行動予測は労働集約から設備集約へ

山崎 徳之 [PR]

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コラム#8:集客とコンバージョン
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6894/

コラム#9:コンバージョン向上 ー 検索アクションの最小化
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6965/

コラム#10:コンバージョン改善 ―がっかりアクションを減らす3つの改善ポイント
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/7032/

行動予測実現へのアプローチ


これまでの記事で、ECにおけるポイントをいくつか挙げてきました。パーソナライズ、オムニチャネル、ビッグデータ、集客、商品検索、機械学習などです。

結局のところ、これらは全て共通の目的を果たすためのアプローチです。それは何かといえば、消費者の行動予測・購買予測に他なりません。オムニチャネルやビッグデータ、広告、商品検索、機械学習これら全てが消費者の行動をどう予測するかの各種の手法です。パーソナライズはそのための概念というか、行動予測を言い換えたものです。

以前にプライベートDMPというキーワードが流行りました。ところが今はあんまり聞きません。なんでかというと、実は全然目新しくないからです。DWHやデータマイニングのシステム構築を流行りの言葉で言い換えただけです。

以前に触れたレコメンドを人工知能と呼ぶ例もそうですが、前からあるものを違う言い方をしているだけものは注意が必要です。結局いつも必要とされるのはパーソナライズであり行動予測です。新しい呼び方をしようが、その本質は変わりません。

チャレンジの粒度の変化


さてこうした一連の取り組みには全て「チャレンジ」が必要です。

日本語でチャレンジと書くとちょっと違和感がありますが、英語で言うchallengeは「試す」というような意味があります。認証でいうチャレンジレスポンスのチャレンジです。データをかき集めてなんらかの処理を施し、それに基づいたパーソナライズすなわち消費者の行動予測についてチャレンジを行います。噛み砕いて言えば「買ってくれそうなものを表示する」ということです。

それに対してどうユーザーが反応するか、すなわちレスポンスがまた次のチャレンジのための情報になっていきます。私が思う大きなトレンドの変化として、このチャレンジの粒度の変化があります。

特に日本では、かき集めたデータをアナリストと呼ばれるような専門家達が分析に分析を重ねて、それによって導かれた結論をECに導入するというようなアプローチが主流でした。これに対して米国とか、日本でもすでに一部では、もっとライトなチャレンジを山程繰り返してそこから正解というか本質を導き出すアプローチが主流になってきています。いわゆる仮説検証アプローチとかABテストはこういったスタンスに基づくものです。

かのウォルマートは一ヶ月に144,000,000,000,000,000回のチャレンジを行っているそうです。

これだけの母数があると、すでにそのチャレンジ自体がかなり有効な情報源です。アナリストが不要になるとはいいませんが、アナリストというのは労働集約アプローチです。そのためアナリストの養成が重要とか確保が重要というような話題も一時期ありましたが、それよりはこの労働集約をいかに設備集約に置き換えることができるかが、今後のECの成否の鍵を握ります。

労働集約から設備集約への移行


労働集約を設備集約に置き換えると言っても、人工知能が進化して人間と同じような思考ができるようになるということではありません。シンギュラリティといういかにも流行りそうなキーワードもこれまた一時期乱舞しましたが、そんなことは起こりません。人間と機械では得意なアプローチが違います。

仮説に基づいて144,000,000,000,000回ものチャレンジを行い、そのレスポンスを集計するとかはいかにも機械が得意なアプローチです。プロの棋士のように深い思考を経たものすごい精度の高い予測よりも、シンプルな仮説に基づく山のようなチャレンジのほうが、成長を続けるECにとってはよりふさわしいといえます。人間の高度な思考はむしろ、そうした設備集約のシステムをどう作るかという面で活用されるべきでしょう。

プライベートDMPやデータマイニングシステムというのは、言葉としてはカッコいいですが本質は受託開発です。受託である以上、残念ながら人月ベースでコストが見積もられます。多くのエンジニアが気づいているように、人月ベースでコストを計算して納品されるシステムというのはあまり幸せにはなれません。受託開発がいけないのではなくて、受託開発を人月ベースで見積もる日本の商習慣に問題があります。

だいたいどんなジャンルも過渡期から黎明期は受託開発の比率が高く、テクノロジーの進歩や市場の成熟によってそれがエンジンやパッケージなどに移行していきます。日本では今はまだまだ消費者の行動予測は受託的なアプローチ、すなわち労働集約がメインですが、これはいずれ設備集約に移行していくのは間違いありません。

一つ思うのは、そうした時に「パーソナライズ」というキーワードがバズワードになるかどうかさておき、定着していくのではないかということです。労働集約でアナリストが予測をする行為は、「パーソナライズ」というキーワードはちょっとしっくりこないですが、設備集約だとなんとなくイメージに近い気がします。


著者

山崎 徳之 (Noriyuki Yamazaki )

青山学院大学卒業後、アスキー、So-netなどでネットワーク・サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータホテルを構築・運営の後、海外においてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現株式会社ゼロスタート)を設立、代表取締役就任(現任)。EC向け商品検索やレコメンドエンジンの「ZERO ZONE」シリーズを開発・販売している。

http://zero-start.jp/