指名検索数が+200%! 急成長の動画広告市場で存在感増すAmazon Adsの「スポンサーTV広告」

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湯浅 英夫

生活者の動画視聴時間が大きく伸びている。総務省の調査によると、テレビ放送の視聴時間が若年層(10代・20代)では約10年間で30~40%減少する一方、オンデマンド型の動画配信サービスの利用率(全年代)は2019年度の17.4%から2022年度には52.1%へと急増(※1)。スマートフォンに加えて、ネット接続機能を備えたコネクテッドTVの普及がこうした動画視聴習慣の変化を後押ししている。

それに伴い動画広告の市場規模も、2024年に前年対比115.9%となる7249億円に成長(※2)しているが、注目されるのはコネクテッドTVに向けた動画広告だ。サイバーエージェントの調査によると、コネクテッドTV向け動画広告需要は2024年に前年対比137.8%となる1020億円に達し、2028年には動画広告市場全体の約20%を占めるようになる見込みだ(※2)

しかし動画広告への関心はあるものの、実際の導入・運用をどうすればいいのか頭を悩ます企業も多いだろう。ひと口に動画配信サービスといっても多様であり、広告の対象となるユーザーもその視聴スタイルもさまざまで、どこで・誰に・どうリーチすればいいのかを把握するのは難しい。広告配信の効果測定もノウハウがなければ困難だろう。特に、マーケティングファネルにおいて入り口となるブランド認知の効果の可視化は難しい。

Amazon Adsが2024年11月に日本でも提供を開始した「スポンサーTV広告」は、そうした悩みを抱える企業にぴったりの動画広告ソリューションと言える。Amazon Adsの「スポンサーTV広告」とは他と何が違うのか、そして出稿する企業のメリットは? 今回はアマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads, Head of Growth Sales JPの伊勢谷直美氏と、実際にこれを活用して「期待以上の成果」をあげていると語る株式会社コペックジャパンの水口崇氏に話を聞いた。

動画広告を手軽に始められる「スポンサーTV広告」

スポンサーTV広告はAmazonのストリーミングサービスに動画広告を大画面で表示するもので、スキップできない動画広告がテレビCMのように番組の前後や途中にランダムに表示される。日本での配信先は2025年6月末時点でTwitchのみだが、海外ではPrime VideoやFire TVへの配信も可能だ。

アマゾンジャパン合同会社の伊勢谷直美氏は、「スポンサーTV広告はAmazon Adsが展開しているスポンサー広告の1つで、これまでのスポンサープロダクト広告、スポンサーブランド広告、スポンサーディスプレイ広告に加えて選択できるようになった、新しい広告フォーマット。セルフサービス型で、Amazon Adsのコンソールに広告主がアクセスしてキャンペーンを作成し、運用してもらう形になる」と説明する。

特徴は、ブランド認知向上につながりやすいことだ。投入した動画広告は、Amazonの視聴履歴や購買履歴などのインサイトを活用した視聴者への細かなエンゲージメントにより、それを好みそうな視聴者に向けて配信される。新たな顧客層へのアプローチにつながるし、エンゲージメントによって広告効果が最大化される。

伊勢谷氏は、「その動画の視聴者がどのような人たちか、どんな興味関心を抱いているのか、どんな商品をよく閲覧しているのか、そうしたインサイトを活用し、対象になりそうな人たちに向けて動画広告を配信することができると語る。

アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads, Head of Growth Sales JP 伊勢谷直美氏

指名検索数が大幅増 ブランド認知拡大

始まって間もないスポンサーTV広告だが、すでに大きな成果をあげているのが、キーボードを中心にパソコンやスマートフォンの周辺機器やオーディオ製品などを販売しているコペックジャパン(ストア名「SUPER KOPEK」)だ。同社はキーボードブランド「Keychron」の国内総代理店も務めている。

コペックジャパンで取り扱っている「Keychron」シリーズのキーボードを紹介する動画広告を2025年5月からスポンサーTV広告を通じてTwitchで流したところ、指名検索数が前年同月対比で+200%と3倍に増加。動画は以前から作っていたものの流用で、長さも約10秒と短いが、効果は大きかった。

コペックジャパンの水口崇氏は「キーボードのブランド認知度拡大を目指して、相性がよいのではと考えて出稿したところ、開始前後の比較で、Amazonのスポンサープロダクト広告、スポンサーブランド広告、スポンサーディスプレイ広告のROAS(広告の費用対効果を測る指標)は60%改善した。大規模に広告投資したタイミングだったが、この結果はほぼスポンサーTV広告によるものと見ている。期待以上の効果だったと語る。

売上増につながったのはもちろん、ブランド認知の拡大、ブランドストアへの集客につながったと考えている。「個別の商品の動画広告を流したが、そこから指名検索などで遷移してブランドストアを見てもらえている。Amazonの7月のプライムデー開始に向けて(※3)ブランド全体の認知拡大に役立っていると思う」と水口氏。

株式会社コペックジャパン 水口崇氏

生活者が動画を視聴する時間は伸びる一方だ。特に若年層では、テレビ放送を見る時間が短くなる一方で、動画配信サービスの利用は伸びている。その中で大きな役割を果たしているのはコネクテッドTVの普及だ。

「そこ(コネクテッドTV)に対してしっかりエンゲージできる広告の接点が求められている。どんなビジネスサイズの企業であっても、手軽に、スピーディーに、そうした動画広告を配信できるのがスポンサーTV広告」と伊勢谷氏は語る。

スポンサーブランド動画広告など、Amazon Adsの他のスポンサー広告でも動画広告は配信できる。それらとスポンサーTV広告の違いは、テレビのような大きな画面で、広告を通じてそのブランドの世界観や製品の魅力を伝えてエンゲージできることだ。それは製品販売につながるのはもちろん、コペックジャパンの例のように、ブランド認知拡大にも大きな効果を発揮する。

「マーケティングファネルで言うところのアッパー、つまり認知獲得には、これまでなら初期投資費用や時間がかなりかかっていた。スポンサーTV広告は、そうした認知獲得に手軽に使ってもらえる広告プロダクト」と伊勢谷氏。

「Amazonプライムデー」で売上を伸ばすために、さまざまな施策に取り組んでいる販売事業者は多いだろう。しかし、消費者がその商品やブランドを認知していなければ何も始まらない。その認知を獲得し、拡大していくうえで、スポンサーTV広告は有力な手段となりそうだ。

スポンサーTV広告を活用した「Keychron Q1 Max」。デザインのクオリティや心地よい打鍵音も動画広告で伝わる(画像提供:株式会社コペックジャパン

※1:総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会 公共放送ワーキンググループ」第1回(令和4年9月21日) 資料1-4「時系列データ(生活者1万人アンケート)から読み解く日本人のメディア利用行動(株式会社野村総合研究所)」 14頁 、総務省情報通信政策研究所「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和5年6月)75頁
※2:株式会社サイバーエージェント「2024年国内動画広告の市場調査」
※3:2025年の「Amazon プライムデー」は2025年7月11日から7月14日までの4日間開催


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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