独占【味の素やカゴメInagora協働の裏側】越境ECでこれが大事な理由

石郷“145”マナブ

これからのInagoraの大事な局面を担う中山雄介氏(左)と津田茂寿氏(右)に独占で直撃した

 物事には順番とルールがある。これは、最近、Inagora株式会社(代表取締役社長 翁 永飆 以下、Inagora)にいって、越境ECを進める企業のやり方で、気がついたことである。Inagoraは「ショッピングに国境はない」をキーワードに、日本の商品の良さやメーカーの良さをライフスタイルと合わせて、世界中へと発信するためのベースをアシストする企業である。

 一朝一夕では越境ECはうまくいかないものなのであり、しかし、この会社の考えを聞いていると、まさに、物事には順番とルールを考えて、新たな局面で動いていて、通常の越境ECの視点とは違った気づきがあったのだ。それを教えてくれたのが、同社の中山雄介氏と津田茂寿氏なのだ。例えば、先日の味の素やカゴメとInagoraとの協働においても、バックで動いていたのは、中山雄介氏。

味の素との連携の舞台裏

 なぜ、彼の名前を挙げたのかといえば、実は、彼は元Amazonの出身者である。なぜ、ここにAmazon出身者の力を必要としたかに秘密があって、実は、今話した通り、古くからある日本を代表する食品の老舗などを、Amazonという全く新しいマーケットプレイスに取り入れるために、交渉に向き合ってきた張本人なのである。

 Inagoraは、「豌豆」というアプリで中国の購入者が動画と記事を通して、日本の正規品メーカーの人気商品をインターネットで購入することができる環境を作っている。ただ、ここを発展させる要として、まずは有力メーカーへの働きかけを強化し、そのラインナップにそれらの企業の商品を入れたいとしているのだ。直販ビジネスの発展が、結果、マーケットプレイス自体の価値もあげると考えているからだ。

 今でこそ、Amazonにしても、その直販のビジネスにおいて、大手メーカーの商品を扱っていて、だから、マーケットプレイスも充実しているのだ。だが、考えてみてほしい。大手メーカーにとっても、Amazonで販売するのが当たり前になったのは、まさに最近の話であり、最初の頃を思えば、黒船的な存在で、本当に商品を卸していいのかという問題があったはずなのだ。Amazonが真摯にメーカーの担当者と向き合い、仕入れるに至るまでを交渉し続けてきたから、成し得た大きな成果であると言っていい。

いま、越境ECで大事なこと

 何気なくAmazonに並んでいる商品の数々は、まさにそうしたそれぞれの部門の知恵と粘り強い交渉の末のことであって、そのノウハウにInagoraは目をつけたのである。越境ECには確かに可能性はあるが、日本を代表する大手企業を動かすのは、簡単なことではない。

 その力を借りることで、直販における盤石な地位を収め、そして仕入れて、流通総額が拡大すれば、おのずと、「豌豆」に出店する店舗への恩恵も大きくなる。まさに、その第一歩に立った動きであり、その努力の結晶こそが、先日発表された「味の素」や「カゴメ」との連携なのである。

inagoraが見据える先に、越境EC発展のヒントを見た

 そして、5月には、津田茂寿氏が同じくAmazonからやってきた。彼はAmazonでヘルス&ビューティでその第一線で、メーカと直販の交渉をして来たのである。これが何を意味するのかはいうまでもないだろう。 
 
 これだけの人材が入るには、やはりそこに可能性を感じるから、というのもあるだろう。「豌豆」というアプリのプロモーションとしての力、そして、配送に至るバッグヤードも意識し、しっかりとしたトータルでの環境を整えているのが、同社が提供する「豌豆(ワンドウ)」に二人は可能性を感じたのだ。

 環境だけでは、片手落ちなのである。なによりメーカーの気持ちを把握し、メーカーの気持ちも考慮した交渉こそが大事だということを忘れてはならない。その意味で、Inagoraにとってもその意味は大きい。

 越境ECの重要性が叫ばれてから随分経つが、日本を代表する会社が動き出し、そして、それが中国の人たちの間で、ブランドと信用と勝ち取ったときに、まさに、Inagoraの本当の力が発揮される。別に、僕は、Inagoraをえこひいきするつもりはさらさらないが、それだけの覚悟で臨むその姿勢は応援してもいいのではないかと思っている。越境ECはいま大事な局面に来ていて、まさにそこで、彼らが果たす役割はとても大きいと思うから。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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