売上アップの鍵は「返品」? 返品条件を見直す通販事業者が増加

ネットショッピングにおける返品条件を見直すことで、売上の向上や顧客獲得を図る通販事業者が増えている。ネットショッピングでは購入前に商品を手に取ることができないため、利用を躊躇する消費者も少なくない。

顧客都合の返品も受け付け

アマゾンジャパン(東京都目黒区、代表取締役社長:ジャスパー・チャン)は自社販売しているファッション商品を対象に、サイズやイメージ違いといった顧客都合の返品に無料で対応。靴やバッグのネット通販をおこなうロコンド(東京都港区、代表取締役社長:田中裕輔)は、返品対応期間を短縮して取扱い商品を増やし、合わせ買いを促進することで売上高が倍増している。

通販の難点として、実物を見て選べないことや試着ができないことが頻繁に挙げられるが、通販事業者は返品しやすいシステムを提供することで消費者の不安を解消、一定のリスクを負った上で新規顧客の獲得や利用の促進につなげているようだ。

通販業界の「返品条件」の常識を覆す

通販企業の多くが返品条件として「顧客都合の返品送料は顧客負担」や「顧客都合の返品は受け付けない」という点が掲げられている場合が多い。だが、この前提を覆して顧客から支持されているのがアマゾンが運営する「Javari.jp」と、ロコンドが運営する「LOCONDO.jp」である。どちらもメインの商材は靴となっている。

両サイトとも顧客都合の返品に無料で対応しており、購入後の試着が可能。靴という通販での購入に躊躇する顧客が多い商品を、少しでも買いやすくするために返品条件を設定したとのことだ。

商品出荷後30日間の返品はほとんど無し

「Javari.jp」は商品配達後365日以内であれば返品を受け付けている。購入後に室内で試着してから返品することが可能だ。返品方法に関しては細かく指定しており、顧客は指示通りに梱包して返品する必要がある。

「LOCONDO.jp」は通販サイトを立ち上げた2011年には、配達後99日間の返品を受け付けていたが、返品データを検証した結果、商品出荷後30日以降の返品はほとんどないことが判明した。その結果、2013年4月から返品受付期間を「出荷日から30日間」に短縮。従来の返品期間では取扱いが難しかったアパレル商品の取扱いも開始した。

「返品」に対する各社の工夫とは

ロコンドは、商品に宅急便の着払い伝票を同梱することで、顧客が返品しやすいように工夫をしている。返品対応期間を短縮し、取扱い商品を増やすことで合わせ買いを促進。2014年2月期の売上高は前期比倍増の約40億円であった。返品率は30%弱で従来と変わらないという。

アマゾンジャパンは自社販売のファッション商品に関して、配達後30日間の返品を無料で受け付けている。サイズやイメージ違いといった顧客都合の返品理由にも対応しており、顧客が試着後に返品することも可能である。返品率や通販サイト単体の業績は明かしていないが、サイズに不安を持つ顧客が多いために、顧客が自宅で試着できるようにしたという。

世界的に見直される「返品サービス」

オランダ国内で展開するJeansOnlineは「Easy Fit & Return」を利用することで、購入したジーンズが配達された際に、配達ドライバーが玄関先で15分間だけ待機し、顧客はその間に到着した商品を実際に試着してみることができるというサービスを実践している。

万が一、サイズが合わなかった場合には、顧客はその場でドライバーに商品を返品することができ、購入代金も後日自動的に返金されるという画期的なサービスである。

ネット通販での購入を躊躇する顧客に対して、返品条件を見直し、顧客が「返品しやすい」工夫をすることは、販売促進において非常に有効な手段と言えるのではないだろうか。ネットショップ側のきめ細やかなサービスを通せば、ネットショッピングへの偏見が解消するばかりでなく、より積極的にネットショッピングを利用してくれるキッカケになるかもしれない。