦割りだった組織に横串を通すことで、チャネル間を横断して全体最適を目指す“かけ算の戦略から運用まで”が可能になったということです。これにより従来のチャネルごとの専門性と深いノウハウはそのままに、各チャネルのデータ比較や施策共有がしやすくなりました。
──具体的には、どのような支援をされているのでしょうか。
例えば「クロスチャネル」で売れ筋商品を比較し、広告効果に対して最適な予算のアロケーション(配分)をご提案します。成果の出にくい商品に回っている広告費を売れ筋商品に集中させることで、高確率で複数サイトでの同時売上アップが実現できます。具体的には、複数チャネルで商品ごとの売上や広告効果を比較すると、共通の商品が同時に売上も広告費用対効果も急上昇していることがあります。要因は季節変化や認知施策効果などさまざまですが、チャンスなので一気に複数チャネルで同時にその商品へ広告を集中させると、どのチャネルも高い費用対効果のまま売上を大きく伸ばすことができます。また、各モールのランキングやレビューを比較活用した「3C分析(※1)」で改修した顧客視点に立った訴求力の強いページを各チャネルで一斉に採用し、転換率を同時にUPさせることも実現できています。
キーワード選びが難しい楽天市場のRPP広告(※2)も、AmazonやYahoo!ショッピングで成果の出たキーワードを利用することで早く成果を出せます。RPP広告はキーワード設定が10パターンしかないため、成果の出るものを見つけるのに時間がかかります。一方、Amazonのスポンサープロダクト広告やYahoo!ショッピングのメーカーアイテムマッチ広告では多くのキーワード設定が可能なので、売れたキーワードを見つけて楽天RPPでも設定すれば、高い確率で売れます。こうしたご提案を部署間の垣根なくシームレスに提供できる点が、当社のクロスチャネル支援の強みです。
※1:「Customer(顧客)=市場・顧客の分析」「Competitor(競合)=競合の分析」「Company(企業)=自社の分析」という、3つを軸にして市場環境を分析するフレームワーク
※2:Rakuten Promotion Platform=楽天市場内における検索連動型広告
──巣ごもり消費の反動で成長の鈍化が懸念される2024年のEC業界では、クロスチャネルマーケティングの重要性が高まりそうですね。
そうですね。ただ、一部のサイト運用をアウトソーシングしていたり、チャネルごとに異なる専業コンサルに委託していたりすると、チャネル間のデータ比較や情報共有が極めて困難になります。運営するサイトの全体最適化を実現し、足し算でなく掛け算の相乗効果で全チャネルでの売上アップを狙うのであれば、クロスチャネル戦略にたけた支援事業者とパートナーシップを組むのが成功への近道です。
大手はもちろん小規模事業者でも実績
──貴社のクロスチャネル支援で成功されている事例を教えてください。
大手消費財メーカー様を支援させていただき、12カ月でEC売上を1.8倍の1億円超えにすることができました。当初は楽天市場のみのご支援で順調に成長していましたが、別の支援会社様に任せた自社ECが伸び悩んでいました。そこで自社ECもお任せいただくことになり、楽天市場で培った売れる商品ページを次々と移植し、楽天のLINE運用をベースにした自社ECのLINE運用を開始するなど、多くのクロスチャネル施策を展開すると、止まっていた成長が再び動き出しました。さらに、これらの施策を横展開できるYahoo!ショッピングの開店もご支援することで開店と同時に順調な売り上げ成長を実現し、3チャネルのシナジーで同時成長させることができました。結果として3チャネル合計で月商1億円を超える規模になり、EC業界全体が停滞する時期でもしっかりと成果を残せました。
──商品力や資金力など各種リソースに乏しい中小企業や小規模事業者でも、同じような成長が見込めるのでしょうか。
むしろ中小EC事業者様の支援は、当社が得意とするところです。ある家具メーカー様では楽天とAmazonご支援開始時に月商の合計が170万円だったところ、6カ月で合計月商1000万円を突破することができました。Amazonの広告で成果の出たキーワードを次々と楽天RPP広告へ流用したことや、広告費を“月間の合計金額”で預かることで売れるイベント月にモールをまたいだ広告費のアロケーションを細かく実施しました。これは社内運営なら可能ですが、チャネルごとに別の支援会社に任せていたら不可能な運用です。もちろん、個別の最適化も必要なので、チャネルごとの適切なセールを選んで参加提案もしました。
どのタイミングで、何にどう取り組むべきか――。予算をどう配分すれば、利益を最大化できるか――。当社がクライアント様の要望に応じて、バランスを見ながら施策の優先順位をつけて実行に移せるのは、すべてのチャネルを横断的に見られる体制が整っているからに他なりません。
──貴社は幅広いジャンルで企業のEC事業の総合支援をされていますが、依頼を検討する読者に向けてメッセージをお願いします。
いつもグループは、商品の企画・設計・製造からSNSなど認知施策、EC・D2C戦略の立案、サイトの構築・運営、デジタルマーケティング、物流、ファン化、拡散施策までを一気通貫フルファネルでサポートできます。広告代理店、EC支援企業、SNS企業など外注パートナーに個別依頼する形はEC事業全体を全体最適にするのは難しいです。外注パートナー探しにお困りでしたらご相談ください。
また、ECのバリューチェーン全体を熟知しているからこそ、部分的なご支援でも短期間で結果を出すことも可能です。
特にクロスチャネル支援は今後注力していく分野のひとつです。複数チャネルに出店し、なおかつ各チャネルでの全体最適・同時成長をご希望される事業者様、または現時点では1チャネルのECでも将来的に複数チャネル展開をお考えの事業者様は、お気軽にお問い合わせください。
※グラフ、画像提供:株式会社いつも