あなたは大丈夫? 知っておくべき景品表示法「二重価格表示」とは?

30日、毎日新聞は楽天の社員がインターネット上の仮想商店街「楽天市場」の出店業者に不当な二重価格表示を指示していた問題で、消費者庁が同社幹部に再発防止策の実施を求める要請書を手渡したと報じた。

EC業界を一時震撼させた楽天の二重価格表示問題だが、昨年11月3日〜7日に行われた「楽天日本一セール」で、出店店舗が元値の不当な引き上げを実施していたとの疑いが浮上したことが発端であった。問題を起こしたとされる17店舗には、1ヶ月の営業停止という処分が下されたが、果たしてこの二重価格表示問題は楽天のみに言えることなのだろうか。

二重価格表示の基本をおさらい

二重価格表示とは、商品やサービスを提供する際に、実際よりも著しく有利であると思わせる表示のことだ。「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律の第4条第1項第2号に定められている。


第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

……

二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの


違反した場合には内閣総理大臣から措置命令が出され、その命令に違反した者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される。

法律ではそういった表示を「不当表示」と定めており、例えば「通常価格10,500円、割引率50%OFF、販売価格5,250円」と表記して商品を販売している場合に、その商品を以前に10,500円で販売した実績がなければ、根拠のない自社旧価格を比較対象とした「実際のものより著しく有利な取引条件であると誤認させる表示」に該当するため、二重価格表示だとみなされる。他にも、比較対象価格として「架空のメーカー希望小売価格」「根拠のない市価」などを用いて自社の商品やサービスの販売価格を安く見せかけることも、二重価格表示にあたる。

具体的な「二重価格表示のルールについて」

埼玉県消費者生活支援センターの「景品表示法(二重価格表示のルールについて)」のページでは、過去の販売価格を対象とした二重価格表示に関して次のようなルールがあると示している。

よく、「当店通常価格」や「セール前価格」などと表示されているもので、次のようなルールがあります。

過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます。(例1)。
販売開始から8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます(例2)。
上記(1)や(2)を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過している場合には、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません(例3)。
販売期間が2週間未満のときは、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません(例4)。

※「景品表示法(二重価格表示のルールについて)」より一部抜粋

実は暗黙のうちに放置されていた問題?

いつでも1,980円で買えるにもかかわらず、「通常価格4,980円のところ……」と表記してしまう店舗は、何も楽天だけではないだろう。これはもちろん景品表示法に引っかかるものなのだが、今まで「暗黙のうちに放置されていた問題」なのではないだろうか。

楽天は、今回の件を受け様々な対策を打ち出した。まずは「元値の種類の限定」である。これまで、価格の表記は出店者ごとにバラバラであった。「通常価格」「定価」「希望小売価格」「参考価格」「メーカー希望価格」「店頭価格」など、多岐に渡っていた。これを「当店通常価格」と「メーカー希望小売価格」の二通りに統一したのだ。

そのほかにも、「通常価格の販売実績のモニタリング強化」がある。価格をモニタリングし、過去2週間以内にその元値で販売していた実績があり、8週間以内に合計4週間以上その元値で販売実績があるものに関してのみ、当店通常価格として登録が可能だ。

二重価格表示は「値ごろ感」を伝えるために、料金<価値をアピールする手段として使われていたのだろう。しかし、金額だけで体感価値を高めるのは、あまりにも無粋ではないか。そもそもの目的は、料金<価値を示すことにあり、それならば二重価格に頼らずとも、充実した商品説明やサイトの拡充など、ほかの手段を使って価値を伝える方法は多くあるはずだ。一刻も早く、店舗が二重価格表示以外で商品の価値を訴求する方法を理解し、不当な価格表示が一掃されることを願うばかりだ。