街の洋菓子店はいかにして楽天でヒット商品を生んだのか ~スイーツECのプロと歩む成長ストーリー

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ECのミカタ編集部

葡萄園は“白壁の町”として知られる岡山県倉敷市で30年以上にわたって愛され続ける洋菓子店

ECのミカタでは、EC事業者のためのビジネスマッチングサービスを紹介料0円で提供しています。専門のコンシェルジュがお悩みをヒアリングし、500社以上のEC支援企業から最適と思われるパートナーをご紹介します。

今回は当サービスをご利用いただいた、洋菓子の製造・販売を手掛ける有限会社葡萄園の担当者と、同社のECモール(楽天市場)運営を支援している株式会社GOATの吉永氏に、ご利用のきっかけやパートナー選びのポイントを伺いました。

実店舗との兼務でEC担当は一人。集客のための施策を一から学ぶ余裕がなかった

──まずは、両社の事業概要を教えてください。

有限会社葡萄園 担当者(以下、葡萄園) 私の父が1990年に葡萄園を創業し、以来30年以上にわたって、(岡山県)倉敷で地域の皆さまに愛される街のケーキ屋さんとして営業してきました。「もっとお客様に自社の商品を知っていただきたい」という思いがあり、2024年の秋頃から実店舗以外での販売拡大を検討する中で、感度の高い地域のスーパーやデパートに卸すなど販路を拡大する活動も始め、そのひとつとしてECも検討するようになりました。

葡萄園の商品は、一つひとつ店内の厨房で手作りされている(画像は葡萄園公式サイトより)

株式会社GOAT 吉永氏(以下、GOAT 吉永) GOATは2023年創業のECコンサル会社で、食品関係、特にスイーツを得意としています。弊社が大切にしているのは「親切」という部分です。

というのも、ECコンサルの中には、店舗様との情報格差を利用して、誠実とは言えない手法で利益をあげる会社も存在します。例えば、夢物語のようなシミュレーションを提示したり、店舗様に利益が残らない形の成果報酬を提案したりといったように。「親切に徹することで、騙されてしまう店舗をゼロにしたい」という想いで立ち上げたのがGOATです。

GOAT公式サイトでは、「店舗側への情報提供を積極的に行いたい」という思いから、実践的な資料を毎月追加している(画像は GOAT公式サイトより)

──葡萄園様はどのような課題を感じてモールへの出店を決められたのでしょうか。

葡萄園 最初はShopifyを使って自社ECを開設しました。しかし、ノウハウや知識のない中で、ECを立ち上げることがゴールになってしまい、販売につなげる方法がわかりませんでした。スイーツは競合も多く、いきなり自社ECサイトで集客するのは厳しいと感じ、モールなら集客自体はある程度モールがやってくれるのではないかと方向転換して、楽天市場に出店することにしました。

ただ小さなお店ですので、EC担当は実質私一人。それも日々の実店舗の業務の傍ら取り組んでいましたので、出品作業だけで精一杯で、売上アップのための施策を学ぶ余裕もありませんでした。そのため売上は「ゼロではない」という程度でした。売上につなげる方法についても調べましたが、知れば知るほど専門的なノウハウやテクニックが必要だとわかり、実店舗を運営しながら一から自分で勉強して実行するのは現実的ではないと痛感したんです。

──ECのミカタでマッチングの相談をされたきっかけは?

葡萄園 正直、EC支援のコンサルについてはまったく予備知識がなかったので、まずはお話を聞いてみないといけないと思いました。そこでネットで検索すると、ECのミカタのビジネスマッチングサービスが出てきて。最初は紹介料が無料ということに疑問を抱き、オペレーターの方に直接「御社はどこで利益を取るんですか?」とお聞きしました。その時の回答が納得できるものだったので、安心してお願いしたわけです。

――ECのミカタから6社ほどを紹介し、比較検討されたとのことですが、どのような基準でGOAT様を選ばれたのでしょうか。

葡萄園 オペレーターの方が単に6社を羅列するだけでなく、それぞれの特徴を説明してくれて、その時点で「御社にはGOAT様が向いているかもしれません」とアドバイスをいただきました。ただ、それをうのみにするのではなく、自分でも、候補にあがった会社のホームページなどを調べ、過去の事例やどういったジャンルに強みを持っているか、会社の規模感などを見て選びました。うちは街の小さな洋菓子店ですので、コンサルでも大きすぎる企業だと対応できる費用感や人的リソースとのギャップがあると思いましたので、小規模な店にも対応していただけそうなところかどうかをポイントにして選びました。

“入口商品”がヒットし楽天で高評価を獲得!

――GOAT様では、最初にどのような提案をされたでしょう?

GOAT 吉永 最初に葡萄園様からお送りいただいたサンプル商品がすごくおいしくて、その時点で「この商品はECでも売れるはず」と確信しました。ECで売れていないのは商品の魅力がお客様に伝わっていないからだと感じ、画像の差し替えを含めて楽天市場のショップのLPの改修から着手しました。商品名で検索する利用者が多いAmazonのようなモールと違い、楽天市場の場合は「ウインドウショッピング」をしている方に訴求するイメージで、LPのビジュアルが非常に大きな意味を持つからです。

葡萄園の楽天市場ショップ

GOAT 吉永 また葡萄園様のショップではパッと見てギフト対応しているかどうかがわかりにくいと感じました。そこでギフト対応が可能であることが一目でわかるように、包装した状態や選べる熨斗の画像を追加しました。

さらに楽天のRPP(検索連動型広告)の施策、「お買い物マラソン」との連動施策、メルマガの導線バナーなども、あわせてご提案させていただきました。他社ですと、そうした施策の提案から実装までに1カ月以上かかることもあるのですが、弊社はスピード感を重視していますので、2~3週間で実装できました。ECでは中心となる戦略を軸に置きつつ、このようなアクションレベルの施策を優先度の高いものから進めていきます。

――葡萄園様が売上の変化を感じたのは、どの時点でしょうか。

葡萄園 LPの改修を提案いただいたのと同じタイミングくらいで、いわゆる楽天における“入口商品”を作ってはどうかというご提案をいただきました。それでさっそく売れ筋の既存商品のいくつかを組み合わせて「お試しセット」を作って発売したところ、めちゃくちゃ売れてびっくりしました。これをきっかけにして、他の商品も売れるようになりました。

さらに“入口商品”が好調に売れる中で、買っていただいたお客様にレビューをお願いする施策もご提案いただきました。それを実施することで、レビューがたくさん集まり、その相乗効果で販売数が伸びるというという好サイクルにつながりました。

“入口商品”としてGOATが提案した「葡萄園お試しセット」が人気の火付け役に(写真は「6個入」

お試しセットの中にも入れている「くまのフィナンシェ」は、もともと実店舗でも販売している商品ですが、GOAT様からのご提案で、パッケージと包装を変えました。パッケージを変えただけでEC用に展開でき、今ではEC向け商品の中でも一番というくらいの売れ筋商品になっていますので、あの時のご提案には本当に感謝しています。

ギフトとしても人気の「くまのフィナンシェ」。個包装の袋に顔がプリントされているのもかわいい(写真は「10個入り」

ECの売上増加に伴い、オフラインでの売上も増加

――ECの売上がアップしたことで、実店舗への影響はありましたか。

葡萄園 最初に申し上げた通り、スーパーや百貨店にも販路を広げたいと思いつつ苦戦していたのですが、ネットでの売上が上がるにつれて、そちらの売上も伸びました。いくつか理由はありますが、大きいのは卸先の販売担当者様とお話させていただく時に、「楽天の口コミで、これだけ高評価をいただいています」というお話ができることですね。正直、楽天市場の売上アップだけではない、計り知れない波及効果があったと感じています。

パートナー選定で一番大切なのは、相手の会社をきちんと理解しようとする姿勢があるかどうか

――GOAT様の支援に対する印象をお聞かせください。

葡萄園 うちは小さな店ですが、30年以上地元の皆さまに愛され続けているお店ですので、ECを始めた時は「一回食べてさえいただければ、ある程度いけるのでは」という思いがあったんです。ただ最初の「ゼロを1にする」、食べていただくきっかけを作るということが、独力ではできていませんでした。それがGOAT様のご提案で実現でき、月並みですが「プロはすごい」と思いました

実店舗をメインに、事業を維持・拡大する一手段としてECに取り組んでいるので、EC専用の商品を開発・増産しようとしても、今のお店の体力では厳しいのが正直なところです。GOAT様には「対応できることと、できないこと」をはっきりとお伝えして、無理なくできる範囲の提案をしていただけているのも、非常にありがたいと感じています。作業量的にも、以前はパソコンの設定から管理、商品の手配、発送作業まで全部一人で行っていて大変だったのですが、GOAT様に運営を委託してからは、ほぼ配送作業のみで済んでいることも助かっています。

――ECの売上を上げるためのパートナー選定にあたって、アドバイスがありましたら教えてください。

葡萄園 やはり、相手の会社をきちんと理解しようとする姿勢があるかどうかということが一番大事だと思います。会社によって委託にかけられる費用も、ECのためにさける人的リソースも違いますので。正直に申し上げて、短期的に売上をあげたいならば、お金を出して広告さえたくさん打てば実現できます。GOAT様と最初にお話させていただいて、そういうやり方ではないし、こちらが望んでいる方向というのを心から理解しようとしてくださっていることを強く感じました。

GOAT 吉永 葡萄園様は最初の時点で、依頼したい範囲を整理し明確にしっかり伝えていただけたので、弊社としてもご提案がしやすかったです。先にお話をさせていただいたように、お客様の気持ち・立場に寄り添うということが弊社の一番大事にしているところです。ご相談いただく段階でまだ把握しきれていないご要望を引き出すのも、弊社の重要な仕事だと考えています。

――葡萄園様が今後、モールで挑戦していきたいことはありますか。

葡萄園 弊社としては正直、ECだけで売上を倍増させたいとまでは考えていません。製造のキャパシティの中で対応できる、ちょうどいい売上を長く維持し、実店舗もECも堅実に成長させていければと思っています。ただし、改善もせず何の施策も打たないままでは、どうしても売上は落ちていくだけなので、常に改善や施策の見直しは必要だと考えています。今後もGOAT様にいろいろなご相談をさせていただきながら、前向きに取り組んでいきたいと思います。

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