想いと想いを繋ぐ「花」。その美しさを伝え続けるために【店長のホンネ】

ECのミカタ編集部

午後4時までに花を注文すると当日に届けてくれる「花急便」。花屋でも、4時までの注文に対応することは難しいです。それでも、花急便は4時までの注文に対応しています。これは、ECならではの戦略なのではないでしょうか。花急便は、その他にも、小学校や老人ホーム等に出張をして「花育」を行うなど、様々なサービスが充実しています。そんな花急便を運営している株式会社花大 代表取締役 社長 澤野裕悟さんと、フラワーデスク 飯村佳奈さんにお話を伺いました。

【花×EC】のミニ特集記事→https://ecnomikata.com/ecnews/9702/

花急便の歴史は楽天から始まった!

 現代では多くの人が利用している花急便だが、その始まりはどのようなものだったのだろうか。経緯を辿ってみると、花急便の良さが広がっていく。

 「元々は花屋として始まって、ECを始めたのは10年前でした。自社サイトはなかなか敷居が高かったので、まずは「楽天に一度乗っかろう」ということで楽天に出店したことが最初でした。
 それで、楽天に出店してから「可能性はあるな!」と思い、自社サイトに移行しました。当時、花屋さんの自社サイトはあまり無かったので、広告を含めてページ作りが大変でした。また、現代のようにASPカートの種類が充実していなかったので、そこも苦労しました。最初に選んだASPカートはショップメーカーさんでした。ショップメーカーさんはフロントが全くなく、「買い物カゴ」機能だけという形が、ちょうど必要な形だったからです。」

 当時は、現代のようにEC関連サービスが進化していなかったため、自社サイトを作ることは大変だった。時間をかけて自社サイトを作るよりは、土台がしっかりしている楽天に出店した方が多くの人に花を届けることができる、と考えた。その行動は功を奏した。そして花急便は、サービスの充実さや迅速な対応により、多くのお客さんを集めていった。その当時おそらく、花をECで購入することがあまり無かっただろう。花は、直接花屋で購入をすることが一般的であったため、花急便のサービスが新鮮だった。楽天を機に花急便が広がり、一気に人気を集まり、それは自社サイトに移行しても続いた。

花急便の魅力ある目玉サービスをご紹介!

 「午後4時までに注文と入金を済ませて頂くと、全国当日中に配送することが花急便の1番の売りです。当然、弊社の車でも行きますし、車で行けない所は提携をしているお花屋さんが全国にあるので、そちらのお花屋さんにご依頼をして届け先にお届けします。
 実は、当日注文で当日花を届けられる花屋というのは、ほとんどありませんでした。そのため、「花」というよりも「今日届く」の方がニーズ高いです。そういった意味で僕らは、どちらかと言うとBtoBの方に寄っています。BtoCは、検索して「ゆっくり美しい花を選ぼう」となるのですが、会社さんのニーズは「その日のうちに」というように急ぎの場合が多いです。
 そのようにサービスで尖って勝つ、「花」よりもむしろ「サービス」で勝負することが花急便です。花急便に来るお客さんは急いでいる方が多いので、できればワンクリックで注文ができることが嬉しいはずです。とにかく、クリックを減らして注文をすることができるようにしています。きっと、どの花屋さんよりも「午後4時」というのは1番遅く、おそらく、弊社だけです。」

 会社に限らず個人でも、午前中は何かと忙しくて、正午を過ぎて「忘れていた!」ということはありがちだろう。でも、花急便なら4時まで対応してくれるのだ。やはり、このサービスは画期的だろう。

花屋で請求書を発行することは異例だった?

 母の日になると、カーネーションを贈ることが当たり前になってきた。だが、母の日のようなイベントがあると花屋に行く機会があるが、その他ではあまり花屋に行く機会が無い。いくら花が好きであっても、毎週のようには行かないだろう。そうなると、気になるのが花屋の「売上」。

 「花には売れる時期の波があって、母の日のようなイベントの時が最も売れることはご存じだと思います。それ以外では、そもそも、日常で花を購入する機会が少ないです。おそらく、母の日のようなイベントか大切な人の誕生日しか買わないはずです。そのような年に数回購入する人をターゲットにしても花が売れない現実があるため、弊社はBtoBを重視しています。
 実は、街の花屋さんでも売上の8割は「法人」ということもあり得ます。有名な花屋さんは別として、日頃街の中で見かける花屋さんには何人くらいお客さんが入っていますか?おそらく、そんなに入っていないはずです。イベント毎では花が大量に売れても、普段はそこまで売り上げが伸びないことが現実です。
 リアルな店舗でそのような感じなので、花屋のECで、しかもBtoBというのは本当に少なかったです。おそらく、花屋のECで請求書を出したのは花急便が初めてだと思います。そのくらい、花屋はキャッシュが回りません。僕が最初に違和感を覚えたのが、会社さんから注文を頂いて、会社は前払いなど絶対にあり得ないと思います。会社さんから「それはできないよ」という話になるので、そこから変えていき、現代のように請求書が普通になってきました。」

 会社では請求書がないと、問題になる。業界の当たり前を当たり前とせず、請求書の対応をした。それにいち早く気付き、請求書の対応をした。現代では普通になってきたが、それは花急便のおかげなのだ。請求書をはじめ、花大のこういった姿勢があるから、安心して頼むことができるのだろう。

贈り物の要望も迅速に対応!

贈り物の要望も迅速に対応!

 花を頼みたいときに色々な要望がある。やはり、大切な人に贈る花だからこそ、相手のことを考えてこだわりたいのだ。その要望にも、花急便は対応している。最近では、どのような要望が多いのだろうか。あるいは、今売れている花はどのようなものだろうか。

 「最近は、お花の種類での要望が多いです。例えば、「あの方はこの花が好きなので入れてください」などですかね。そのような声には柔軟に対応するようにしています。特に最近要望というか、人気が高いお花は、やはり母の日が近いこともあってカーネーションが人気です。今からですと、お花は先物と言いますか、少し時期が他のものと異なってちょっと早くなるので、母の日が終わると次は、ひまわりが売れます。」

 花が贈られてきたときに、自分の好きな花が1つだけ入っているだけで嬉しくなる。そのことも考えながら、花急便は花を制作している。また、母の日前にカーネーションが売れていることは想像しやすいが、その次にはひまわりが来るというのは、意外ではないだろうか。ひまわりがあると、春から夏に変わり、一気に爽やかな気分になる、そんなことから、ひまわりの要望が多いようだ。

花の美しさを伝えるために「花育」が始動!

 花大では、他にも色々なサービスを行っている。「花育」もその一つだ。花の美しさを伝えるため、最初は小学校のみだったが、最近では老人ホームなど、どんどんニーズが広がってきている。
 
 「花育と聞いてピンッと来ないと思いますが、食育の花バージョンと言うと想像が付くと思います。そもそも、農水省の中に「一般財団日本花普及センター」というものがあって、そこが7,8年前に立ち上げました。当時は協会や団体が取得する花育アドバイザーがあったのですが、たまたまご縁でその資格を取得することができて、小売の会社では弊社が初めてだったようです。
 それで、弊社が手を挙げたらやらせて頂けるようになって、小学校に行ったり花急便の店舗などにお客さんに来て頂いたりしております。その中でも小学校の学童保育が多いです。学童保育というのは、レクリエーションに困っているんですね。なので、月に1回くらいは花育として、生の花を直接子供達に触ってもらっています。それが教育的にも良いので、まず花育は子供からスタートしました。近所の小学校から、遠いときは川崎の方まで行っています。多いときは、体育館で100人を超えます。
 今の小学校は、花壇が無い所が多いため、土を触る機会が少ないです。子供の中には「カーネーションって何?」という子供もいることが現実です。このように、花に触れる機会が少なかったり、花を購入する習慣が無かったりするからこそ、花のことを知らない子供が増えてしまっています。この現状を変えたいということもあり「花育」を続けてきました。
 花に触れる機会が少ないからこそ、小学生の反応はとても面白いです。やはり、小学生の想像力が違うと言いますか、出来上がりがすばらしいです。斬新なことはもちろん、とても生き生きしていて本当に上手です。出来上がった花の写真を飾っていますが、子供と大人の区別が付きません。また、お母さん付きで花育を行うこともありますが、子供はパッと作って遊びに行きます。逆に、お母さんは最後まで悩んで作っています。

 そんな花育も少しずつニーズが増えてきて、子供に限らず、お年寄りにもということで、老人ホームにも行くようになりました。花育はリハビリにも良いですし、お年寄りも生の花に触れたり見たりする機会って少ないと思います。そのため、最近では介護施設の花育に力を入れていて、月に大体50~60回花育をしに行っています。そういった「花育」という大枠で動いていることが大きいです。
 「花育」とは別に、大人向けに「ワークショップ」も行っています。本日(4月21日)も川崎のララポートでワークショップを行ったのですが、今回のテーマは「盆栽」でした。生の花では無い盆栽などが流行っていて、それもあり、本日も人数が多く、大盛り上がりでした。最初は本当に小学校にちょっと行って「花育」を行っていましたが、現在はこのように「ワークショップ」にもなり、ニーズが増えてきています。そこから次のステップに行けるように、新たな施策を現在考えています。」

 つい、この間まで小学校に花壇があることが当たり前だった。だが、時代が変わるに連れて、花壇が無くなり、子供が花と触れ合う機会が減少していった。それを変えるべく、「花育」が立ち上がって、子供に花の美しさを教えている。これを機会に、花を好きになる子供が増え、積極的に花を購入するようになるだろう。

花急便の今後の未来とは・・・

 豊富なサービスから「花育」まで行っている花急便。次なる施策はどうようなものだろうか。現在でも人気が高い花急便が今後もどんどん発展していくための新たな施策があるという。

 「今後としては、まだ花急便の「午後4時までに頼むと当日に配送」というサービスをブラッシュアップしていきます。もしかしたら、午後5時や6時までになるかもしれませんし、他の花屋さんが追随することができない方向にもっと尖っていきます。別の軸としては、今回、「胡蝶蘭専門の花急便」をオープンさせたのですが、そのように商品に特化したコマースを増やしていきたいです。
 さらに、ある一定の地域、例えば配達地域を「新宿・歌舞伎町だけ」と絞る方法があり、仮の名前で「ナイト花急便」というものが挙がっています。歌舞伎町と六本木と錦糸町など、夜の世界は花の需要もあるので、そういったところに尖がっていきます。「胡蝶蘭専門の花急便」とはニーズが違いますが、サービスを他より尖らせていく考え方は変わらないです。
 
 大枠の花大全体では、店舗と「花育」のようなイベントの企画を練っていきます。また、ECをやりながらも、実は「店舗ありき」です。花屋が花でいっぱいでなかったら、お客さんが入らないと思います。例えば、お客さんが入って居なくて、花が冷蔵庫に入っていると「ちょっと古いのかな?」って思ってしまうはずです。そこが弊社の場合は、とにかく作り続けています。お客さんが仮に居なかったとしても、とにかく忙しそうに作っています。これは心理的なことで、お客さんから見たら「ここ、忙しそうに花回っているな」って思ってもらうだけで敷居が下がっていきます。それを可能にしているのが「花急便」です。
 花急便では注文を受けて制作をして、弊社の車3台で配送しているのですが、その制作を店舗が担っています。制作をするため、店舗には大量の花を置きます。このように大量の花が置いていると、イベントや舞台の装飾ができたり、葬儀が突発に入った時も全部対応することができたりします。花大は、全部が柱となっているため、どれが欠けても回らないです。そこの要となっているのがECであり、大量の注文を取っていきます。やはり、お客さんにお花を選んでもらいたいので、大量の花を店舗に置かないといけません。それは、賭けのようなところもありますが、花を置かないとお客さんが来ません。だから大量に置いて、しかも得る手段を持っておく。花急便にはそういう意味での立ち位置もあって、それも他のECとは違います。」

 花急便は、ECと店舗、配送、イベント等で全ての力が1つとなっている。そこには強い団結力があり、花急便の人気に大きく繋がっている。注文された花をただ「送る」のではなく、1つの大切な「贈り物」として手入れ・加工をしていく。さらに、お客さんが自由に選ぶことができるように大量の花が用意している。それにより、お客さんがじっくり選ぶことができ、それが素敵な「贈り物」となっていく。人の想いと想いを繋げてくれる「花」を任せることができる店舗であり、それが「花急便」なのだ。


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