9月1日「防災の日」から考える、EC市場の社会的意義
9月1日は「防災の日」だ。この日を含む一週間は「防災週間」とされている。台風発生が相次ぐ時期でもあり、これを機会に防災について見直すことは大きな意味があるだろう。また、今、インターネットを通じた情報提供や商品の販売が、力となり始めている。実際に、今年の4月に発生した熊本地震では、その力が少なからず活かされてきた。自然災害の被害を最小限に食い止めるためにはどのようにしたら良いのか、インターネット、そしてECはどんな働きができるのかを、まとめた。
防災の日に対する人々の意識
9月1日が「防災の日」とされたのは、1960年9月1日に発生した、関東大震災を受けての事だ。また、この時期は台風の襲来が多い時期ということもあり、災害への備えを怠らないようにという、戒めも込められている。
SBI少額短期保険株式会社が実施した「地震防災に関するアンケート」(調査機関:2016年8月5日〜8月7日 / 調査人数:563名)によると、「9月1日が防災の日であることを知っている」人は59.3%、「防災の日があるのは知っているが、9月1日ということまでは知らなかった」人が13.3%で、防災の日の認知度は7割超となっている。
地震や防災に関する知識をどこで得ているかという質問に対しては、「インターネット」(45.3%)が「テレビ」(66.6%)に次ぎ、「新聞」(30.7%)を超える割合となっており、インターネットの情報源としての影響力が大きくなっていることが分かる。
インターネット経由で得られる防災情報というのは、ニュースサイトなどももちろんあるが、ブログやSNS、企業が発信する情報なども含まれるだろう。インターネットにより、誰でも世界に向けて情報を発信することができるようになった。それは可能性でもあり、同時に責任であるということを、特に非常時には強く意識する必要があるだろう。
また、被災時の連絡手段としては、「携帯電話でのメール」(44.9%)、「災害用の各種伝言サービス」(40,0%)、「携帯電話での通話」(39.6%)がやはり上位に来ているが、その次に「TwitterやLINE、Facebookなどのソーシャルメディア」(23.1%)と、SNSの影響力も小さくないことが分かる。
さらに、NTT東日本、NTT西日本では、災害時の安否情報をより確実に確認できる手段として、「災害用伝言ダイヤル(171)」および「災害用伝言板(web171)」を提供、運用している。これらは通常、災害時にのみ運用されるが、防災週間にも体験期間として提供、運用される(今回は8月30日(火)9時〜9月5日(月)17時)。また、災害用伝言板については、NTTドコモ・ソフトバンク・auの3社も、災害時に開設をしている。
お客様を守る!ECサイトでも防災啓蒙
防災の日を前に、防災について啓蒙するキャンペーンやイベント、サービスや商品などを展開しているECサイトもある。
例えば、株式会社大塚商会が運営する通販サイト「たのめーる」では、8月22日(月)より「防災用品お試しキャンペーン」として、防災に関するアンケートに応えると、抽選でたのめーるで扱っている防災グッズが当たるキャンペーンを行っている。
防災グッズというのは、普段は中々注目されないが、備えておくにこしたことのない存在だ。キャンペーンなどで目を引くことにより、顧客にその必要性を知ってもらうことにもつながるだろう。それは、ただ商品が売れるというだけでなく、広い意味ではお客様の命を守ることにもなるかもしれない。
また、株式会社エアでは、App Storeにて「防災ログ〜非常食・グッズの管理期限」を8月15日より配信している。「防災ログ」は、非常食・備蓄食料・防災グッズなどの防災を一括管理することができるアプリだ。
防災グッズのよくある課題として、気づいた時には賞味期限が切れていた、電池が切れていたなどがある。それを防ぐためには、定期的にチェックの機会を設けると良いと言われるが、こういったアプリを利用することでより簡単に管理ができるようになるだろう。アプリというのは、常に目に触れるところにあり、メール等よりも確実に情報を届けることができる可能性が高いため、スマホ利用の高いECサイトでは活用の価値が高いのではないだろうか。
防災の日は、非常食など、「防災に備えるための用品を、“更新”するための日」と位置づけ、点検を促すことで、消費を生むチャンスにもなり得る。それは、ただモノを売るというのではなく、生活に密着してるECだからこそ、お客様との関係性の中で、「防災」という気づきを与えながら、かつ商売につなげることもできる。こういった視点が、ネットショップにおいては大事なことだと思う。
防災の日に、ECの存在意義を考える
災害時のECの在り方として、今年の4月に発生した熊本地震では、大手モールやサイトによる募金や、その後の継続的な支援などが行われた。また、5年前の3.11大震災についても、今でも続く支援が行なわれている。
ECの強みとして、全国各地にお客様がいること、そのお客様にモノと情報を届けるノウハウを持っているということがある。それは、災害時において、最も必要とされることでもある。また、お客様とのつながりは、災害直後だけでなくその後の継続的な取り組みや、今回のような、そもそもの防災にも活かすことができるだろう。
EC市場が拡大していく中、この市場は、ただモノを売るためだけにあるのではなく、社会のインフラとして、次の段階の役目を果たしていくこともできるのではないだろうか。