集客とコンバージョン

山崎 徳之 [PR]

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コラム#5:ECにおけるマーケットクリエーションと人工知能の活用
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6579/

コラム#6:人工知能と要素分類
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6649/

コラム#7:オムニチャネルの目指すもの
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6784/

ECサイト運営における施策テーマ


過去の記事ではパーソナライズした商品目利きを実現するための施策について触れてきましたが、そもそもなぜそうした施策が必要なのかについて考えてみたいと思います。

ECとかネットショップの目指すものは結局のところ利益です。利益は売上から経費を引いたものですから、まずは売上を上げることが重要です。売上とはすなわちユーザーによる商品やサービスの購入です。

売上・購入というのは何で決まるのか、これはいろいろな視点があります。

経営という視点でいうとこれは、市場規模×シェアで決まります。
販売という視点だと、集客xコンバージョンで決まります。

どちらも結果は同じですが、分解の仕方が違います。

さてのネットショップを運営するという立場の場合、市場規模×シェアではなく、集客×コンバージョンという分解の仕方のほうが取り組みやすいでしょう。集客をどう上げるか、コンバージョンをどう上げるかが施策のテーマということになります。もちろんどちらも上がるのが良いのですが、前述したように利益は売上から経費を引いたものですから、経費すなわちコストが低いほうが良いということになります。

集客飽和後に有効な施策とは


これはEC・ネットショップに限らずなのですが、経営もしくは事業というものは経費をどう活用して売上を上げていくかというゲームです。もっというと、売上から原価を引いたものが粗利、粗利から経費を引いたものが利益ですが、一般的にはなぜか、原価というものは売上に比例する費用なのでやむをえない?もので、経費というのは固定費と呼ばれたりもするように売上に関係なくかかる費用なので低ければ低いほどいい、というようなイメージがある気がします。

私が思うにこれは逆で、経費というのは仕組みを作るための投資、すなわち前向きな費用で、原価こそ品質が同じなら低ければ低いほどよいものだと思います。経費という、ある意味手持ちのチップをどう使って仕組み・システムを作り、どう売上を上げていくかが重要です。

さてこの経費をどう集客とコンバージョンに振り分けるのが一番良いのでしょうか。どちらも重要なのですが集客がないのにコンバージョンは発生しないので、まずは集客に費用を投下します。

これはだいたいが広告になります。販促費といっても良いでしょう。ところがこれはある一定のボリュームになると飽和し始めます。費用対効果が悪化するということです。

集客が飽和し始めたあたりからは、コンバージョンの向上に費用を投下して、集客したユーザーに対する売上の最大化を図るのが良いということになります。

もっともこれは、「ある時点から広告効果が飽和しはじめる」という前提があるため、もし広告効果が飽和しないような市場・マーケットがある場合にはひたすら集客に費用を投下しつづけるほうが良いケースもあるかもしれません。ただ、飛ぶように売れる人気商品などの例外を除けば、大概のケースでは広告効果というのはまず飽和します。

コンバージョン向上に最も寄与するEC機能


ところが、先ほどの原価と経費に関する誤解と同様、集客のための費用とコンバージョン向上のための費用にも誤解があることが多いのです。集客のための費用というのは、まあだいたいが広告費ですが、これは費用をかければかけるだけ売上に貢献するという、原価に近いイメージがあります。実際これは経費といっても固定費ではなく変動費なので、そういうイメージなのでしょう。ただ材料などとちがって、売上に直接比例しません。線形ではないということです。飽和するにしたがって売上に対する比率がどんどん上がっていきます。

一方コンバージョンを向上するための経費というのはおおむね固定費のため、マイナスのイメージを持たれる傾向があるようです。集客が飽和して以降は、費用対効果の下がっていく広告をかければかけるだけ利益の絶対額はともかく利益率は下がっていきます。この費用対効果の悪化している部分の広告費を使って、いかにコンバージョンを上げるかという課題に取り組むかが、集客が飽和して以降に必要な施策です。

もちろんそれにはいろいろな取り組みがあります。インフラに投資してレスポンスを向上させる、使い勝手の良いUI・UXを実現して離脱を減らす、カスタマーサポートを充実させて安心して買い物ができるようにするなど様々です。

さてここで、ECに必要な機能はなにかについて整理してみましょう。それはズバリ「商品検索・決済・配送」です。基本的にECにはこの3つの機能しかありません。

このうち、コンバージョン向上に最も寄与するのはなにかといえば、これは「商品検索」です。次回はネットショップの売上を上げるためにどうコンバージョンを上げるのか、そのために商品検索という機能をどう改善するべきかについて考えてみます。


著者

山崎 徳之 (Noriyuki Yamazaki )

青山学院大学卒業後、アスキー、So-netなどでネットワーク・サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータホテルを構築・運営の後、海外においてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現株式会社ゼロスタート)を設立、代表取締役就任(現任)。EC向け商品検索やレコメンドエンジンの「ZERO ZONE」シリーズを開発・販売している。

http://zero-start.jp/