Eコマースアプリ成長のための3つのヒント

佐々 直紀

Adjustは、モバイルマーケティング分析プラットフォームです。アプリの持続的な成長を目指す世界中のマーケターから信頼されており、広告キャンペーンの効果測定と最適化、ユーザーデータを保護するソリューションを提供しています。Adjustに構築されたインテリジェンスとオートメーション技術、また迅速なグローバルカスタマーサポートが、世界中のアプリを強力にサポートしています。

コロナ禍で、Amazonやその他のEコマースサイトでネットショッピングを楽しむ人が増加しました。総務省統計局の家計消費状況調査によると、二人以上の世帯のネットショッピング利用世帯割合は2021年4月は52.4%となっており、パンデミックでブームとなった前年(47.3%)から現在に至るまで利用者は増加しています。プライム会員がほぼすべての商品を割引価格で購入することができたAmazonプライムデーでは、例年通り具体的な数値は開示していませんが、小売業者の収益は昨年のプライムデーの2倍だったとしています。さらに、Adobe Analyticsの調査結果では、プライムデーの48時間の米国での総売上高は110億ドルと推定しています。また、ECのミカタのレポートによると、2020年のプライムデーに誘発され、NikeとTargetの前週比のダウンロード数がそれぞれ75%と20%増加しました。

アプリマーケティングのエキスパートは、Amazonプライムデー、夏の大セール、年末年始のセールなどの大きなショッピングイベントをMコマース(モバイルコマース)が大きく成長する機会であると指摘していますが、この市場で売り上げを伸ばすには、まずインストールを増やす必要があります。

2020年はあらゆるカテゴリーのアプリが大きく成長した1年となり、Eコマースアプリも例外ではありませんでした。Adjustの「モバイルアプリトレンド 2021:APAC版」によると、Eコマースアプリはコロナ禍でオンラインショッピングを楽しむ人が増加したことが判明し、日本おいては顕著に伸びが見られます。APACのEコマースアプリのインストール数の平均成長率は2020年で前年比27%増、2020年〜2021年上半期は8%増、日本においてはAPACの平均よりも少し高く、2020年に31%増、2021年も平均9%で成長を続けています。さらに、日本でのEコマースアプリのセッション数はAPAC内で最も優れたパフォーマンスをあげており、2020年にセッション数が前年比51%増となり、2021年は17%増となっています。

インストール数やセッション数に伸びが見られる一方、アプリ内滞在時間には成長が見られませんでした。これは、獲得した新規ユーザーを保持したいブランドにとって、戦略を求められることを意味しています。

1. コストを恐れない

Amazonプライムデーでは、多くのユーザーの獲得が期待できる一方で、購買ユーザーを巡る競争が激化しました。ユーザーを確保してショッピングをしてもらうためには、ユーザー獲得に対する予算投下を躊躇してはなりません。Adjustのデータによると、Eコマースアプリの有料広告の割合はオーガニックより高く、APACにおいて業界平均の0.24に対して0.37となっています。さらに、モバイルアプリトレンド 2021:APAC版によると、このEコマースアプリの継続率は、30日目は4.74%ですが、7日目は8.59%と優れた継続率を達成しています。

Adjustのブログでは継続率を高めユーザーのLTVを高めるための様々なヒントを紹介していますので、そういった文献もご参照ください。

価値の高いユーザーを獲得するためには、思い切った予算の投入をおすすめします。コストをかければプライムデーなどのセールイベント時の効果が期待できるだけでなく、一度獲得したユーザーは長期的に価値をもたらしてくれます。大きなセールイベントや年末・年始のショッピングシーズンなど、多くの収益を得られる機会はたくさんあります。

2. 新規パートナーとの連携を検討する

アプリがどんなに優れていても、新たなオーディエンスを見つけてインストール数を増やすには、パートナーの協力が必要です。Adjustの調査によると、APACにおいて広告主が利用しているアプリあたりのパートナー数の全カテゴリーの平均は4〜5つですが、Eコマースアプリは他のほとんどのカテゴリーに遅れをとっています。一般的に、Eコマースアプリはわずか3つのパートナーしか利用しておらず、この数を下回るのはフィンテックのみです。言い換えれば、これはEコマースアプリにとって大きな機会と言えます。より多くのネットワークを組み込むことで獲得チャネルを拡大し、更なる新規ユーザーを確保できる可能性が高まります。まだ利用したことのないネットワークを通して新規ユーザーにリーチすることは、季節に関係なく賢明なやり方ですが、新たなパートナーを試すのにセールイベントは良いタイミングです。

今後こういった機会を活用してパートナーを増やし、どのような結果が出るかを見てみましょう。新規ユーザーに関する新たな情報が得られるかもしれません。

3. リターゲティングをテストする

マーケティングにおいて新規ユーザー獲得は不可欠ですが、ユーザー獲得予算と新規ユーザーを最大限活用するための継続率とエンゲージメントも同様に重要です。(既存のユーザーをおろそかにしていいという訳ではありません。セールイベント時には新規ユーザーの獲得と同じくらいの時間をかけて、既存ユーザーの注目を集めるための戦略を立てましょう。)

もちろん、一部のユーザー離脱は避けられませんが、幸いなことに、Eコマースはリアトリビューションでも優れたパフォーマンスを見せています。モバイルアプリトレンド 2021:APAC版によると、全体のリアトリビューション率(インストールあたりのリアトリビューションの数)は2020年第4四半期に最高0.06でしたが、Eコマースの最高は1.07(第1四半期)と非常に高く、このカテゴリーにとって大きなチャンスがあることを改めて示しました。

重要なショッピングイベントに間に合うよう、離脱したユーザーをアプリに呼び戻すためのリターゲティングをすることで、大きな収益を上げることができるかもしれません。

セールイベントのその先を考える

Amazonプライムデーのような重要なショッピングイベントは、全てのEコマースマーケターにとって見逃せない一大イベントです。ECのミカタによると、日本では今年のプライムデーでプライム会員に新規加入したユーザーの数が過去最多となったとのことです。こういうイベントは売り上げを伸ばすだけでなく、ロイヤルカスタマーを得るチャンスでもあります。セール・イベントで新規獲得したユーザーを長期間保持するための施策を考え、買い物欲に火が付いた消費者をアプリの愛用ユーザーにするためには、継続率とエンゲージメント戦略をしっかり構築しておくことが重要です。


著者

佐々 直紀

Adjustゼネラルマネージャー
1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。