楽天市場の店舗運営はAIの活用で20%効率化を目指す 進化を続ける「RMS AI アシスタント β版」の効果とは

ECのミカタ編集部 [PR]

楽天グループ株式会社 ECマーケットプレイス開発部 プロダクトマネジメント課 シニアマネージャー 高橋りさ氏

生成AIの発展により、あらゆる事業で効率化が進んでいるが、それはECモールでの店舗運営にも当てはまる。2024年3月、楽天グループ株式会社(以下、楽天グループ)は楽天市場へ出店している事業者の業務を効率化するために「RMS AI アシスタント β版」の提供を開始した(※1)。

「RMS AI アシスタント β版」は、問い合わせ回答や商品画像背景の自動化など店舗運営の効率化に大きく貢献するという。今回は、同社 ECマーケットプレイス開発部 プロダクトマネジメント課 シニアマネージャー 高橋りさ氏に、同サービスの活用方法や効果について伺った。
※1 https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2024/0430_01.html

「RMS AI アシスタント β版」、店舗運営の効率化に

──楽天市場では、AIを活用した店舗運営支援ツール「RMS AIアシスタントβ版」を2024年3月に提供開始しています。改めて開発背景についてお聞かせください。

AIが発展を続ける中、楽天グループではAI化を表す造語「AI-nization(エーアイナイゼーション)」を用い、マーケティング効率・オペレーション効率・クライアント効率をそれぞれ20%ずつ向上させる「トリプル20」プロジェクトを始動しました(※2)。これにより、AIを用いた様々な業務効率化の動きが社内全体で進んでいます。

楽天市場の店舗様向けにもどのようなAI機能を実装できるか考えたところ、店舗運営の効率化が期待できる「RMS AI アシスタント β版」の導入に至りました。
※2 Pathways to Growth 統合報告書2023(楽天グループ株式会社)p23

──「RMS AI アシスタント β版」には、具体的にどのような機能があるのでしょう。

商品管理の「R-Storefront」には商品説明文作成支援AIと商品画像加工支援AI、問い合わせ管理の「R-Messe」には問い合わせ回答作成支援AI、データ分析の「R-Karte」には店舗カルテ分析支援AI、これに加えてAIチャットボットの4つの機能を「楽天市場」出店店舗向けの店舗運営システム「RMS」(Rakuten Merchant Server)に搭載しています。

※画像提供:楽天グループ株式会社

これまで培ってきた店舗様のユースケースを加味しながら、日々の店舗運営が効率化できるようなプロダクトを順次追加しています。4つのプロダクトのうち、今回は最も使用頻度の高い「R-Messe(問い合わせ管理)の問い合わせ回答作成支援AI」と店舗様から要望が多かった「R-Storefront(商品管理)の商品画像加工支援AI」についてご紹介できればと思います。

──リリースから10カ月ほどが経過しましたが、導入の進捗はいかがでしょうか。

想定よりも多くの店舗様にご利用いただいています。店舗様全体のうち、一度でも利用したことのある店舗様は半数以上にのぼり、利用が定着している店舗様は20%を超えました。

ただ、「AIを使ったことがない、怖い」と感じられている店舗様も一定数いると考えています。そういった店舗様に関しては、引き続き店舗様向けの講座開催や成功事例の共有を通してAI活用へのハードルを下げたいと考えています。また、定着しなかった店舗様からも理由をヒアリングし、日常的にお使いいただけるよう機能面を向上させている最中です。

「R-Messe」は問い合わせ対応が多い店舗や少人数運営店舗に

──「R-Messe」の問い合わせ回答作成支援AIの使い方を教えてください。

ユーザー様からお問い合わせがあった際、問い合わせ画面の「AIで回答文を生成」というボタンを押し、回答の概要を短文で入力するとAIが自動で回答を生成します。

例えば、再入荷予定のお問い合わせを受けた場合、「ごめん、未定/定期的に確認して/またよろしく」のように概要を入れると、下記画像のようにAIが自然な文章を生成してくれます。生成された文章が問題なければそのまま送信できますし、修正が必要であれば微調整して送信できます。

R-MesseAI回答生成-Step2 (※画像提供:楽天グループ株式会社)

──「R-Messe」の問い合わせ回答作成支援AIの活用で得られるメリットと店舗様の反応をお聞かせください。

「RMS AIアシスタントβ版」の中でも「R-Messe」の問い合わせ回答作成支援AIは店舗様の利用率が一番高い機能です。問い合わせ対応は毎日のように発生する作業ですし、素早い返信が求められます。素早くユーザー様に返信をすることによって購買体験の満足度向上や信頼関係の構築につながります。

問い合わせが多い店舗様や、問い合わせ対応を一人で担当している店舗様からは「AIを導入して楽になった」「業務効率が上がった」とのお声をいただきました。

──「R-Messe」の問い合わせ回答作成支援AIについて、今後の展開もお聞かせください。

今後は楽天のデータや過去の回答データなどを参考にしながら、より精度の高い回答生成ができるように進化させていきたいです。

店舗様によって、ユーザー様への「丁寧さ」の度合いや表現方法は異なります。これを踏まえて、楽天が持つ店舗様の商品・注文の情報を読み込ませて、店舗様がどのように回答しているかを学習しながら店舗様のスタイル、個性に寄り添った形で回答文が生成できるようになることを目指しています。

「R-Storefront」では、自動で商品画像の背景を生成できる

──続いて「R- Storefront」の商品画像加工支援AIの使い方を教えてください。

商品画像加工支援AIは、商品画像の背景をAIが自動で生成してくれる機能です。現在は「テーブル」「キッチン」「アウトドア」「リビング」の4つの設置場所と、「白背景」「木目」「ギフト」の3つの背景を合わせた7種類から選択できます。一つの画像は30秒ほどで生成され、もし気に入ったものがなければ何回でも生成し直すことが可能です。

「白背景」は、商品を切り抜いて白い背景に配置することで、商品自体が目立つ画像を作れるため、人気の背景です。また、従来よりも簡単に白背景の画像が作れるようになったことも、その人気の理由のひとつです。

「アウトドア」は商品を外に持ち出さなくていいですし、天気を気にする必要もありません。「テーブル」や「リビング」もスタジオを予約せずに綺麗な画像を作れるので、店舗様の業務を大きく効率化できると同時にコンバージョンを上げられる機能でもあります。

──アップロードする画像で気をつけるポイントや、生成後の著作権帰属先について教えてください。

現在のAIの能力として綺麗に生成されないケースもあるため、「商品が1点のみ」「商品全体が写っていて、商品が見切れていない」「商品の周囲に十分な余白がある」「商品に文字などの要素が重なっていない」画像を推奨しています。生成後はブランドや会社名のロゴを入れるなどの加工も可能です。

また著作権の帰属は店舗様からよく聞かれる質問の一つですが、AIで生成した画像については、著作権はどこにも帰属しません。しかし、アップロードする画像自体に著作権がある場合、著作権法による保護の対象となり、原則著作権者の許諾が必要になります(※3)。店舗様自身が扱っている商品で自社に著作権があれば問題ありませんが、第三者の著作権があるものを扱う際は十分に注意しておきましょう。

※3 AIと著作権(文化庁著作権課)

──「R- Storefront」の商品画像加工支援AIについても今後の展開をお聞かせください。

今後はさらにテーマを増やしていきたいです。例えば、ファッション製品であればモデルさんが製品を着用した画像生成ができると効率化とコスト削減の両方を実現できますよね。現在提供されている「テーブル」「キッチン」「白背景」の3つはリリース後に店舗様のお声を反映して追加されたものですが、今後もニーズに応じて増やしていくことを考えています。もちろん、AIの進化に伴う生成品質そのものの向上も継続実施していく予定です。

今後は楽天の持つデータとAIを掛け合わせた支援をしていく

──「RMS AI アシスタント β版」を活用するためのサポート体制についてお聞かせください。

店舗様向けにECの運用などを講座形式で伝える「楽天大学」の中に、AIに関するコンテンツである「楽天AI大学」を立ち上げました。楽天AI大学では、店舗様向けにRMS AI アシスタントに関する講座を提供しており、ライブ形式で行っているものもあります。内容としては、基本的なプロダクトの使い方や成功事例の共有、またライブ形式の講座では開発チームがAI活用に関する店舗様からの質問にも回答しています。その他にも、全国各地で店舗様向けのリアルイベント(勉強会)も開催し、「AIがわからない、少し怖い」と感じている店舗様への理解度促進や店舗様からの声を集めてサービス改善に取り組んでいるところです。

日常業務で本サービスを活用する上で、不明点があれば、店舗様向けの「店舗運営Navi」や、店舗様が意見を投稿できる「VOM(Voice of Merchant)投稿フォーム」、コールセンターなども設置しているので、いつでも質問していただけます。


──最後に、今後の展望をお聞かせください。
店舗様によってAIを活用したユースケースは異なるので、今後も店舗様の声をもとに、店舗様に寄り添った機能をアップデートしていきたいです。2024年はAI元年として「RMS AI アシスタント β版」を導入する年になりました。2025年は楽天の持つ膨大なデータを活用して、AIでより精度の高い支援を提供することを考えています。


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