
EC売上拡大に必要な新常識!LTVを向上させるデータ・AI活用事例 【ecbeing セミナーレポート】
消費者の嗜好が多様化し、EC市場の競合も激化している中、「ファン化・LTV向上」の必要性を感じている事業者も多いと思われるが、ファン化もLTV向上も一朝一夕に実現できるものではない。そんな手間のかかりがちな取り組みにおいて、強力な助っ人になりうるのがAIだ。
そこで今回は、ECのミカタ主催のオンラインカンファレンスに登壇した株式会社ecbeing 営業統括部 部長代理 平本洋之氏のセミナーをレポート。平本氏は同社の提供するAIを活用して顧客ロイヤルティ・LTV向上を実現した3社のベストプラクティスを紹介。AI時代のファン化・LTV向上施策のヒントを示した。
本記事は2025年5月に開催したオンラインカンファレンス「EC年商10億円を突破するためのEC戦略カンファレンス」でのセミナー内容を基にしています
パーソナライズによるファン化・LTV向上施策が必須の時代に
セミナー冒頭で平本氏はECの潮流を紹介。ユーザー一人ひとりに合わせたパーソナライズが求められる中、AIやCDP、CRM、ソーシャルが注目される現在は、ECの「第四世代」だという。
画像提供:株式会社ecbeing(カンファレンス登壇資料より)
「サードパーティクッキー規制やコロナ禍を経てのEC競合激化、店舗とネットの融合などを背景に、顧客に満足してもらい、ファンになってもらうことが非常に重要になってきています。そのためにも、顧客一人ひとりにパーソナライズ化された、クオリティの高い発信や販促が求められるようになっているのです」
売上を拡大するために、ファン化・LTV最大化につながる取り組みをしなければならないことはわかっているが、なかなか手が付けられない、あるいはスピード感をもって取り組めていないことが課題になっているEC事業者が多いという。
AIを活用したファン化・LTV向上のベストプラクティス
そこで平本氏は、ecbeingのサービスを使って、AIを活用したファン化・LTV向上に取り組んでいる3つのベストプラクティスを紹介した。
ベストプラクティス【1】 早川書房
電子書籍販売に注力したブランディング強化
1945年創業の出版社、株式会社早川書房は、コーポレートサイトとECサイトと統合する形で、書籍と書籍に関連するグッズを販売する早川書房公式オンラインストアをリニューアル。特に電子書籍の販売を強化するため、サイト訪問客が、電子書籍の購入から閲覧までをワンストップで行うことのできるECサイトを構築した。サイト訪問客のニーズを意識した導線設計にコーポレートサイトの機能を融合した“早川書房の顔”としての公式オンラインストアになっている。そのリニューアルのポイントは下記の通りだ。
•コーポレートサイトとECサイトを統合し、顧客との接点を構築するプラットフォーム
•公式サイト上で電子書籍の購入から閲覧までを完結し、ワンストップの読書体験を実現
•回遊性・スムーズな流れを意識した導線設計(特集ページ、購入した書籍の続編がマイページの本棚に格納される機能など)
•トップページ、採用ページ、コンテスト募集ぺージ、グッズページ、会員募集ページと、多彩なコンテンツをページごとにデザインすることで世界観を表現
画像提供:株式会社ecbeing(カンファレンス登壇資料より。「早川書房オンラインストア」はこちら )
ベストプラクティス【2】 キーコーヒー
AI接客や動画・UGC活用を通じた顧客にとっての価値向上
コーヒーやコーヒー関連器具、雑貨等の製造販売を行うキーコーヒー株式会社は。ECサイトのリニューアルに伴い、ファン化の促進に注力。年間の購入金額に応じて会員ランクが決まり、クーポンの配布やシークレットセールへの招待など、ランクに応じた特典が受けられるロイヤリティプログラムも導入した。
キーコーヒーは下記の取り組みを通して、コーヒーを購入するだけではなく、コーヒーに関する学びや発見を楽しむ機会をECサイトで実現している。顧客の体験や価値を第一に考え、結果的に購買を誘導するサイト設計に多くのヒントがある。
•EC会員と同社が開催するコーヒーセミナー会員のデータを一元化。共通ヘッダーにすることで、相互送客が可能になっただけでなく、セミナー付き商品の販売など今までなかった発想も誕生
•ChatGPTを組み込んだAIチャットボットをサイト内接客に活用し、セミナーの申込み、登録情報の変更、コーヒーに関する質問などに対応(AIチャットボット導入により、コーヒーセミナー関連の問い合わせが昨対比で35%減少。質問と回答内容を分析することで、サイト上に不足しているコンテンツの拡充など、サイト改善にも役立てている)
•UGC活用(Instagram投稿や商品レビューの掲載を通して、リアルなお客さまの声を伝えることで、購買を後押し)
•動画コンテンツの活用(ユーザーやコーヒー教室講師が作成した動画から、コーヒーに関する学びや新たなコーヒーとの出会いを促進)
画像提供:株式会社ecbeing(カンファレンス登壇資料より。「キーコーヒー公式オンラインストア」はこちら
これらのベストプラクティスは、消費者がただ買うだけでなく「楽しみながら新しい発見や学びがあるECサイトの構築」」が土台であり、そうして得たユーザーの属性や行動に基づく「パーソナライズされたレコメンド」がポイントになっている。AIを活用した拡張機能の活用により、一昔前なら膨大な手間がかかった取り組みが、比較的容易にできる時代になったことを改めて認識させられるセッションであった。
一方、施策・ツールの選択肢やECサイトでできることの幅が広がっているからこそ、どれを選んでいいかわからないという状況にも陥りがちだ。だからこそ、新しいテクノロジーを活用する際は、顧客と自社の強みを再度念入りに観察し、顧客にどのような体験を提供したいのかを吟味することが重要。企業・ブランドとしてのブレないスタンスがあればこそ、最適なツールや施策を選択することが可能になるのではないだろうか。
2010年に開発としてecbiengに入社、15年間にわたりBtoC、BtoBのECサイトの新規構築・リニューアルに携わる。プログラマー、SEとして経験を積んだ後、PL、PMとしてプロジェクトを牽引し、開発部長に就任。現在は営業部として、15年の開発部での経験で得た知見をもとに、BtoBのECを通し法人間取引に課題を抱える企業のDX化の推進に務める。