エンタメEC 2024年上半期最新事情 第二回 日本アーティスト×越境EC最前線「日本独自のコンテンツ力×豊富な音楽群の再発見で生み出すブーム」

BEENOS株式会社

BEENOSグループは海外ユーザー向け購入サポートサービス「Buyee」の購買データを元に越境ECランキングを定期発表しており、8月に2024年上半期の新たなランキングを発表しました。越境EC市場におけるエンターテインメントジャンルの人気傾向や購買ユーザー層などの最新情報をご紹介するこの連載、今回は第二回として「Buyee」の上半期のランキングデータを元に、海外の方が買い求める日本の音楽とその傾向について解説します。

海外でバズる日本音楽

海外でバズる日本音楽(図1)International Federation of the Phonographic Industry 「Global Music Report」(2018-2024)よりBEENOS作図

音楽市場規模世界2位(※図1)である日本の音楽はその国内市場の大きさから国内消費が中心でした。一方、近年の音楽配信サービスや動画配信サービスの世界的な普及をきっかけに日本音楽に世界のユーザーが触れる環境が整備され、機会の増大とともに海外展開を強化するアーティストも増加しています。特に、世界的人気コンテンツである日本アニメが動画配信サービスの普及によって爆発的に視聴者層を拡大し、合わせてその主題歌である日本の音楽もオンラインを通じて世界的なバズを生み出しているほか、TikTokなどの動画配信サービスによって世代を問わずに70年代、80年代のシティポップなどの日本の音楽が再発見・拡散されることで日本の音楽の認知度は高まっています。BEENOSグループが提供する海外ユーザー向け購入サポートサービス「Buyee」においてもシティポップジャンルのCDやレコードは継続して一定数の購入が行われており、幅広い世代の男性を中心として人気が高いことがわかりました。日本の音楽の1ジャンルとしてJ-POPやアニメソングだけでなく、シティポップも一過性のブームに留まらず人気の定着の兆しを見せています。

拡大するレトロ人気

拡大するレトロ人気

Z世代を中心にファッション分野などで過去の世代の商品が流行するレトロブームが起きていますが、その波は音楽市場にも波及しています。「Buyee」では音楽ジャンルにおいてレコードのほか、カセットテープの売上件数が伸長していますが、これらの商品の購買層はその音楽を発売当時に聞いていたリアルタイム世代だけではなく、若年層による購買がけん引しています。レコードは元々40代前後の男性による購買が多いジャンルでしたが、近年では、そのアナログな音声に魅力を感じる若年層が増加しているほか、カセットテープはカセットプレイヤーによってより手軽にアナログな音声を楽しむことができることから若年層の関心を急速に集めており、購入件数が伸長しました。
70年代や80年代などの昔の楽曲が若年層に新しさを感じるものとして価値を再び付与されており、Buyeeでもシティポップの流通はブーム後も安定的な人気を保っており、日本のレトロ音楽は一時的なブームでなく一ジャンルとして定着しつつあります。

越境ECで人気の日本アーティストのランキング

越境ECで人気の日本アーティストのランキング

また、BEENOSグループが発表した2024年上半期の「Buyee」のJ-POP音楽アーティストランキングではアニメ映画「ONE PIECE FILM RED」の劇中内での歌唱を担当したことで世界的に知名度を高め、今年世界ツアーを敢行したAdoが1位を獲得。2位には合成音声ソフトVOCALOIDから発祥したキャラクターである「初音ミク」、3位には国内で高い人気を誇るアイドルグループ「乃木坂46」がランクインしました。そのほか生身ではないバーチャルな存在として初音ミクのほかにVtuberとして歌手活動を行っている「星街すいせい」が7位にランクインしたほか、アニメ「推しの子」の主題歌「アイドル」が世界的なバズとなり、12月からアジアツアーを控えるYOASOBIが6位を獲得。また、80年代を象徴する歌手である中森明菜も10位にランクインしました。AdoやYOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。などのアニメソングを起点にヒットとなったアーティストが複数ランクインしたほか、YouTubeやニコニコ動画などの動画配信サービスによってファンを増やしているVtuberとVOCALOID、日本アイドルなど日本の特色あるアーティストが多数ランクインする結果となりました。ランクインしたアーティストの多くはグッズが豊富に展開されている傾向があります。

さらに海外市場で活躍するK-POPによってアイドル的な要素を持ったアーティストグループのジャンルが確立されたことを背景に、日本においてもダンスと歌唱パフォーマンスを行うグローバルなメンバー構成によるアーティストが結成されるようになりました。本ランキングでも「&TEAM」、「XG」がランクインし海外からの購買需要が高いことがわかっています。

グローバルアーティストグループの台頭で増加する海外販売需要

海外市場においても特色ある日本の音楽の商品購買は活発に行われており、グローバルアーティストグループの台頭など世界的な需要を見込んだ活動は広がりを見せています。特にこうしたグローバルグループやK-POPアーティストなどの公式ショップは多言語での展開や海外発送にも対応していることが多く、世界中のファンにグッズを届けています。一方、日本アーティストの公式オンラインショップは海外発送に対応していないところも多く、せっかくオンラインを通じて楽曲を知ってユーザーがグッズを買いたいと思ったタイミングでも言語の壁や海外発送非対応などによって購入を阻まれることがあります。自社で越境ECを構築するには多言語対応や発送などの面でリソースやコストがかかるため、なかなか導入に踏み切ることが出来ない事業者様も多いですが、そういった時にはコストとの兼ね合いを見ながら他社サービスの導入を検討することも一つの手段として有効です。

一例としてBEENOSグループでは簡単な作業で既存サイトの構成を変えずに越境ECを始められる海外向け購入サポートサービス「Buyee Connect」を提供しています。日本で既に国内向けECショップをオープンしていたある日本アーティスト様は「Buyee Connect」を導入いただいた際には新商品販売のタイミングで導入開始時と比較して海外売り上げが10倍になった事例があります。海外からの需要の増加によってBuyee Connectの日本アーティスト様からのお問い合わせは増加しています。ECの海外対応によって世界のファンが商品を買いたい時にスムーズに購入してもらえる環境を整備することが重要です。

あらゆるサービスのオンライン化によって世界中の楽曲の発掘が容易になった現在、過去の楽曲であってもSNSや動画配信サービスでの拡散によるヒットの可能性は高まっています。世界音楽市場第2位である日本の豊富な音楽群は時代を超えた回遊によって新たな価値が生まれる宝庫となっています。アニメやVtuber、VOCALOID、アイドルなど独自の文化・コンテンツを創造し世界でファンを獲得する日本は、これらの独自性の高いコンテンツと音楽を掛け合わせる相乗効果によって、楽曲CDやDVDなどに留まらず、関連グッズの購買も増大していくと考えられます。日本発のグローバルグループの結成など海外を視野に入れたアーティストの活動も目覚ましいものがありますが、まだまだ関連商品を海外ユーザーが気軽に購入できる環境が出来ているとは言えず、今後、ECの海外対応など成長の余地が残っている状態です。コンテンツ視聴だけでなく商品やグッズの購入への導線を作り、商品の需要が高まったときに即座に購入できる環境を整備することが必要になっていきます。


著者

BEENOS株式会社

BEENOSグループは越境EC黎明期である2008年より海外転送サービスである「転送コム」事業を開始し、海外発送オペレーションやグローバルなカスタマーサポートなど独自のノウハウを培ってまいりました。海外への販売環境の構築に留まらずお客様の獲得や集客支援も提供しており、手厚い海外販売支援が評価され、BEENOSグループ全体での国内企業の越境EC支援実績は累計5,000件以上(※1)に上ります。また、海外購入サポートサービス「Buyee(バイイー https://buyee.jp/ )」は、多様な配送手段や決済手段、北米やヨーロッパ、アジアへ向けた独自の物流サービスによる国際配送料の安さ、複数のサイトで購入した商品でも同梱できることなど高いサービスレベルが好評で、リピート率も高く、現在会員数は550万人以上となりました(※2)。

(※1)BEENOSグループが提供する「Buyee」「Buyee Connect」およびダッシュボードの提供、越境EC関連サービス「転送コム(https://www.tenso.com/)」、海外マーケットプレイスへの出店および出品サポート、マーケティングおよびプロモーション支援の件数を合わせた数字、BEENOSグループとしての国内企業の越境EC支援実績の累計、2023年10月時点
(※2)「Buyee」と越境EC関連サービス「転送コム」を合わせた数字、2024年7月末時点

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