
2024年を総復習!大規模ECの最先端事例【ecbeing セミナーレポート】
EC業界を取り巻く状況は刻一刻と変化しており、特に近年では大幅な変革が至るところで起こっている。株式会社ecbeingは1,600サイトを超える導入実績を持つ、ECサイト構築プラットフォームを提供する会社だ。
2024年12月に開催されたECのミカタカンファレンスでは、上席執行役員 営業統括部 統括部長の斉藤淳氏が、2024年の総復習として大規模ECの最先端事例を複数紹介し、今後のトレンドを深掘りした。「時流に取り残されないようにしなければ」と思いながらも、日々の忙しさからなかなかトレンドを追いきれない。そんなEC担当者は、ぜひこのセミナーレポートをご一読いただきたい。
2024年は顧客ロイヤリティの向上に注力した年
斉藤氏はまず、2024年のEC業界における取り組みのトレンドについてまとめた。とくに2024年は「顧客ロイヤリティ向上に注力する傾向が非常に強かったと思います」と発言した上で、次のように述べた。
「メーカーは直接ユーザーと繋がることによって、今まで得られなかった情報を手にすることができるようになりました。そして、お客様がよりブランドを好きになってもらえるように、ロイヤリティを高めていく、ファン化を推進していくといった取り組みが非常に多い年だったと思います」
そして、とくにその傾向が強い事例を紹介した。
事例1:DEAN & DELUCA
斉藤氏が一つ目に挙げた事例は、1977年にニューヨークで誕生した食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」だ。このたび、ecbeingがサイトリニューアルに関わったという。
DEAN & DELUCAには、アクセス集中によるサイトダウンや開発コストに関する悩み、そしてブランドサイト、ECサイト、オウンドメディアの3サイトを別々に運営しているという課題があった。ecbeingは、3サイトを統合し、一つのECサイトの中でブランド体験を提供できるようにサイトリニューアルを行った。
斉藤氏によると、改革のポイントは店舗との連携強化にあるという。コロナ禍で重要性が高まったオムニチャネル戦略をさらに進化させ、「選べるギフト」の機能や、店舗予約とEC会員を統合するサービス「RESOMO(リソモ)」を導入するなどした。これにより、ECサイトでありながら、店舗のようなパーソナルなギフト体験が実現した。
画像提供:株式会社ecbeing(カンファレンス登壇資料より)
さらに、LINEミニアプリの活用、ECサイトと公式アプリとの連携、チャージマネーやギフトカードといった独自の決済方法の導入など、顧客との接点を多角的に強化。これにより、顧客はオンライン・オフラインを問わず、DEAN & DELUCAの世界観をシームレスに体験できるようになった。
これらの取り組みにより、ファン化の推進や、今まで利用するきっかけのなかった新規顧客へのアプローチも可能になったという。
事例2:リンベル「GIFT LIST」
その他の事例としては、カタログギフトで有名なリンベル株式会社のECサイト「GIFT LIST」だ。「ギフトでつながろう」をコンセプトに、ギフトを日常的にライフスタイルに取り入れてもらうためのサービスとして、「GIFT LIST」というサイトを構築したという。
「GIFT LIST」は、まるで音楽のプレイリストを作るように、贈る相手に合わせて自由に商品を選び、オリジナルのデジタルカタログギフトを作ることができる。作成したリストはURLで簡単に共有でき、住所を知らない相手にもギフトを贈ることが可能だ。
リストの公開・シェア機能や、他のユーザーのリストを編集する機能も備え、ユーザー間のコミュニケーションを促進する結果になった。なお、様々なリストをレコメンドする部分では、AIを活用したレコメンドツール「AiReco(アイレコ)」により、会員の属性やサイト上での行動をAIが読み取り、ユーザーに合った商品を提供している。いわゆるパーソナライズされたレコメンドであり、購買体験や回遊性の向上にも寄与しているという。
画像提供:株式会社ecbeing(カンファレンス登壇資料より)
2024年、もう一つのトレンドとしてのAI活用
斉藤氏は2024年のEC事業におけるトレンドとして、顧客ロイヤリティ向上の注力に加え、AIの実用化も顕著に見られるとした。そして2025年、AI活用の動きはさらに加速するという。特にパーソナライズ化の面での活用が有効であり、「自分にとって最適なものが、当たり前にサイト上に出てくる未来」が、すぐそこに迫っているとした。
ecbeingでもとくにAIレコメンドツール「AiReco」とCDP/CRMを連携し、顧客の行動データに基づいて一人ひとりに最適化された商品やコンテンツを提案している。なお、メール配信などのCRM施策もパーソナライズ化し、次世代のパーソナライズ実現に注力しているという。
そして斉藤氏は、AIの活用事例としてドイツの雑貨ブランドである「FEILER」の例を挙げた。いわゆるお礼メールにおいて、ユーザーのアクションによってレコメンドの内容が変わり、ユーザーそれぞれが異なるアクションをできるように、AIが自動的に設定を行うという。ECだけでなく、店舗来店のお礼メールなども配信しており、店舗再来店やEC購入に繋げるため、新商品紹介やイベント情報なども盛り込み、様々な工夫、仮説を立てて実施している。
AIを活用したパーソナライズ化でエンゲージメントを強固に
斉藤氏は最後に、「2024年から2025年にかけて、AIをより精度高く、様々なところで活用していきます」とし、今後もAIの活用がECサイト構築の鍵となることを示した。「ECは店舗情報、行動データ、購買情報など全ての情報が集まるデータのハブとなるため、パーソナライズが最も効果的に行える」と、ECサイトこそがAIの活用場所として最適であることも強調した。
2000年よりECサイト構築プラットフォームecbeingの製品開発、並びにEC事業者への導入・カスタマイズ開発に従事。プログラマー、SEを経てプロジェクトリーダーとして100社以上のECサイトの構築を実施。その後、開発部長に就任。現在、上席執行役員 営業統括部 統括部長として営業責任者を務める。