表示速度を約1秒改善してCVR4%向上を実現! 「Speed Kit」が持つ世界で唯一の技術とは
アパレルのセレクトショップを展開する株式会社ユナイテッドアローズは、サイトが表示されるまでの速度改善を図り、売上向上を実現した。その秘訣は、株式会社ギャプライズが提供するサイト高速化ツール「Speed Kit」が持つ、世界唯一の技術にある。
2025年7月29日にECのミカタ(MIKATA株式会社)主催の「長期的に選ばれるECのつくり方 ~CRM・CX・ファン化戦略大公開~」では、株式会社ギャプライズ CXO事業部 セールスグループのダニイル・ヴァーラモフ氏が、ユナイテッドアローズが導入したサイト表示の高速化ツール「Speed Kit(スピードキット)」の全貌を解説。本記事では、サイト表示速度の改善がもたらす効果についてレポートする。
サイト表示速度の改善は、売上向上に直結する
デジタルマーケティングは複雑化しており、EC事業者は広告やSNS、CRMなど、無数の施策にリソースを割き、売上の向上に奮闘している。しかし、数多くある施策の中でも売上に直結するのが「サイトの表示速度」だ。
「一番シンプルに簡単に売上を上げる方法は『スピード』です。売上とサイト表示速度には明らかな相関関係があるため、サイトの表示速度を改善すれば、必然的に売上も増加します」(以下、発言はダニイル氏)
その相関関係は、データによって明確に裏付けられている。サイトの読み込み時間が長くなるほど、ユーザーがコンテンツを閲覧する前に離脱してしまう「直帰率」は上昇する。
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
一方で、売上に直結する「コンバージョン率」は、サイトの読み込み時間が短縮されるほど向上する傾向が顕著に見られるのだ。
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
つまり、サイトの表示速度改善は、顧客体験の向上だけでなく、売上に直接的な影響を与える重要な指標だと言える。
「Speed Kit」がサイト表示速度を改善する4つの技術
売上に直結するサイト表示速度の改善を実現するのが「Speed Kit」だ。「Speed Kit」の導入に必要な作業は、指定されたタグをサイトに1行追加するだけで完了し、専門的な開発やサーバーの改修が一切不要となる。さらに、正式導入前に効果を検証できるABテスト型のPOC(※1)が用意されている。
※1:Proof of Concept。新しい技術や理論、原理、⼿法、アイディア、などに対して、実現可能か、⽬的の効果や効能が得られるか、などを確認するために実験的に⾏う検証⼯程のこと
「本契約の前にABテスト型のPOCを実施できます。ランダムに『Speed Kit』を体験していないユーザーと体験しているユーザーを50%ずつ振り分けて実装します。その後、データで得られた表示速度と売上の相関関係をレポートとしてお渡しします。本契約前に『本当に導入が必要かどうか』を判断いただけるような環境も整えました」
では、なぜ「Speed Kit」はこれほどのサイト高速化が可能なのか。その背景には、従来の高速化技術の常識を覆すような以下4つの技術が存在する。
1.ブラウザ側のデータのキャッシュ
これは、ユーザーがサイトに訪れた際、データを保存しておくことで次の訪問の際に素早く表示する仕組みだ。静的コンテンツを保存する基本的なキャッシュ機能や、画像の自動最適化はもちろんのこと、「Speed Kit」はサイト遅延の原因となりがちなサードパーティツールの高速化も実現する。多くの対策が「ツールを外すか、ブロックするか」という選択肢しかない中、「Speed Kit」はこれらのサードパーティツールをキャッシュ化し、表示速度への影響を最小限に抑えることができる。
2.ダイナミックキャッシング
「Speed Kit」の核心といえるダイナミックキャッシングは、誰が見ても同じ部分の「匿名ページ」と、ユーザーごとに内容が変わる「パーソナライズ部分」を瞬時に分離して処理する世界唯一の技術である。
「従来は、ECサイトでほんのわずかなパーソナライズされたコンテンツが含まれていると、ページのキャッシュができませんでした。商品詳細ページで値段やクーポン、アカウントIDなどをキャッシュした場合、次に訪れた人に他のお客様の会員IDを表示してしまうことになります」
ダイナミックキャッシングを実現できたのは、「Speed Kit」が匿名ページとパーソナライズされた箇所の差分を認識するためだという。
「ページを表示する際、誰が接続しても出てくる匿名ページを『Speed Kit』のネットワークから素早く表示し、パーソナライズされているコンテンツだけをオリジナルサーバーまで持ってきて表示する技術が動いています。そのため、『Speed Kit』はパーソナライズされたページでキャッシュの範囲を一気に広げることができました」
3.機械学習を用いた予測型プリロード
AIがサイト内のユーザー行動を分析して、次にクリックする可能性が高いリンク先を予測(先読み)する。そのページのデータをあらかじめキャッシュしておくことで表示速度を高速化する。
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
4.予測型プリレンダリング
「予測型プリロード」の一歩先を行くのが、「予測型プリレンダリング」だ。プリロードは、AIが予測して次に表示するページを手元まで持ってくるのに対し、プリレンダリングでは実際に表示までする技術である。
「プリレンダリングでは、ユーザーが見るであろうページをあらかじめ読み込み、非表示タブで表示する機能です。複数のサイトを開いている際、タブの切り替えによって一瞬で表示が切り替わるのと同様に、プリレンダリングでも一瞬で表示が切り替わります」
サイト表示速度の改善がCVR4%向上を実現
「Speed Kit」は全世界1万以上のサイトで稼働しており、多くの成果を生み出しています。例えば、BMWでは118か国に展開するサイトのLCP(Largest Contentful Paint)が全体で1.5倍高速化されました。また、ツヴィリングではLCPが1.5倍高速化したことにより、収益が5%増加するという成果も出ています。
数ある成功事例の中から、この日の講演では日本を代表するセレクトショップの株式会社ユナイテッドアローズ(以下、ユナイテッドアローズ)の改善事例が紹介された。
Googleが提唱するウェブサイトの健全性を示す指標の1つに、「LCP(Largest Contentful Paint ※注2)」がある。これはページの主要コンテンツが表示されるまでの時間を示すもので、2.5秒未満が「良好」とされる。
「LCPが2.5秒を下回ると、売上向上だけでなく、広告のクリック単価低下やSEOの順位上昇といった効果も期待できます」
※注2 ユーザーがウェブページにアクセスしてから、視覚的に最も大きなコンテンツが表示されるまでの時間を測定した指標。
「Speed Kit」導入前のユナイテッドアローズのECサイトは、すでに1.447秒という抜群の高速な状態だった。
「ユナイテッドアローズ様は、ECサイトでパーソナライズされた情報をキャッシュできないため、サイトの表示速度に課題を感じていらっしゃいました。画像最適化や配信の効率化といった施策を講じたものの、これ以上の高速化は難しいということで当社にご相談をいただきました」
現状をさらに超える速さを求め、ユナイテッドアローズは「Speed Kit」の導入を決定。
結果は劇的だった。LCPは1.447秒から0.513秒へと約1秒(65%)も短縮。そして、すでに最適化されていたはずのサイトで、CVR(コンバージョン率)がさらに4%も向上したのである。
とはいえ、もとから良好なスコアを出していたサイトで「約1秒の短縮にどれほどの効果があるのか」という疑問が生じるかもしれない。
「日本を代表するアパレル企業の事業規模において、このパフォーマンス向上は収益に非常に大きなインパクトをもたらします。このように、どんなウェブサイトにはまだ『伸びしろ』があり、表示速度の高速化は確実にパフォーマンス向上の効果として現れるのです」
表示速度「1秒未満」になるまでの改善が売上増をもたらす
サイトの表示速度の改善は「一時的な施策」として継続されないことが多い。
「サイトの表示速度を改善しても、時間が経つとまた遅くなってしまいます。となれば、選択肢は2つです。優秀なエンジニアを何人も雇って膨大な費用をかけて毎日サイトの改善を続けるか、ツールを入れて表示速度という課題を一任するか。後者を選択して『Speed Kit』を導入したお客様からは『スピードは正義だ』という声をいただいています」
講演の最後に、ダニイル氏は改めて表示速度の大切さを語りかけた。
「すべてのサイトが表示速度改善の対象です。サイトの表示速度が1 秒未満になるまで、売上は増加します」
サイトの表示速度は、もはや技術的な指標の1つではない。それは顧客体験の質そのものであり、売上を左右する重要な指標だ。自社で多大なコストをかけて改善を続けるのか、テクノロジーに任せてビジネスの成長に集中するのか、改めて考えてみるよい機会だろう。