2016年度「国内アパレル市場調査」から次の一手を考える 〜矢野経済研究所調べ〜
矢野経済研究所が2016年の「国内アパレル市場調査」の結果を発表している。2015年に減少傾向のあったアパレルの小売市場規模はどういう数字を出したのか。またその数字から見えてくる未来のアパレル業界の動向とは。
2016年における国内アパレル総小売市場規模は前年比98.5%の9兆2,202億円と、2年連続のマイナス成長だったという。2016年はインバウンド(訪日外国人客)需要の収束もみられ、百貨店や量販店(GMS)の売上不振等の影響もあり、厳しい市況となった。総務省の家計調査年報によると、衣料品に対する消費支出額も、2015年以降2年連続で減少しており、特に2016年は-7.9%の減少と大きく数字を下げている。
一方で、上場企業を中心とした大手専門店では好調を維持している企業も多くみられる。特に、売上規模の大きい大手専門店による寡占化傾向が一段と強まっているという。このような大手専門店の業績の好調さが市場を底支えしていることによって、国内アパレル市場全体は微減にて踏み止まっているのが実情と言えるだろう。
チャネル別のシェアを高めたのはEC事業
2016年の国内アパレル総小売市場規模をチャネル別に見ると、百貨店は前年比93.5%、量販店は同92.8%、専門店は同100.4%、EC等は同102.7%の1兆4,527億円であったという。専門店とEC等のチャネルが市場を下支えしているが、その成長率は鈍化傾向にある。
アパレル総小売市場規模は、少子高齢化や人口減少の影響により縮小していくとみられている。市場が縮小していく中で、チャネル別のシェアを高めていくのはECなどの通販事業だろうと推測される。
こうしたインターネット系通販企業が引き続き好調を維持する一方で、カタログを主媒体としてきた総合系通販企業は軒並み厳しい状況が続いている。また、実店舗を有する事業者ではオムニチャネル化への動きも活発となっており、各社変革期を迎え「次世代」に向けた施策を講じている。
データから見えてくるアパレル業界のこれから
流通額の頭打ちを強く感じるアパレル業界。こうなるとシェアの奪い合いになってくる。つまり「どこで買うか」がキーワードなのだ。その可能性を広げるべく小売店各社はオムニチャネル化を目指しているし、アプリなどを作ってユーザー一人ひとりに合わせた情報を提供し利便性の向上を図っている。
また、越境ECに挑戦する企業も増えている。国内が頭打ちなのだ。それは当然の流れと言えるだろう。インターネットにさえ接続できれば国内外を問わずPCからもモバイルからも注文できる環境が整ってきている。物流のスピード・クオリティとも格段に上がった。こうしたデータを見た時に、数年後の近未来であればある程度、市場がどう動いていくか、流れは掴めてくるはずだ。さて、ではアナタはどう動く?