Amazon Adsが推すAI活用術 Canvaと連携し「数分で動画完成」「即時にコピー案20種」

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大矢根 翼

「広告用の画像や動画を作るのに時間がかかりすぎる」「キャッチコピーが思いつかない……」。多くのEC事業者が、日々のクリエイティブ制作に頭を悩ませているのではないだろうか。その悩み、もはやAIが解決してくれる時代かもしれない。

2025年9月30日、Amazon Adsは中小企業に向けた大型セミナーイベント「Amazon Ads Local Tokyo Business Accelerator」を開催。基調講演ではアマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads, Head of Growth Sales JPの伊勢谷直美氏が登壇し、中小企業の広告におけるAI活用に関する調査結果を発表しつつ、AI活用の効果と可能性を語った。

また、同イベントには革小物の製造・販売を行う株式会社京でん 代表取締役 竜田昌雄氏とお笑い芸人コンビのミキも登壇。Amazon Adsとデザインプラットフォーム「Canva」の連携を活用した迅速なクリエイティブの制作方法を実演形式で紹介した。

中小ECの94%がAI本格導入に至らない「3つの壁」

今回結果が発表された、Amazon Adsが国内の中小企業300社を対象に行った調査「AI in Advertising(※1)」によると、回答者の65%が広告分野でのAIツールを認知しており、特に「AI画像生成ツール(87%)」や「AIコピー制作ツール(77%)」といった機能の認知度は高い。

一方でAIツールを広告分野で本格的に導入している事業者は、わずか6%。つまり94%の事業者が、試験的導入や計画段階、あるいは検討すら始めていないのが現実だ。

なぜ、これほどまでに「認知」と「実用」の間にギャップがあるのか。同調査によれば事業者にとっての“AI導入の壁”は、次の3点に絞られる。

●広告分野におけるAIツール導入の課題
「導入・運用コストへの不安」(51%)
「仕組みや効果への理解不足」(32%)
「AI出力結果への信頼性の問題」(20%)

画像出典:Amazon Ads

こうした現状に対して、基調講演に登壇した伊勢谷氏は「マーケティング領域でのAI活用シーンはかなり明確になっています」と話す。AIを活用することにより、ビジュアル作成では外注依存からの脱却や制作時間の短縮が、インサイト分析では深い洞察が、広告コピー作成では多くのバリエーション作成が、それぞれ可能になるという。

広告予算23%削減! 「AIを使わないともったいない」これだけの理由

伊勢谷氏は「AIは事業者の広告運用に効率化と質の向上をもたらす」とも。同調査によれば、AIツール導入によって広告予算の23%の削減効果が見込まれ、さらにAIツールの導入を検討している企業の77%が「広告キャンペーンのパフォーマンス向上を確信している」と回答。コスト削減と広告効果の両方を期待していることがわかる。

また98%が「今後1~2年でAIがビジネスに影響をもたらす」と予測しており、伊勢谷氏は「AI活用が今後のECビジネスの成長を左右することは間違いない」と述べた。

画像出典:Amazon Ads

とはいえ、現時点でAI活用について「どこから始めればよいかわからない」「どのように活用すればよいかわからない」という声は多い。これに対してAmazon Adsではどのような“答え”を用意しているのか。

伊勢谷氏は特に中小規模のEC事業者にとってクリエイティブ作成の効率化とマーケティング施策の質的向上が期待できそうな3つのソリューションを紹介した。

1.AI搭載動画生成ツール「動画ジェネレーター」
動画ジェネレーターは2025年6月に米国で提供が開始され、日本でも今後始まる予定だ。商品ページの情報を活用して動画広告を作れるジェネレーターは5分以内に6種類の動画を出力する。追加素材のアップロードやフォント、色合いの調整などのカスタマイズも可能で、完成した動画は配信や、ローカルにも保存できるという。

2.分析基盤を革新する「Amazon Marketing Cloud」
これまで一部の広告主しか使えなかった高度な分析基盤を、すべての中小企業が利用可能に。これまで設けていた広告主への利用制限を撤廃。すべての中小企業が高度な分析基盤を利用できるようになり、データに基づいた的確な戦略立案をサポート。また、Netflixとの連携もスタートし、Amazon Adsのデータを活用してのNextflix広告の運用も可能になった(※2)。

3.「Canva」との連携による広告テンプレートの提供
デザインプラットフォーム「Canva」上でAmazon Adsに最適化された広告テンプレートを利用できるようになった。AI機能を活用することで、リソースが限られた中小企業でも広告クリエイティブを短時間で作成することができ、作成した素材はAmazon Adsの各種広告に利用できる(そのためのポリシーチェックの機能も付いている)。

Canva上でAmazon Adsに最適化された広告テンプレートのイメージ図(画像出典:Amazon Ads)

伊勢谷氏は、各種AIやAmazon Marketing Cloudを活用して工数を削減することで、顧客とのコミュニケーションを増やす、商品を増やす、チームでの戦略議論を深める、新しいスキルを学ぶといったことが可能になりますと語っており、ユーザーからは「最初は戸惑ったが、広告素材作成の時間を売るための戦略検討に使えるようになった」などの声が寄せられているという。

事業者&ミキが実演! 「Canva」連携で短時間で動画広告を作成

Amazon AdsとCanvaの連携効果を紹介するセッションでは、革小物ブランド「COTOCUL(コトカル)」を展開する株式会社京でんの代表取締役 竜田昌雄氏とお笑いコンビのミキが登壇。竜田氏はCanvaで数秒で20種類のキャッチコピーを作成したり、テンプレートを使って5分以内に広告動画を作成することにチャレンジしたりと、連携機能を実際に試した。

竜田氏とミキはAmazon Adsの「ライジングスターズゼミ(※3)」でも共演。今回、ミキはキャッチコピーを(AIなしで)作り、竜田氏と“対決”した

COTOCULの人気商品である「ミニ財布」は札を折らずに収納できるのが特徴だが、その機能性や魅力を写真と文章のみで伝えるのは難しかったという。竜田氏はそうした課題をCanvaとAmazon Adsの連携で解決する工程を実演した。

キャッチコピー作成: 竜田氏が商品情報を入力すると、わずか数秒で20種類のコピー案をAIが提案。求める条件を追加して調整もできる。「人間に20個も案を出させてダメ出しするのは気が引けますが、AIなら気兼ねなく試せます」と竜田氏。

広告動画制作: Canva上でテンプレートを選び、AmazonのASINを連携させると、商品画像がCanvaに自動で読み込まれる。その後はテンプレートに素材をドラッグ&ドロップしていき、竜田氏はものの数分でミニ財布の動画広告を完成させた。

AIがもたらす効果と可能性を示す

今回で2度目の開催となった「Amazon Ads Local Tokyo Business Accelerator」での発表は、AIツールが中小規模の事業者の日々の業務に寄り添う“身近なアシスタント”に進化していることを示した。

クリエイティブ制作やデータ分析といったことは、AIに任せる。そして、人間は人間にしかできない戦略立案や顧客とのコミュニケーションに集中する――そんな未来は、もうすぐそこまで来ている。

※1 調査概要/名称:AI in Advertising/期間:2025年6月12日~6月23日/対象:日本の中小企業におけるB2Cマーケティング決済者300名/製造業、商業・小売業から教育・文化事業に至るまで、様々な業界のサンプルを含む/本調査はAmazon Adsの委託により、Opiniumによって実施された

※2 関連記事:Amazon Ads、Netflixの広告つきプランにおける運用型広告で提携

※3 関連記事:Amazon Ads、中小規模の販売事業者に向けた動画「ライジングスターズゼミ」公開 失敗談から学ぶ“売上アップ”のリアル


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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