メルカリが世界共通アプリ提供開始+越境EC基盤強化 3年で50超の国・地域での展開目指す
2025年9月30日、株式会社メルカリは「越境取引事業 新戦略発表会」を開催。同社 執行役員 CEO Marketplace 迫俊亮氏と越境取引事業責任者の石川佑氏が、世界共通アプリ「メルカリ グローバルアプリ」を発表するとともに、事業者の海外展開を支える「メルカリ グローバルEC基盤」が生み出す価値を解説した。
越境ECにおける課題、そしてメルカリの“強み”とは
迫氏は発表会冒頭、拡大する越境EC市場の概況を紹介しつつ、メルカリが2024年に台湾で、2025年には香港でWeb版からの購入を可能にしたことに触れた。「2022年からの3年間で当社の越境取引の規模(越境GMV)は約15倍に成長し、2025年度には900億円規模に達しています。越境取引の中ではエンタメ・ホビーカテゴリーが約7割を占めており、越境取引事業はメルカリの次の成長を支える柱となっています」(迫氏)。
世界の越境EC市場規模は2024年に1.01兆USドル、2034年には6.72兆USドルにまで拡大すると予測されている(※1)。そうした継続的な市場拡大が見込まれる中、迫氏はメルカリが持つ強みとして、「累計40億品の在庫」「“Used in Japan”と呼ばれ、海外から支持される日本の高品質な中古品」「世界で人気を集める日本発のエンタメ・ホビー領域における在庫の豊富さ」を挙げる。
続けて迫氏は、日本発の越境ECが抱えている課題=壁について、海外からの購入者と日本国内からの販売事業者、双方の観点から列挙。購入者にとっては「サイトが使いにくく、欲しい商品にたどり着けなかったり、本当に商品が届くのか、品質は大丈夫かといった不安を感じています」と語る。
他方、事業者が直面する課題としては、「まず“参入”の壁。需要や規制がわからず、最初の一歩が踏み出せない。次に“運営”の壁。決済や配送、関税に関する専門知識がなく、(外国語での)顧客対応にも不安を抱えている。そして”成長”の壁。出品後、どう販促し、売上を伸ばしていくのか、その知見が不足している」と分析する。
画像出典:株式会社メルカリ(発表会資料より)
「グローバルアプリ」で一貫した顧客体験を目指す
こうした壁を取り払う新戦略としてメルカリが発表したのが、9月30日に台湾と香港で提供を開始した同社初の世界共通アプリ「メルカリ グローバルアプリ」と、メルカリshopsを通じた事業者の越境販売を促進する「メルカリ グローバルEC基盤」だ。
「メルカリ グローバルアプリ」では、全てのプロセスを一つのアプリ上で完結させることにより、海外購入者へのシームレスな購買体験提供を目指す。人気ジャンルであるエンタメ・ホビー領域に特化したUI・UX設計で、9月30日の開始時点でAIによるリアルタイム翻訳機能を実装、メルカリShopsの商品も購入可能となっている。
アプリの機能は段階的な拡充が予定されており、2026年1月には「よりお得な国際配送」「全品検品の導入」「アプリ内完結のシームレス決済」を介し予定。2026年上旬に「予約販売」、同上半期に「あんしん鑑定」がそれぞれ追加される予定となっている。
石川氏は「メルカリ グローバルアプリ」がもたらす購買体験を“楽しい”“かんたん”“安心“と表現し、「欲しいものを探すワクワク感があり、操作はシンプルで直感的。そして、検品や配送の仕組みにより、安心して購入できる環境を整えていく」と紹介。また、エンタメ・ホビー領域の事業者を悩ませる転売問題への対策として、事業者向けのメルカリShopsの利用が前提になるため個人による無在庫販売ができないことや、予約販売は正規事業者(パートナー)と連携して行うことなども説明した。
画像出典:株式会社メルカリ(発表会資料より)
越境EC基盤を強化し事業者の出店を促進
新戦略のもう一つの核となるのが、事業者の海外展開を支援する「メルカリグローバルEC基盤」だ。メルカリは「誰でも・かんたんに」「安心・安全に」「成長基盤のサポート」の3つを掲げ、メルカリShopsを通じて簡単に海外販売を実現できる仕組み作りを進める。
「グローバルEC基盤」の特徴については、既報のこちらの記事も参照してほしい。
画像出典:株式会社メルカリ(発表会資料より)
決済はStripe、配送は佐川急便と連携
今回の越境取引の新戦略において、配送面では佐川急便と、「メルカリ グローバルアプリ」の決済面ではStripeと提携することも発表。物流と送料に関して石川氏は「グローバルなパートナーシップを持つ佐川急便と競争力のある価格設計を構築する体制を話し合っています」と説明した。また、日本国内での同梱方法や現地のニーズに合わせた受け取り方を工夫することで物流コストの低減も目指すという。
「越境販売の最初の一歩からファン拡大、売上成長、ブランド価値向上まで、当社が持つ海外ネットワークとノウハウを生かして伴走してまいります。ブランド露出、クーポンセールなどの販促機能も提供し、事業の継続的な成長を支援します」(石川氏)
画像出典:株式会社メルカリ(発表会資料より)
2026年春に、USでのサービス提供開始を目指す
国内CtoCプラットフォームとしての枠を越え、越境EC市場におけるグローバル展開を加速するメルカリ。同社は台湾・香港を皮切りに、2026年春にはUSでのサービス提供開始を予定しており、今後3年以内に50以上、さらに中長期的には100以上の国や地域への拡大を目指すという。
今後のアップデートによって、数々の“壁”を取り除き、海外ユーザーと販売事業者の双方に選ばれるマーケットプレイスに成長することができるのか。引き続き動向に注目したい。
画像出典:株式会社メルカリ(発表会資料より)