第62回通販・通教売上高ランキング「上位300社、市場規模9%増」の背景を探る

パイが拡大しているインターネット通販市場

インターネット通販はスマートフォンの普及を追い風に、伸び続けている。ネット通販が取り扱う商品は、家電、食品、衣料品、日用品などはもちろん、自動車やマンションのような高額なものにまで及ぶが、今回のランキング調査の好結果の背景には、こうした通信環境の充実があったと思われる。
IT分野の分析を得意とするMM総研の推定によれば、13年度のネット通販市場は前年度比12%増の15.9兆円に達した。これは国内消費全体の5.6%を占める。
今後は一般医薬品のネット販売の解禁などのニーズも見込まれ、MM総研では15年度には20.1兆円に拡大すると予測している。

インターネット通販の伸びを象徴する出来事としては、昨年「eコマース革命」と銘打って行われた、ヤフーショッピングの無料化がある。
このときは多くの人が、ヤフーショッピングが急速に伸びて、楽天は窮地に追い込まれると予測した。しかし、結果はヤフーショッピングも伸び、楽天も伸び、さらにアマゾンも伸びて、おもな参加者は全員「勝ち」の状態だ。
これは企業が限られたパイを奪い合っているのではなく、パイそのものが大きくなっていることを示している。

通販業界で進む二極分化

通販業界をめぐる状況は、eコマースにたずさわる企業にとって、プラスに捉えることができるように見えるが、本当にそうだろうか?
ここで公益社団法人 日本通信販売協会のデータを見てみよう。
日本通信販売協会が145社を対象として実施した2014年5月度の売上高調査によると、2014年5月度の総売上高は1279億900万円となり、前年同月比で見ると-3.7%と減少。伸び率を商品別で見ると、「衣料品」は前年同月比-2.7%、「家庭用品」は-1.8%、以下「雑貨」-2.6%、「食料品」-9.8%、「通信教育・サービス」-2.3%で、軒並みマイナスであったという。

これはおそらく日本通信販売協会の会員は、必ずしもインターネットに頼っていないために起きた現象だと思われる。通販や民間通信教育を行う企業の中には、新聞や雑誌の広告やダイレクトメールによって顧客を獲得しているところが多い。
つまりインターネット以外の部分が低迷していると考えられる。
また、インターネット通販においても、伸びている企業と低迷・縮小している企業の二極分化が進んでいる可能性もある。

「勝ち組」に入るためには、人材や資金などのリソースをどう活用するか、智恵と工夫をめぐらすしかないだろう。