まさに“リアル楽天市場”! 街とネットを食でつなげるグルメフェス「楽天食いしんぼう祭」

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桑原 恵美子

(左から)楽天グループ株式会社アカウントイノベーションオフィス ビジネスクリエーショングループ シニアマネージャー 西本佑介氏、同社アカウントイノベーションオフィス 伊澤希望氏

「楽天市場」の人気店舗が集まったグルメフェス「楽天食いしんぼう祭」が、昨年に続き今年も開催された。昨年は東京会場(代々木公園)のみでの開催だったが、今年は大阪会場(扇町公園)との2カ所での開催と規模を拡大。参加ブースが昨年の1.5倍に増加したほか、大手食品メーカーのサンプリングブースや地方のアンテナショップの参加も増加するなど、企画も広がりを見せている。

目的は、楽天グルメの魅力をオフラインで体験してもらうこと

「楽天食いしんぼう祭」は、「楽天市場」が 2024 年から開催しているグルメイベント。昨年は東京会場のみでの開催だったが、2025年9月には大阪会場、10月には東京会場と、2カ所に拡大した。東京会場の参加ブース数は昨年の1.5倍の42ブースで、新規出店が約7割、昨年からの再度の出店は約3割だった。東京会場の来場者数も昨年を超える盛況となった。

「楽天食いしんぼう祭」開催担当の西本シニアマネージャー

楽天グループ株式会社アカウントイノベーションオフィス ビジネスクリエーショングループ西本佑介シニアマネージャーはイベントのコンセプトとして「街とネットを食でつなげる」ことを挙げ、ユーザーに「グルメといえば楽天」という認識を持ってもらうことを目指していると語った。

「楽天グルメの魅力をオフラインで体験してもらうだけでなく、その結果としてウェブの利用にもつなげ、最終的には楽天グループ全体の利用拡大につなげたい。参加店舗にとっても、ユーザーとの直接的な接点を通じたファン醸成の場となることを期待しています」(西本氏)

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昨年から変わったこととしては、大手企業のサンプリングブースが増えていること。西本氏が所属しているアカウントイノベーションオフィスは主に大手ナショナルクライアントを対象にEC事業やマーケティング活動を支援している部署であり、「楽天市場のメインであるECの食品業界を超えて、広く食品メーカーが参加できるオフラインのプラットフォームを作ることも狙いのひとつ」と語る。今年はさらに食品業界も超え、TikTok Lite(※)も参加。食品に限らず、楽天会員のIDを持っているユーザーの多い場所に、企業とのタッチポイントを作る取り組みを今後、広げていきたいという。

(※)データ通信量を抑えてスマホ容量を節約できる、動画視聴に特化したTikTokの公式軽量版アプリ。視聴や起動でポイントが貯まり、電子マネー等に交換可能

永谷園は新商品「めし粥」の無料配布を実施し、4日間で4000人超がブースを訪問

「今後の展望としてはさらに拠点を増やしたいのですが、時期的に真夏は食中毒のリスクが高くなりますし、秋は楽天市場内のキャンペーン『楽天食いしんぼう祭』(9月12日から10月17日の5週間)との連動も考慮する必要があります。そのため一気に拡大することは難しいのですが、もう1、2カ所は増やしたいですね」(西本氏)

累計100種類以上の芋スイーツが大人気の「おいもや」

数多くのブースの中でも特に注目度が高かったのが、昨年の「楽天食いしんぼう祭」で売上第2位を獲得し、9月の大阪会場では初日売上1位だった、静岡県掛川市のお芋スイーツ専門店「おいもや」。おいもやSHOP店長の比嘉琉治氏によると、同社は昭和61年創業の干し芋製造販売店「平松商店」としてスタートし、2001年頃から2代目社長がECを始め、2007年には「おいもや」を設立。現在、リアル店舗は掛川の1店舗のみで、ECとリアル店舗の連携をさらに強化していくとのこと。

「おいもホッとサンド」「紫芋チュロス」などバラエティに富んだ芋スイーツが並んだ「おいもや」のブース

EC向けに開発してきた芋スイーツの種類は100種類を超えるが、一番人気は「いもや」の原点ともいえる干し芋の看板商品「二代目干し芋」。最近の干し芋ブームで商品数が増え、海外産の芋を使う競合が増える中で、同社の強みは自社農園を持ち、栽培から商品企画、製造販売までを一貫して行っていること。「価格での勝負ではなく、ブランドイメージをしっかり構築して差別化していきたい。お客様との収穫体験イベントを定期的に開催したり、新商品をいっしょに企画したりして、深いファン層を作ることに力を入れています」(比嘉氏)

楽天食いしんぼう祭で一番人気の「キャラメル焼きいもシェイク」と「紫芋モンブランシェイク」を持つ、おいもやSHOP店長の比嘉琉治氏

自社ECをスタートさせた後、最初に出店したモールが「楽天市場」。ほかにもいくつかのモールに出店しているが、楽天市場は担当者がついて店舗と一緒に考えてくれる「面倒見の良さ」があり、「一緒に盛り上げていきたい」存在なので、こうしたイベントにも積極的に参加しているという。「こうしたイベントに参加させていただくことで、おいもやを知らない方に当店のスイーツを知っていただける意味はすごく大きいと感じています。今後もこうしたリアルイベントを通じて、ECとリアル店舗の連携をさらに強化していきたい」(比嘉氏)

食べ物で体を整える台湾の文化を広める「小宇宙食堂」

今回、初参加となったショップのひとつが、神戸に実店舗を構える台湾料理店「小宇宙食堂」。同店を運営する株式会社人良食 CEO リン・シエ(林資穎)氏は台湾出身で交換留学生として神戸の大学で学んでいたが、友人に振る舞った料理が評判になったことや、台湾の「食べ物で体を整える」文化を日本に広めたいという思いから料理教室を始めた。それがまた評判を呼び、レストラン「小宇宙食堂」を開業。

水墨画家としても活躍し、同店のメニューのイラストも手掛けている株式会社 人良食 CEOのリン・シエ氏

「台湾料理というと味付けが濃いイメージがありますが、うちのお料理は台湾のおばんざいのような家庭料理で、例えばルーローハンも赤身肉を使用して食べても胃もたれしない工夫をしていますし、鶏のスープなども季節によって食材や調理法を変えています」(リン氏)

コロナ禍の時期、店舗での売上減を補うためにテイクアウトやECに力を入れるようになり、百貨店での物販にも乗り出した。その時、来店したことがない人にも店の魅力が伝わるようにパッケージを改良したことが、ECの強化につながった。

現在、ECサイトとしては自社サイトのほかは楽天市場のみ。楽天市場を選んだ理由としては、食べ物を探す楽しさがあること、楽天ポイントの使いやすさのほかに、親身で柔軟な対応を挙げた。「注文日即日発送を求めるモールもありますが、マンパワーが限られているうちのような小規模店舗には難しい場合もあります。楽天はうちのような小規模のお店の事情を考慮して、柔軟な対応をしてくださるのでありがたく思っています」(リン氏)

神戸のパン店から出るパンを餌の一部として育った「神戸ポークプレミアム」を使用した「胡椒餅」が人気

今後はデトックスに良いとされる新月・満月の時期に合わせた定期便サービスを展開し、日本の季節の食材と台湾のレシピを融合させた商品を提供したいとのこと。

「実店舗は神戸のお店1店舗だけですが、ECで日本全国の方に料理を届けられることがうれしいです。大切な商品を運送会社の方に少しでも丁寧に運んでもらえるように、包装箱に『ありがとう』や『謝謝』などのメッセージを貼っています」(リン氏)

まさに“リアル楽天市場”

初日に会場内を一巡したが、楽天市場の人気店舗が集結しただけあり、魅力的な商品ばかりで、目移りして困るほど。まさに“リアル楽天市場”で、この試みが周知されればさらに来場者数も参加店舗も増え、規模が拡大していくのではないだろうか。


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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