D2C(ネット通販)で上手くいっていない時こそまず「商品」を振り返る

寺田 龍一

『売れるネット広告社』第3コンサルティングチーム リーダーの寺田と申します。

私はこれまで、「ECサイト運営会社のマーケティング→D2C(ネット通販)の立ち上げ→売れるネット広告社」というキャリアを経てきました。

前回の記事では、D2C(ネット通販)で上手くいっていない時こそ、戦略面の「そもそも」に立ち返ることの重要性をお話させて頂きました。
https://ecnomikata.com/column/36984/

今回の記事では、D2C(ネット通販)事業が上手くいっていない際に、実際に「何を考えるのか」ということをお話させていただきます。特に、まず自社の「商品」を見つめ直すことを中心にお話いたします。

前回同様、概念的な話が多くなりますが、戦略を根本から考え直す際には避けては通れない道だと思いますので、どうぞお付き合いください。

マーケットインとプロダクトアウトの考え方

マーケットインとプロダクトアウトの考え方

あなたが商品を作られた際、どのような思い・考えで商品を開発されましたか?

「こういった商品が顧客に必要とされているからそれを作ろう!きっと売れるはずだ!」のような考えでしょうか?それとも、「私自身にこういった悩みがあって、それを解決する商品を作ったらみんな感動してくれるに違いない!」などでしょうか?

他にも色々な考えがあるかもしれませんが、その根幹には、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という考え方があります。

マーケットインとは、ざっくり言うと「顧客が欲しがっているものを作る」という考え方です。製作者の「こういった商品を作りたい」という思いなどよりも、市場を調査したうえで、顧客のニーズに合わせて商品やサービスを開発するわけですね。

逆に、プロダクトアウトとは「企業が作りたいものを作る」という考え方です。自社の強みになる技術や知識等を活用して、「私がいいと思ったものを作る!」という形で進めるものになります。

もちろん、すべての商品が綺麗にこの2つに分かれるとは限りません。両方の考え方を入れて開発している商品も多くあります。ただ、上記の考え方は(感覚的にだとしても)何かしら商品開発の根幹に入っていると思います。

ご自身の商品はどちらの考えで開発されたものでしょうか?それによって取るべきアクションは変わってくるはずです。

それぞれのメリット/デメリットについて

それぞれのメリット/デメリットについて

マーケットインとプロダクトアウト、それぞれ何をすべきかを考える前に、まずそれぞれのメリットとデメリットを確認してみましょう。

・マーケットインのメリットとデメリット
マーケットインのメリットは、顧客のニーズを満たす商品を最初から作るため、無駄が少ないということです。市場調査を行った上で商品を売り出すので、おおよその売り上げ予測も立てやすいです。

逆にデメリットとして、爆発的なヒットはしにくいこと、他社に真似されやすいことがあります。顧客が「ああ、これこれ。これがいま欲しいのよ。」というものを作るため、顧客があっと驚くということは少なく、爆発的に売れるということは難しいわけですね。また、調査のうえで商品を作るというのは、極論どの企業でも可能なことなので、いざ作ったものの、すぐ他の企業に真似されるということも想像できるかと思います。

マーケットインで分かりやすい成功事例として挙げられるのが、「USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)」「ライザップ」などです。このあたりは調べると記事等が大量に出てきますので、気になる方は調べてみてください。

・プロダクトアウトのメリットとデメリット
プロダクトアウトのメリットは、自社の持っている技術を最大限に活用することで、他社が真似しづらい商品を作ることができる点と、これまでの市場にない斬新な商品を生み出せる可能性があることです。さきほどのマーケットインとは逆で、「おお!こんな便利なものがあったのか!」のようなものを作ることができるかもしれず、そうすれば一気に売上を拡大することが可能です。特に、初期採用者(アーリーアダプター)に刺されば一気に拡散される可能性もあります。

逆にデメリットとしては、商品が全く売れない可能性があることです。市場のニーズが顕在化していないものを作るわけですから、それが市場に受け入れられれば一気に売れるかもしれませんが、全く必要とされず見向きもされない、ということもあるわけです。

プロダクトアウトで分かりやすい成功事例として挙げられるのが、やはり「iPhone」です。あとは、カップヌードル等もそうですね。こちらも調べると記事等が大量に出てきますので、気になる方は調べてみてください。

では実際に何をやるか?

では実際に何をやるか?

先ほどのメリット/デメリットのところで、いくつかキーワードが出てきました。何だか分かりますか?

・マーケットイン:市場調査/ニーズ/他社
・プロダクトアウト:商品/初期採用者

です。

マーケットインは視点が市場に向いています。対して、プロダクトアウトは視点が商品に向いています。ということは、それぞれ「市場」「商品」を改めて見直すことが必要になってきそうですね。

上に記載したのは、いわばその商品の【出発点】にあたるものです。この出発点が合っていれば上手くいく可能性もありますが、そもそも出発点が間違っていたら上手くはいきません。

「東京まで行け」と言われても、自分が大阪にいるのか、福岡にいるのか、北海道にいるのかが分からなければ動きようがないのと同じです。それを確認せずに、例えば北海道にいるのに「とりあえず在来線に乗るか」とやっていたら、一生東京には到着しません。この出発点が合っているかを見直すこと、ブラッシュアップすることが、第一に行うべきことです。

マーケットインであれば、
・この商品は(開発段階では必要とされていたけれど)今も必要とされているのか?
・このニーズがあるのは分かったが、うちの商品ってこのニーズを満たすものなんだっけ?
・競合は最近どのような訴求をしているんだろう?今どんな商品が売れているのだろう?


こういったことを考えたり、改めて調査したりするわけなので、もう一度ガッツリと市場調査をする必要があるかもしれませんし、競合分析を徹底的にやり直す必要もあるかもしれません。また、細かい話になりますが、広告のクリエイティブやLPの内容もこのニーズに合ったものにする必要があるでしょう。(完全に個人的な意見ですが)そういった点を細かく調整できる運用型広告の最適化に力を入れると効果が出るかもしれませんね。

プロダクトアウトであれば、
・この商品を欲しがる人って、そもそもいるんだっけ?
・何人か買ってくれた人は、なんで買ってくれたんだろう?
・この商品ってこのままでいいのだろうか。ブラッシュアップしないといけないのでは?


こうなりますから、自社商品を購入していただいた既存のお客様に、徹底的にヒアリングする必要があるかもしれませんし、商品自体の見直しも必須になってきます。また、市場調査を行うにせよ、マーケットインが「何が売れているのだろう」という視点で行うのに対して、「【この】商品が市場に必要とされるか」という視点で行う点で、同じことをやるにせよ得るものが異なるはずです。

また、広告の最適化などに時間をかけるよりも、初期採用者(アーリーアダプター)の目に留まらせるための施策を中心に行った方がいいかもしれません。そうなると、運用型広告の最適化をせっせと行うよりも、インフルエンサーを集めることに時間とコストをかけたほうが良いかもしれませんよね。

マーケットインとプロダクトアウトという、よく使われる【2つ】に分ける方法でも、これだけやるべきことや考えるべきことが異なります。実際、マーケティングではもっと細かく分ける分析もあるため、そういった分析方法をとるなら、さらに手法は異なってきます。「これさえやっていれば売上が上がる方法ってないですか?」という質問をたまに見ることがありますが、結論、そんなものはないわけです。

商材ごとに「こういったことをした方が勝率は上がる」ということはあっても、商材特性によってそれも異なるわけです。ですから、まず冷静に「自分が売っている商品がどんなものなのか」「見直すべきことは何か」を考えることが第一歩です。

まとめ

まとめ

まずは自社商品をしっかり見つめ直して戦略を立て直そう、というお話をさせていただきました。

自分が作った商品に対して、「なんでわざわざもう一回そんなこと考えなければならないのだ」と思われることもあるかもしれません。しかし、意外と見つめなおしたときに、パッと答えられないことも多いのではないでしょうか。(私自身そうでした。)

・競合他社はどこですか?20社挙げてください
・その競合他社の商品と自社商品はどこが違いますか?
・自社商品にしかない強みは何ですか?
・その強みは市場で必要とされているものですか?
・必要としている人の母数はどれくらいいますか?


改めて商品を見つめ直して、もう一度考え、調査等をしないと見えてこないものだと思います。地味な作業も多くなりますし、気が乗らないかもしれません。しかし、事業を伸ばそうと本気で考えた時は、絶対に避けては通れないプロセスです。

それを考える際、さまざまなクライアントと接し、【A/Bテスト】を繰り返してきたことで、良かったこと、逆に悪かったことも含めて、大量に保有している弊社のデータや戦術が役立つかもしれません。

もし、このコラムを読んでいただいている方で、D2C(ネット通販)ビジネスの効果を改善したいという方は、お気軽にご連絡いただけると幸いです。


著者

寺田 龍一 (Terada Ryuichi)

滋賀出身
バンド活動に全力の学生時代を送る。プロの壁を越えられずバンドを辞め、
その後なぜか哲学にはまり大学院へ・・・

気づけば社会人となり、全く経験がないのにweb広告運用を始め、
そのままマーケティングの世界へ・・・様々な人との出会いを経て、仕事の楽しさと難しさを知る。
戦略的に論理的にを大切に、しかし最後は気合で走る、という姿勢で広告運用を続けた結果、
広告効果を2倍以上まで引き上げることに成功。
今後も困難な壁を泥臭く乗り越える。