【eBayセラー成功事例】信頼を積み重ね、リピート率50% eBayセラー歴13年、今も最高のチームと一歩ずつ前へ
今年の3月に行われた、eBayにおいて優秀な成績を収めたセラーを表彰する「eBay Japan Awards 2024」で「カテゴリーグロースアワード(アニメグッズ カテゴリー)」を受賞した株式会社Ra・Muは、2021年以来の2度目の受賞。代表取締役社長の小河光徹司氏がeBayでのビジネスを始めて13年、同社はアニメフィギュアの販売を中心に売上を拡大し続けている。
「スタッフに能力を最大限発揮してもらえる環境を作ることが僕の仕事――」。柔らかな口調で一緒に働くスタッフをたたえる小河氏は、なぜeBayを始め、どのように売上を作り続けてきたのだろうか。今回の受賞をきっかけに、さらにストアの運営体制を強化したという小河氏に話を伺った。
「英語を使って人の力になりたい」という思いからeBayを開始
──まずは、株式会社Ra・Muの事業内容についてお聞かせください。
最初はeBayで海外に販売する輸出専門でしたが、コロナ禍をきっかけに輸入も始め、現在は輸出と輸入の二本柱で事業を展開しています。eBayで扱っているのは『ドラゴンボール』や『ONE PIECE(ワンピース)』といったアニメ関係の商品が多く、その中でもフィギュアが大部分を占めています。販売先は6割がアメリカ、3割がヨーロッパ、1割がメキシコやカナダなどです。
Ra・Muが運営するeBayストア「Tsumujikaze Store」
──eBayでビジネスを始めて13年目と伺いました。何をきっかけにeBayを始められたのでしょう。
実は僕、1年ほどバックパッカーで東南アジアを回ったり、オセアニアに行ったりしていたんです。その時に片言の英語でコミュニケーションをとっていて「英語を使って人の力になれる」ということが、純粋に楽しかったんです。それがeBayを始めた一番の理由ですね。
eBayのアカウントを作ったのは2012年。始めた頃は売上や利益は正直どうでもよくて、それよりも海外の人と英語でやりとりするのが楽しくて、ワクワクしながら売っていました。
──eBayを始めた原点はバックパッカー経験にあるのですね。
その前にも半年ほどオーストラリアに語学留学した経験があります。そのうちの3カ月ほどは現地で遊んでいたのですが……。
会社の売上よりも従業員の働きやすさを優先
──社名である「Ra・Mu」の由来をお聞かせください。
バックパッカーを終えて日本に帰国したとき、以前アルバイトをしたことがあったカラオケ店の運営会社から「店長として働かないか」と誘ってもらったんです。それが社会人としての最初の就職でした。「Ra・Mu」という社名は、その時のカラオケ店の名前なんです。
──それほど、思い入れのあるお店だったのですね。
その時に一緒に働いていたチームは、僕にとって本当に最高のチームでした。メンバーはアルバイトが中心だったのですが、全員が売上や利益よりも「お客様の満足度をいかに上げるか」という一点に向かって一生懸命に仕事をしていました。その結果、一室当たりの売上で北九州エリアNo.1のお店になることができたんです。また同じような最高のチームを作りたいという思いを込めて、「Ra・Mu」という名前にしました。
カラオケ店の店長を務めていた頃の小河氏。かつての仲間たちと
──今年(2025年)3月のアワード後には従業員を増やしたそうですね。
アワードを受賞する前は15人体制だったのですが、今は20人体制で運営しています。eBayを始めて13年経つのですが、他の受賞者さんの話を聞くと、まだeBayを始めて2〜3年のセラーさんもいました。交流を通じて、後からeBayに参入したセラーの方のほうが新しいことに挑戦していることを知りました。始めたばかりなのにどんどん先に進んでいる姿は、最近あまり“変化”せずにいた自分にとって、とても大きな刺激になったんです。
「これはもっと頑張らないと抜かれる」「自分たちももっとできる」という感情が湧き起こり、思い切って5人の従業員を採用しました。それまでは1日に300〜400点ほどの出品数だったところを、今は500品ほどにまで増やせています。
──かつてのカラオケ店のように、最高のチームにするために意識していることをお聞かせください。
それがですね、特に意識していることがないんです……。普通に運営しています。普通に。
──では、従業員の方が働きやすいように意識していることは何でしょう。
これはものすごく意識していることがあります。Ra・Muで働く人のほとんどは主婦の方です。出産などで一度キャリアを離れたけれど、ものすごく優秀な方ばかりで、その能力を最大限に発揮してもらえる環境を作ることが僕の仕事だと思っています。
例えばRa・Muでは勤務時間を原則16時までにしています。しかし、実際は半数くらいの人が14時頃に帰りますね。そうすれば、家に帰って夕飯の支度をする余裕ができます。お子さんの急な発熱や学校行事、家族旅行などでの休みも自由に取れるようにしています。eBayは店番が必要ないので、柔軟に働いてもらえるのは大きな魅力です。
もちろん、有給休暇の消化率も100%です。制度を整えてからは定期的にみんなリフレッシュして、前向きに仕事に取り組んでくれています。僕が手伝おうとすると怒られるくらいに(笑)
──従業員の方の生活を第一に考えているのですね。
仕事のために働いている人は一人もいないと思っています。みんな、自分の家族や家庭のために働いています。なので、家族や家庭を最優先にして幸せな人生を送ってもらい、そのうえで会社の利益も出ればいいなという考えです。
Ra・Muは兵庫県姫路市を拠点に、国内外で事業を展開している
顧客目線の販売と梱包で1カ月のリピート率は約50%
──eBayで「固定価格販売」ではなく「オークション形式」をとられている理由をお聞かせください。
以前は、比較的低価格なものはオークション形式で販売し、高価なものは安い値段で落札されるのが怖かったので固定価格で売っていました。でも、コロナ禍を経て作業効率を考えた時に、オークション形式に一本化したほうが良いと判断したんです。オークション形式にして少し安くなったとしても、お客様には喜んでもらえます。その喜びが次の購入につながってリピーターさんになってくれる。長い目で見ればプラスだと考えています。
──実際にリピート購入者がとても多いそうですね。
1カ月間のリピーター率は約50%です。中央値が6%ほどと聞いているので、リピーターが多い店になったと言えます。最近では購入してくれたバイヤーさんに毎週ニュースレターを送り始めました。その結果、数カ月でバイヤーさんの数が126%になったので、さっそく効果が表れています。
Ra・Mu がバイヤーに送っているニュースレター
──他にもバイヤーの満足度を高めるために取り組んでいる施策はありますか。
僕たちは未開封のフィギュアでも、開封して“箱なし”で販売しています。40個、50個とまとめて購入いただく場合に“箱あり”では送料が膨大になりますが、“箱なし”にすることで送料を半額以下に抑えられます。
もちろん、綺麗な箱に入った状態の商品を求めるバイヤーさんが大多数だと思います。しかし「箱は要らないから、その分安く買いたい」「本当はシリーズでそろえたいけれど、高くて1個しか買えない」という方もいるでしょう。そういう方に喜んでもらえたらという思いから“箱なし”で販売しています。箱に入った状態で買いたい人は、箱ごと販売しているセラーさんがたくさんいらっしゃるので、そこで買っていただければいいかなと(笑)
──バイヤーからはどのような評価をもらうことが多いのでしょうか。
フィードバックで一番多いのが「梱包が素晴らしかった」という声です。フィギュアはパーツが細かく壊れやすいので、昔から梱包には気を使っていました。パーツごとに緩衝材で丁寧にくるんだり、海外発送に耐えられるよう国内配送よりも硬い外箱を用意したりしています。
それでも壊れてしまうケースはゼロではないのですが、こちらの気持ちがお客様に伝わって「これだけ丁寧に梱包してくれていたなら、輸送中に壊れても仕方ないね」とご理解いただけることさえあります。誠実な対応を積み重ねることが信頼関係につながり、リピートしていただける一番の理由なのかなと感じています。
買い手の立場で考え、あえて“箱なし”にして丁寧な梱包を施したうえで出荷しているという
「変化の波はビジネスが生まれるチャンス」として前向きに捉える
──これまでの“eBay人生”で苦労した経験をお聞かせください。
ありがたいことに、これまで危機に面したことはなく、淡々と続けることができています。会社を経営していると「あの時は倒産しそうになった」という武勇伝をよく聞きますが、本当に何もありません。人と話す時のネタとして武勇伝はほしいんですけどね(笑)
コロナ禍で2カ月ほどストアを完全に閉めた時も、妻と一緒に会社で焚き火の動画などを見ていましたが、どこかで「絶対に復活できる」という確信がありました。結果、この期間があったからこそ国内向けに輸入販売事業を始めることができ、会社が成長する良い機会になりました。
──常に前向きでいらっしゃる姿勢が伝わります。
変化があるとうれしいんです。何もない平坦な道だと、ビジネスで大きなチャンスは生まれません。良くなったり悪くなったりという変化の波があれば、そこには工夫の余地が生まれます。例えば、今回のトランプ関税のような大きな変化があると、いやらしい話ですが「うまくやったらもうかるんじゃないか」とワクワクします。
──eBayでの13年間を通じて、ご自身に変化はありましたか。
少し優しくなったことでしょうか。人にきつく当たったり、怒ったりすることが良い結果になると思えないんです。例えば、誰かが100万円の損失が出るような大きな失敗をした時ほど、厳しく叱るよりも笑って許してあげたほうが、その後の関係も良くなるし、チームに好影響を与えると気づきました。ただ、学生時代から付き合っている妻は「何も変わってないね」と言います(前職までの働く様子を見ていないから…)。
──最後に、今後の展望をお聞かせください。
3年後、5年後……といった中長期的な計画はまったくありません。なんとなく「良くなっていたらいいなあ」くらいで(笑)。今やりたいことは明確に複数あります。どれもeBayの売上をもっと上げることにつながることです。そのために従業員も増やしましたし、出品数も増やしています。これからも、目の前のお客様と従業員を大切にしながら、一歩ずつ進んでいきたいです。