2025年冬、楽天市場で何が売れる? 物価高で「節約と快適」の両立ニーズ【トレンド予測レポート】
2025年冬、消費者の購買行動は「節約」と「快適さの追求」という一見矛盾したニーズの間で動いている。楽天グループ株式会社が10月23日に発表した「『楽天市場』2025年冬のトレンド予測」では、この「両立ニーズ」に応える3つの主要トレンドが発表された。
記録的な酷暑と続く物価高を受けて、消費者はどのように今冬を乗り越えようとしているのか。同日開催された発表会から、EC事業者が注目すべき、具体的な売れ筋商品と消費者インサイトをレポートする。
【2025冬トレンド】光熱費高騰の防衛策「パーソナル寒さ対策」
楽天グループ株式会社(以下、楽天)が20代から60代の男女1000名を対象に行ったインターネット調査(以下、同調査)では、約9割が物価高が「気になる」と回答し、8割以上が「冬場に節約する」ことを検討している。
物価高以外で不安なこととして、57.7%が「光熱費の高騰」を挙げ、2位の「気象(39.5%)」、3位の「感染症の流行(36.2%)」を大きく引き離した。
画像出典:楽天グループ株式会社 発表会投影資料
光熱費を抑える商品の選び方としては、「電気を使わない、または消費電力が少ない(39.2%)」、「特定の場所(足元、首元など)をピンポイントで温められる(31.9%)」、「長時間、繰り返し使える(30.3%)」がトップ3となった。具体的には、「断熱フィルム」や「冷気ガード」など断熱効果を見込める商品の流通額は2023年から2024年にかけて約1.3倍に伸長。個人向けの暖房商品も多様化しており、「電気ストーブ」は約1.4倍、「ホットマット」は約1.3倍の流通を記録したほか、「着る毛布」「パネルヒーター」「ヒートクッション」なども好調だという。
この結果からは、部屋全体を暖めるのではなく、局所的に体を温めることで光熱費を抑える「パーソナル寒さ対策」グッズの需要が高まっていることが見受けられる。
また、今夏の記録的猛暑の影響から、暑さ対策としても使える商品が成長している。2024年の「サーキュレーター」流通額は2023年比で約1.5倍に成長。冷却モード付きの「充電式カイロ」など、“二刀流”防寒グッズも増えている。
画像出典:楽天グループ株式会社 発表会投影資料
体の表面だけでなく体内から温める「温活」にも注目が集まっている。同調査では「温活」をしたいと思う人は71%を占め、「温活」商品の購入意欲がある人のうち55%が男性という結果も出ている。
日常生活に温活を取り入れる「ながら温活」関連商品の楽天市場における流通額は2023年から2024年で約1.2倍、冬季(12月〜翌年2月)に限れば約1.8倍の成長市場だ。利用シーンは「家事中(60.0%)」「就寝中(51.8%)」「仕事中(47.2%)」の需要が高く、「温かいキッチンマット」「マウスパッドヒーター」「着圧ソックス」などが紹介された。
【2025冬トレンド】効率化とストック需要に応える「家チャージ」
物価高で消費者が日用品購買において効率化を重視する中、「家チャージ」として今回紹介されたのが「まとめ買い」だ。
まとめ買い市場は2020年から2024年にかけて約1.6倍に伸長。同調査でも「大容量パックの購入やまとめ買いが増えた」との回答が過半数を占めた(「とても増えた《13%》」「やや増えた《47%》」の合計)。
まとめ買いの理由は「買い物の手間を省きたい(62.5%)」「ストックがないと不安(58.3%)」「品切れの不安を減らしたいから(35.0%)」が上位に並ぶ。
画像出典:楽天グループ株式会社 発表会投影資料
11月以降はブラックフライデーや年末商戦でのポイント還元キャンペーンも多く、楽天はまとめ買いへの関心がさらに高まると予想する。
2023年から2024年の冬季には「トイレットペーパー」が約2倍、「ティッシュペーパー」が約1.5倍へと流通額が成長。「歯ブラシ」は通年で約1.4倍の成長となった。新年に向けて「下着・肌着・靴下」「歯ブラシ」「タオル」といった生活必需品を揃える需要も高まっているという。
【2025冬トレンド】節約疲れを癒す「自分チャージ」と「おうち行列飯」
家計防衛を強める一方で、節約疲れを癒すための「ご褒美」消費も欠かせない。「今年の冬、自分へのご褒美を買いたいと思うか」を質問したところ44%が肯定的で、「ご褒美」のジャンルとしては下記の回答が集まった。
◆旅行/温泉 39.3%
◆外食 38.9%
◆スイーツ(外食を除く)32.7%
◆趣味・娯楽 26.8%
◆ファッション 26.4%
「旅行」や「外食」といった体験型消費が上位だが、ECで購入可能な「スイーツ」や「ファッション」も続く。ご褒美需要の「自分チャージ」商品としては、3000円~5000円台のスイーツや、自宅で着られる1万円前後のリカバリーウェア、2万円~5万円の小型バッグなどが注目されている。
画像出典:楽天グループ株式会社 発表会投影資料
こうした「自分へのご褒美」消費と関連するのが、3つ目のトレンド「おうち行列飯」だ。
節約の筆頭ターゲットは「食費(外食を控え自炊をするなど)《51.8%》」であり、多くの人が外食を控えている。だからこそ、「自宅での食事をより充実させたい(68%)」というニーズが高まっているのだ。
行列店のグルメへの関心も高く、近年人気の「生ドーナツ」「マラサダ」「麻辣湯」などは、2023年以降楽天市場でも大きく売り上げを伸ばしている。
画像出典:楽天グループ株式会社 発表会投影資料
物価高は続くが、楽天の調査からは、消費者が防寒グッズで「熱効率」を、まとめ買いで「購買効率」を高めるなど、限られた予算内で最大限の快適さと効率を追求する姿が見える。
同時に、節約志向が続く中でも、「ご褒美」や「行列グルメ」といった「体験価値」への支出は惜しまない傾向も強い。
EC事業者としては、節約ニーズに応えるだけでなく、こうした「買い物上手」な消費者のインサイトを鋭敏に捉え、生活に寄り添う工夫や提案が今まで以上に求められると言えるだろう。


