国際物流のDHLがひも解く、越境EC成功の秘訣シリーズ 第2弾

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DHLジャパン(株)

新型コロナウイルスの世界的流行の初期は、未曾有の世界的衝動買いの時期であったと言えます。

トイレットペーパーを巡って客同士が争っている動画や、ソーシャルメディアで共有された食料品店の棚が空っぽになっている画像、パスタと缶詰が高く積み上げられているショッピングカートは、経験したことのない状況に対する消費者の極端な反応を反映していました。私たちがどのように「ニューノーマル」を受け入れるのか。今、実店舗だけのメーカーはどのような状況になっているのか、そして、新時代にフィットした方法は何なのかを見ていきます。

目次

新型コロナウイルスの世界的流行が始まってから、不安な消費者が食料品を蓄えるにつれ、食品販売店で製品に対する需要が大幅に増加したことは驚くことではありません。ユニリーバ(Unilever)は、2020年第1四半期1の売上高が北米で4.8%、ヨーロッパで1.4%増加しました。マーケティング会社のアコスタ(Acosta)が3月末に実施したレポートでは、米国の65%の回答者が新型コロナウイルス感染症により買い物の習慣が変わったと答えています。

 以前より多くの人が常備する食品を購入しており、食料品の備蓄は当たり前になりつつあります。このレポートでは、家庭料理が初めて備蓄品や紙製品を超え、買い物客の優先順位が変わり始めていたことがわかりました。 またマッキンゼーのレポートで、消費者行動に同様のパターンが見られることがわかりました。自主隔離や外出禁止令により、消費者が買い物に出かける回数が15%減ったことで、1回の買い物で2週間分またはそれ以上の食料品を購入しているそうです。しかし、米国では平均的に家が大きく、消費者の間でクレジットカードを積極的に使用していることから、ユニリーバのCEOであるアラン・ヨーペ氏は、「買いだめ」は主に米国で起きている現象であると指摘しています。*1 またマッキンゼーのレポートでは、買いだめしているからといって、実際の消費が増加しているとは限らないことも示しています。不安定な状況に直面して、多くの人は必要以上に購入し、それを蓄えているだけなのです。

   食品販売店は、この危機後の需要を予測する際には、この事実を考慮する必要があります。製品が長期保存できるものなら、今経験している需要の増加は、時間と共に減少する可能性があるのです。 

ネット通販も指数関数的に増加しています。ほとんどの実店舗が完全に閉鎖され、開店している店舗でも人々がソーシャルディスタンスを保てないことから、多くの消費者はeコマースの利用に切り替えています。アコスタのレポートによると、新型コロナウイルス感染症の影響で、米国のオンライン食品購入者の28%が3月に初めてオンライン注文したことがわかり、デジタルプレゼンスの重要性が高まっていることが明らかになりました。 

「需要のパターンは変わってきています。ユニリーバは、この危機から脱却し回復する中で、各国での消費者行動の長期的変化に備えています。」とユニリーバCEOアラン・ヨーペ氏は次のように言っています。

eコマースブームを受け、一部の食品メーカーは、オンラインで注文できるD2C用の「バンドルボックス」を提供するサービスに方向転換しています。クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)は「Heinz to Home」というウェブサイトを立ち上げ、「定番のビーンズとスープ、スパゲティフープが入ったセット」(Essentials Bundle) と、ソースセット(Sauces Bundle)、ベビーセット(Baby Bundle)の3種類の製品セットをすべて店舗と同じ価格で販売しています。  

このスーパーの需要が非常に高まっている現在において、消費者は気に入ったものを手に入れることができ、長期的に見て、食品メーカーに利益をもたらす可能性があります。食品政策を専門とするライターであるニック・ヒューズ(Nick Hughes)氏は、「このような大きな推進力により、メーカーは消費者と直接関係を持つことができるようになり、より豊富なデータを集めることができます。ひいては、製品を個人向けにすることができます。」と述べています。*2

D2Cの分野では、新型コロナウイルスの世界的流行の中で売上が増加しており、多くのメーカーへのその影響が顕在化しています。12の市場で食材セット販売会社を展開しているハローフレッシュ(HelloFresh)は、第1四半期において、ここ3年余りで最大の伸び率である前年比最大69%の増収がありました。*3 また、英国の食品販売会社モリソンズ(Morrisons)は、「ラマダン・エッセンシャルズ(Ramadan Essentials)」という家庭で食事を作るための材料が入ったセットを発売しています。都市封鎖の中でラマダンを祝うイスラム教徒のプレッシャーを軽減すべく、この商品はオンラインで注文することができます。 ネスレ(Nestle)はeコマースの売上が大幅に増加しており、多くの業界の専門家はこの傾向が続くと予想しています。  

「食品や飲料向けのeコマースに関しては、この危機の副作用の一つが、ある種の画期的な出来事になるだろうと考えています。」と、ネスレのCEOマーク・シュナイダー(Mark Schneider)氏は述べています。*4  

ネスレは直販(D2C)分野ですでに事業を行っている会社です。2015年にサブスクリプション・エコノミーに参入し、米国にて自社の一部の主要な飲料ブランドを家庭に届けるeコマースサービスを開始しました。また昨年には、キットカットブランドにD2Cサービスを導入しました。  

D2Cモデルは、消費者が利便性を求める世界にうまく位置付けられており、カスタマージャーニーをワンクリックで直接購入することへと変化させています。このモデルにより、売り手は貴重な顧客データを得ることができるようになり、アマゾン(Amazon)のような第三の市場を利用することによって、既存顧客を獲得でき、取引データを取得することができるのです。また、価格設定やブランドメッセージ、その他販売の成功に欠かせない要素を試すこともできます。  

従来の実店舗だけのメーカーにとって、新たな消費者の需要に応えるために、今こそ、商品の提供方法を改革する時です。ヒューズ氏は、「新型コロナウイルス感染症により、日用品メーカーは、D2Cモデルをテストする機会を与えられています。」と、説明しています。また、カンター(Kantar])の調査*5 では、45%の人がメーカーにサプライチェーンを守るためのシステムを導入してほしいと考えていることが明らかになっており、オンライン販売を目的に製品を再利用することは、利己的というよりはむしろ有益なことだと考えているようです。

また、オンライン販売への移行を検討している小規模メーカーは、Shopifyの新しいアプリである「Shop」を使うことによって移行をサポートしてもらえます。このアプリにより、北米にいる顧客は単一プラットフォーム上でシームレスに検索、購入、購入品の追跡を行うことができるようになります。現在の新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、Shopifyは顧客が検索し、地元の業者から購入できるようにする「Shop Local」機能の追加を急ピッチで進めました。  

国内食品業界に加え、外食・飲料業界も新型コロナウイルスの大流行により大きな打撃を受けています。その結果、多くの食品卸売業者もまた顧客へ直接販売するために事業を再編しています。例えば、英国最大のケータリング業者の一つであるビッドフード(Bidfood)は、個人や中小企業が日常アイテムを一括購入できるD2Cモデルを立ち上げました。   

そして、バーが休業している中、一部の酒メーカーはオンラインでブランド体験を実施することで顧客とのつながりを持とうとしています。クラフトビールメーカーのブリュードッグ(BrewDog)は、バーチャルで世界中に102のバーを開店したので、ファンは地元のバーを「訪れる」ことができ、クイズや試飲会に参加することができます。参加者はブリュードッグのウェブサイトからビールの「Build Your Own Bundle」を注文して、バーチャルな集まりで楽しむことができ、オンラインで素晴らしいブランド体験をすることができます。バカルディ社(Bacardi)もまた、パーティを盛り上げようと、厳選したバーと提携し、デリバールー(Deliveroo)を通して消費者が注文できる限定のカクテルメニューを制作、提供しています。

ヒューズ氏は、「ホスピタリティ産業の企業にとって、大小を問わず、宅配が都市封鎖中も機能を維持する一つの方法になっています。」と述べ、「私は、配達サービスがある限り、サービスを提供し続けることを期待します。」と語っています。  

コロナ後の世界に目を向けると、多くの企業は、都市封鎖が緩和すると新しい消費者ブランドの状況はどのようになるのかと疑問に思っているでしょう。消費者の変化する購買行動にメーカーはどのように対応すべきか、また、新型コロナウイルスの大流行が過ぎ去った後、どのような傾向が生まれるのか、情報を精査し、しかるべき対処をしていく必要があります。


*1 引用:https://www.proactiveinvestors.co.uk
*2 引用: https://www.canvas8.com
*3 引用:https://www.reuters.com/article/us-hellofresh-shares/hellofresh-shares-at-record-high-on-virus-sales-boost-idUSKBN21I0V3
*4 引用:https://www.just-food.com/news/nestle-ceo-expects-post-covid-19-boost-for-e-commerce_id143574.aspx
*5 引用:https://www.marketingweek.com/brands-advertising-coronavirus-crisis/


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DHLジャパン(株)

 DHLは、世界のロジスティクス産業をリードするグローバルブランドです。グループ各部門が提供するサービスは、国内および国際小包配達から、eコマースの商品配送、フルフィルメントサービス、国際エクスプレス、陸上・航空・海上輸送、産業別サプライチェーンマネジメントにまでおよびます。
 世界220以上の国・地域で38万人の従業員が、人々とビジネスを確実に繋ぎ、グローバルでサステナブルな貿易の実現を可能にしています。

 デジタル化と消費者の購買行動の変化により急速に成長するB2C Eコマース、B2B Eコマースにおいても、DHLはロジスティクスサービス企業として消費者ニーズを満たし対応するため常にスピードと包括的な知見をもって対応いたします。

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