卸売り→ECへ、「貝ボタン」に秘める想いとは?【店長のホンネ】

ECのミカタ編集部

『貝ボタン』をご存知でしょうか。それは、とても綺麗な貝殻のボタンです。その美しさに惹かれ、貝ボタンをECで販売している『タカシマ』に取材しました。取材対応してくれた方は、タカシマ 代表 高島文典さんと、ブランドマネージャーの山本真理恵さんです。ECを始めたきっかけからお客さんへのサービス、貝ボタンへの想い、今後の展開等についてお話を伺いました。

ECを始めたきっかけは、社長の一言・・・?

山本さん:「もともと『ECをやりたい!』ということではありませんでした。弊社は卸売りだけをやっており、大量に作ったボタンが余っていました。その時に、社長から『それを売ってきたらお小遣いにしても良い』と言われ、売り方を考えているときに『インターネットだったら売れるかもしれない』と思い、Eストアーを利用して2010年にECを始めました。」

 ECを始める理由とは、どのようなことがあるだろうか。きっと、様々なきっかけがあるが、『タカシマ』のきっかけは、社長の『お小遣い』という言葉。なかなか、ECを始める理由にこの言葉は無いだろう。しかし、その一言には、社長である高島さんの考えがあった。

高島さん:「前職がボタン屋でだったこともあり、貝ボタン専門の『タカシマ』を15年前に立ち上げました。独立する際に、前職で付き合いがあった仕入れ先があったので、仕入れに関しては問題がありませんでした。仕入れ先が大量にボタンを送ってくれ、『使う分だけ単価を切るよ』と言ってくれたことがタカシマの始まりです。
 しかし、独立は甘くなく、最初は注文が一切来ませんでした。前職は部長でしたが、その看板を取ると注文が来ない問題に直面し、それでも誠意を持って頭を下げて行ったら注文の数が徐々に増えていきました。それからも得意先が倒産したり、洋服が中国製になったりと様々な問題が発生しました。以前、海外で洋服を作っても日本のボタンを使っていた所も多かったですが、現在は海外のボタンを使うようになり、それでは日本のボタン屋が動かなくなります。それで『ボタンが売れない』となり、ECで売る流れとなり、特に東日本大震災のときに大幅に売上が落ちました。私は『ECで多く売れる訳無いし、10個20個と少ない数をいちいち数えてられない』とEC事業には後ろ向きでした。それもあり、山本さんに『儲かったらお小遣いにしていいよ』と話しました。」

売り上げ向上の鍵は、ボタンの幅を広げる?

売り上げ向上の鍵は、ボタンの幅を広げる?

 無事にECをスタートしても、最初の月の売り上げは、1ヶ月5,000円程だ。だが、貝ボタンに加えて、洋服に付いているような貝以外のボタンやアクセサリーに使用出来るようなボタンも幅広く売ると、みるみるうちに売り上げが伸びていった。さらに、ボタンの幅を広げると共に、事務所を改装して店舗にした。改装について高島さんは「山本さんから『お客様が来やすいように事務所の改装を変えよう』と提案があり、また、卸をやっていたのでボタンが勝手に溜まっていくのでそれを売るためにも、『何かを変えなければいけない』と思い、改装しました。」と語った。

 親しみやすい壁や床にすることにより、お客さんが店舗に来てくれるようになった。貝ボタンの存在を知ってもらえる機会となり、売り上げ向上に繋がった。山本さんは「実際に店舗に来ていくつかの貝ボタンを見てもらうことで安心感を持って、それからインターネットで購入するサイクルができたことが売り上げに繋がったと思います。」と話す。

 さらに、お客さんを喜ばせるために、1つ1つの商品に『おまけ』が付いている。このおまけについて、山本さんは「このおまけを渡す意味は、特に宣伝ではなく、単純に買って頂いた方に喜んでもらいたいからです。」と話す。この『おまけ』の発想を思い付いたきっかけがEストアーのやずやさんのセミナーだが、同様に、山本さんがおまけをもらって嬉しかった経験からも基づいているそうだ。

レビューの存在で気持ちが変わった!

 山本さんが熱心にECをやっていても、高島さんの気持ちはそこまででは無かった。卸売りをやっていたことと比べると、卸売りは少なくても1,000個から出荷をすることに対し、ECは1個でも出荷をする。そこのギャップを理解できずに、話し合ったこともあったようだが、そのギャップを埋めてくれたのがお客さんのレビューだ。

山本さん:「2013年からお客様にレビューを書いて頂いているのですが、それを見るとお客様の気持ちが伝わってきますし、『こういうお店があることでお客様が喜んでくれる』と分かることで気持ちが変わってきました。レビューは、自分のモチベーションを上げてくれ、お客様の気持ちが分かるので大切にしています。また、社長もレビューやお客様の声を聞いていくうちにEC事業について少しずつ理解をしてくれるようになりました。」

今後の戦略とは…?

今後の戦略とは…?

 今後、お客さんを喜ばせるために、店舗に来てもらったお客さんに対してfacebookの『イイネ!』やタカシマのInstagramをフォローするとボタンを1つプレゼントするサービスを始めるそうだ。このボタンの中には、昔700円で売られていた貴重なボタンもある。さらに、店舗で半年に一回のペースでワークショップを行っている。ワークショップでは、貝ボタンを使ってブレスレットを作る。このブレスレット作りは簡単であり、かつ、とても可愛いため、お客さんに人気である。だが、利益の面から半年に一回しかできていないため、今後は増やしていくという。その他にも、今後の展開について、山本さんと高島さんが語ってくれた。

山本さん:「ECでボタンを買ってくれるだけでなく、直接店舗に来てもらって気持ちも満足してもらえるようなことをやりたいです。例えば、弊社のECサイトはただ商品の写真を並べているだけであって、その分、品揃えも多くて商品を探している方にとっては満足してくれていると思います。しかし、それだけではなく、全ての方に満足してもらうために、例えば都内のボタン屋の紹介を弊社のサイトで行いたいです。そうすることにより、お客様は色々な店舗のボタンを比べることができたり、ボタン自体のことを好きになってくれたりするかもしれません。弊社のお客様が他の店舗に行ってしまうかもしれませんが、お客様にとっては有益な情報となるはずです。その他に、他のボタン屋はおろか、ボタンに限らず、ランチなど、お客様にとって、本当に身近で喜ばれるための情報発信をしていきたいです。」

高島さん:「今後の展開に関しては深く考えていなく、商売は流通業なので先のことは分かりません。今出来ることの『ECの商品ページの見直し』を1,2年かけてしっかりさせて、後は海外戦略です。さらに、店舗売りに集中させて、お客様と向き合い、今以上に喜んで頂きたいです。」

 さらに、高島さんは今までのことを振り返り、最後に「今考えると、あの時にECサイトを立ち上げていなかったら、今のような売り上げは無いです。そういう意味では、早いタイミングでECを始めて良かったと心から思います。」と話した。

 『貝ボタン』=『タカシマ』という知名度が高くなってきた。しかし、今のように知名度を上げるためには、時には『想い』と『想い』がぶつかって意見の食い違いがあったり、時にはお客さんの声を聞いて『がんばろう』と思ったりなど、歴史が深い。長い歴史があり、色々なことを乗り越えてきたからこそ、2人の絆が強くなった。取材中も、2人で今までのことを振り返っている場面も見ることができ、改めて絆の強さを感じた。今後も、どんな壁も2人で乗り越え、さらに、それがお客さんの笑顔に繋がっていくことだろう。


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