今、ECで売れるギフトの3つのポイント【株式会社ギフトモール セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長 小川安英氏

クリスマスやお正月、バレンタインデー、母の日といったギフトシーズンは、EC事業者にとって大きなビジネスチャンスだが、その「ギフト商戦」に備えるためには、どのような対策が必要なのか。そこで、ECのミカタでは2024年8月29日、「クリスマス・バレンタイン、ギフトシーズンを勝ち抜くためのギフト対策」をテーマにオンラインカンファレンスを開催。業界のエキスパート6名によるセッションでは、来たるべきギフトシーズンに向けた実践的ノウハウと取り組みが、次々と語られた。そんな「ギフト商戦カンファレンス」から今回は、株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長の小川安英氏による基調講演をレポートする。

インターネットチャネル伸張がもたらす新しいギフトのあり方

株式会社ギフトモール(以下「ギフトモール」)は2014年に創業した「オンラインのギフト特化型ECモール」。月間訪問者数は約3600万人、出店店舗数は約3550店舗、出品数は約68万点。関与取扱高は約200億円/年という、 国内最大級のギフトプラットフォームであり、同業7サービスの中で、初めてした。

※オンラインギフト総研ギフト調査(2023年6月)。カンファレンス登壇資料より

また2021年には、客観的な立場で現代のオンラインにおけるギフトのマーケットを調査研究、発表する「ギフトモール オンラインギフト総研」を発足。このオンラインギフト総研 所長の小川安英氏によると、活動内容は大きく2つで、一つは「調査」。約10兆円ともいわれるギフト市場ではこの数年でデジタル化が急速に進行し、新しいギフト文化がどんどん生まれてきている。その“兆し”をつかまえて調査し、発表するのが一つ。もう一つは、こうした新しいギフトのあり方を、EC事業者やギフト関連事業者に向けて提言を行うことだ。

小川氏は近年のギフト市場におけるインターネットチャネルの伸長や、自家需要とギフト需要の質的な違いを紹介したうえで、セッションの主題である「ECで売れるギフトの3つのポイント」を解説。ギフト需要ならではの顧客ニーズを捉えて成功しているEC事業者には、共通する3つのポイントがあるという。

2020年から2024年の、ギフトの販売チャネルの変遷(カンファレンス登壇資料より)

ECで売れるギフトのポイント① 「パーソナライズ・個別化」

例えば、「友人の誕生日」の3日前に、本人の名前や記念日が入っているギフトを贈りたいと思いついたとしても、3日前のオーダーだと注文を受け付けてくれないところがほとんど。そんな時、1個ずつ個別の名入れをした「パーソナライズギフト」をスピーディーに提供すれば、喜ばれるのは確実だ。

小川氏によると、名入れをしたり似顔絵をプリントしたりするパーソナライズギフトは20年ほど前からあったが、ある程度まとまった数の注文が必要なことが多かった。だが、インターネットやスマートフォンの普及で誰でも手軽に1個から注文でき、最短で翌日に届くというサービスも可能になっている。「ギフトモールの中に掲載されている商品68万商品くらいの中の約8万商品ぐらいが、こういったパーソナライズができるギフト商材。商品数も増えておりますし取扱高も増えてきております。個別の対応が可能な事業者であれば、『パーソナライズギフト』を検討してみてはいかがでしょうか」(小川氏)。

パーソナライズギフトの商品数・取扱高の推移。「ギフトモール」データ(2023年4月時点。カンファレンス登壇資料より)

商品への名入れだけでなく、同梱物やラッピングでもパーソナライズされた特別感を演出(カンファレンス登壇資料より)

ECで売れるギフトのポイント② 「分ける」と「包む」。

ギフトで圧倒的に選ばれているのは食品・菓子。しかも自分では買えないちょっと贅沢なグルメが喜ばれるイメージが強いが、物価高騰が続き、家計の助けになるような実用的なギフトがいいというニーズも生まれている実用的であると助かる食品の代表といえばお米だが、お米10kgをそのまま贈っても、ギフトとしては微妙。そんな場合の解決策として増えているのが、小分けにして用途に合わせたパッケージで「包む」という方法だ。

「例えば、『引っ越し挨拶ギフト米2合』という商品があります。これはお米5つ星お米マイスターが厳選したお米(種類は選択可能)を2合に小分けし、パッケージにシーンごとの挨拶デザインをプリントしたもので、引っ越しにぴったりな挨拶ギフトとして人気です。このように、小分けにしたり見せ方・ラッピングを工夫したりすることで、自家消費向けが中心の商品がギフト商材に転換するのです」(小川氏)。

「引っ越し挨拶ギフト米2合」の例(カンファレンス登壇資料より)

「お菓子リュック」の例。スナック菓子もリュック型にまとめることでギフト商材に(カンファレンス登壇資料より)

ECで売れるギフトのポイント③ 「法人の需要に応える」

小川氏が3つ目のポイントとしてあげたのが「法人向けギフト」。法人向けのギフトは1件で数百~数千個といった大量注文につながることもある。では、EC事業者はどのように、この法人向けギフトに取り組んでいけばいいのか。小川氏は、法人ギフトにはさまざまな事例があることを指摘する。

法人向けギフトで想定される利用シーン(カンファレンス登壇資料より)

福利厚生・社内報奨用のギフト、従業員向けノベルティとして小川氏が例にあげたのは、名入れのできるステンレスボトルや筆記具、USBメモリといった商材だ。「最近は従業員向けに、好きなものが選べるデジタルのカタログギフトも人気があります」(小川氏)。また、来店や相談会などへの参加の謝礼としてギフトを用意する企業も多い。例えば、主なターゲットを20代から40代の女性とする保険の無料相談会参加への謝礼であれば、予算は1500円前後でお渡しできるもので、食品やドリンク、雑貨などが喜ばれるという。また、自動車などの高額商品の成約の記念品といった場合は、ある程度単価の高いグルメ商品に需要がある。「タオルや食器といった日常で使う自家需要商品も、名入れなどの加工をすることで法人ギフトとして成立します。法人ギフトは永続的なニーズがあり、対応できると大きな差がつきます。大型発注への対応も検討してみてはいかがでしょうか」(小川氏)。

プレゼントというと、珍しいものや手に入りにくいものを探しがちだが、普段自分でも使っている自家需要用の品物でも、ECならではの仕組みを活かして、贈る相手や利用シーンに合わせた贈り方を工夫することで、特別なギフトとして人気商品になる。目からウロコの貴重なアドバイスだった。

小川 安英(おがわ やすひで)
株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長 京都大学卒業後、1998年株式会社リクルート入社。『リクナビ』『じゃらん』の商品企画責任者などを経て、リクルートホールディングス FinTech推進室 室長、リクルートマーケティングパートナーズ 取締役、リクルートファイナンスパートナーズ 代表取締役などを歴任。人材、旅行、金融にまたがる幅広い領域で、新規事業開発、アライアンス戦略、グループ会社経営管理に携わる。ギフト領域におけるイノベーションを目指し、株式会社ギフトモールに参画。


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