自由が丘の人気雑貨屋、ファンを育てる接客型メルマガで自社EC売上20%を実現
「メールはオワコン」。そう考えて配信をやめるEC事業者は少なくない。東京・自由が丘のショップ&EC「カタカナ」も、かつては成果が見えず、LINEに切り替えても効果を実感できない時期があった。だが今、同店の自社EC売上の20%を生んでいるのは「メルマガ」。“接客としてのメール”をアクションリンクで実現し、新たな売上の柱に育てることに成功したのだ。全国を旅して出会った工芸品や雑貨を、作り手の想いごと届けてきたカタカナ。ファンに支えられてきたカタカナが、なぜ再びメールに可能性を見出したのか。株式会社タンケン社 脇田郁氏と、株式会社ファブリカコミュニケーションズ 伊藤日向子氏にその舞台裏を聞いた。
ストーリーがファンを呼ぶ、カタカナの世界観
――まず、カタカナのコンセプトを教えてください。
株式会社タンケン社 脇田郁氏(以下、脇田) 「日本のカッコイイを集めたお土産屋さん」がコンセプトです。代表の河野が全国を巡り、そこで出会ったモノを、背景ごとお客様に届けています。単にモノを仕入れて売るのではなく、現地に取材に行って、作り手の想いやストーリーも含めて紹介するのがカタカナ流です。取扱商品は洋服から絵本、たわしまで幅広く、数百円の小物から十万円を超える工芸品まで価格帯もさまざまです。実店舗は小学生からシニアまで、幅広い年代層の常連のお客様に支えられています。
工芸品や洋服から絵本、たわしまで幅広い商品を取り扱う
――そうしたお客様に共通する価値観はありますか?
脇田 「ものを大事にする」方が多いと思います。作り手や背景に興味を持ってくださって、「この商品はこんな人が作っていて……」という話をとても楽しそうに聞いてくださるんです。購入された商品を描いた絵はがきを送ってくださった方もいて、胸が熱くなりましたね。
成果が見えず止まったメルマガ、LINEでも効果は実感できず
――ECは2011年に楽天市場からスタートし、自社ECにも取り組みを広げてきたそうですね。ファンに支えられている一方で、CRMには課題もあったそうですね。
脇田 はい。以前はカートシステムのメルマガ機能を使っていましたが、どの商品がどれだけ売れたのか、成果が見えず分析負荷も重い状況でした。LINE公式アカウントでの配信も試しましたが、お客様の反応が見えにくく「このままでいいのかな」という不安がありましたね。段階的にいくつかのサービスを試しましたが、どれも成果が見えず手応えを得られませんでした。
株式会社ファブリカコミュニケーションズ 伊藤日向子氏(以下、伊藤) 「メールはオワコン」という思い込みや、リソース不足からメルマガ配信が止まってしまうケースはよくあります。カタカナさんのように世界観がしっかりしたブランドは、メール配信と相性が良い。サイトもコラムも作り込みが素晴らしいのに、メルマガ配信が止まっているのは「もったいない!」と感じました。
やりたかったCRMが形に メールが売上の2割を生む柱に成長
――アクションリンク導入の決め手は何だったのでしょうか。
脇田 既存の1万人のメルマガ会員に効果的にアプローチしたいと考えていました。アクションリンクはカゴ落ちメールやリターゲティングなど成果の出やすい機能が揃っています。さらに特定の商品を購入したお客様限定のレコメンドメール配信など、私たちがやりたかったCRM施策を実現できる点が決め手になりました。
伊藤 アクションリンクには、企業様ごとにセットアップした状態でお渡しする自動配信機能 “鉄板シナリオ” があるので、少人数体制でも効率的な配信が可能です。「リソースが少ない中、コンスタントに配信できるか不安」というカタカナさんにはぴったりでした。
――アクションリンク導入後の成果をお聞かせください。
脇田 カートのメルマガ機能から配信していた時は数字を測定できていませんでしたが、導入前に比べると、メルマガ経由の売上が倍以上に増えたのではないでしょうか。アナリティクス上でも、導入前は存在感が薄かったメールが、アクションリンク導入後は流入元4位に躍進しました。今では自社EC売上の20%をメルマガが占めており、新たな売上の柱になっています。
アクションリンク導入後は「メルマガ経由の売上が倍以上に増えたのでは」と語る脇田氏
――特に効果的だった施策は?
脇田 自動配信のカゴ落ちメールです。開封率が60~70%程度、コンバージョン率は約2.8%と、売上に直結しています。
伊藤 「売上アップのための施策としてのメルマガは古い」と思われがちですが、実際にはまだまだ有効なチャネルです 。カタカナさんのように世界観やファンベースが強いブランドは特に相性がいいので、高い成果につながっています。今後取り組みを継続していけば、メルマガ経由の売上比率は25%程度まで上がるのではないでしょうか。好きなショップからのメールは多くのお客様にとって“欲しいお知らせ” なのです。
読むことは接客体験――ファンを育てるメルマガの秘訣
――メルマガはお客様との関係強化にもつながっていますか?
脇田 はい。SNSやブログは能動的に情報を探す方にしか届きませんが、メルマガは確実に一人ひとりに届きます。その結果、認知やファン化のきっかけになっています。アクションリンクでメルマガ配信を始めてみて、写真を多用したリッチなコンテンツはLINEよりもカタカナの世界観に合っていると感じました。お客様は40~60代女性が多いので、その点においてもメルマガとの相性が良いです。
――読まれるメルマガ、ファンとの関係性を深めるメルマガ作りの秘訣は?
脇田 店舗での接客と同列に捉え、目の前のお客様に語りかけるような、自然な文体を意識しています。お客様が店頭で商品を見るときの視線の流れを意識し、画像の並びも工夫しています。メインは画像でテキストは補足。1000文字以下を目安に、長すぎず短すぎず、押しつけることなく、商品の魅力を伝えることを心がけています。
一人がメルマガを作成したら、必ず別のスタッフがチェックし、表現や画像を修正して“カタカナらしさ”を感じていただけるメルマガが完成します。アクションリンクはお客様の反応や売上も簡単に見られるので、お客様の反応を踏まえて掲載内容を調整することもあります。
伊藤 お客様が「内容が自分に合っていない」と感じると、メルマガは“ノイズ”になってしまいます。その点、カタカナさんは、店舗で接客を受けているかのように感じられるメルマガを作成されています。さらに、アクションリンクのレコメンド機能やカゴ落ち機能も組み合わせることで、お客様が「自分に関係がある」と感じられる配信になっているのだと思います。
売上20%を支える運用術とリピーター強化の次なる一手
――実際の運用はどのようにされているのでしょうか。
脇田 全配信は手動メルマガ2本、自動配信2本で、週に計4本ほどです。カゴ落ちや閲覧関連商品、ランキングなどの自動配信は売上に直結するので、つい頼りたくなってしまいます。ですが、自動配信ばかりでは面白みがなくなって、お客様が離れてしまうので、より世界観や温度感が伝わる手動メルマガも組み合わせています。
手動メルマガは1本あたり2〜3時間で作成しています。自動配信を活用することで少人数体制でも運用でき、効率と世界観が両立できていると感じます。アクションリンク導入後、発信の情報量は増えましたが、工数はLINE公式アカウント運用時とほぼ同じです。それほどマンパワーを割かなくても、メルマガが自社EC売上の20%を担ってくれているので、コスト面でも負担が軽くなっています。
伊藤 自動配信は売上に直結する一方、手動メルマガにはお客様との結びつきを深めてショップのファンになってもらう効果があります。カタカナさんは、自動配信と手動配信のバランスが良い、理想的なCRMをされているなと感じます。
「カタカナさんのように世界観やファンベースが強いブランドは特に相性がいい」と伊藤氏
――今後、メールマーケティングをどのように発展させていきたいですか?
脇田 これまでのデータから、リピートの傾向が見えてくるようになりました。A/Bテストでより精緻に検証し、リピーター施策を強化し、売上の柱として大きく育てていきたいです。配信内容についても、もっとお客様に寄り添ったものにしたいですね。たとえば「このシャツに合わせて、次はこんなパンツのイベントをやります」といった提案型の配信です。「自分に向けて送ってくれている」と感じられるような配信が、ファン作りにつながると考えています。
伊藤 「メール配信って今さら意味があるの?」と感じている事業者さんも少なくありませんが、メールは今も有効なチャネルです。リピーターに思い出してもらい、数ある中から自社を選んでもらう手段として、メールは非常に強い。その効果をもっと広く伝えていきたいです。