楽天が米EC関連2社を買収、海外市場での展開を急ぐ

2社買収で、グローバル展開の足場固め

楽天は2014年9月9日、アメリカのネット通販関連会社イーベイツを買収すると正式に発表した。約10億ドル(約1050億円)で同社の発行済株式をすべて取得し、子会社化する。

イーベイツは「通販関連会社」と言っても、自社で通販を行っているわけではなく、米アマゾンや米イーベイなどのネット通販事業者のほか、ネット通販に力を入れる小売店、旅行代理店などの窓口の役割を果たしてきた。
会員登録した消費者が同社のサイトを経由して買い物をすれば、代金の一部が現金で還元されたり、割引クーポンがもらえたりする特典によって会員数を増やしてきた。昨年12月期の連結業績は、売上高が1億6738万ドル(約177億円)、営業利益は1366万ドル(約14億5000万円)。

楽天は国内の仮想商店街「楽天市場」の運営をはじめ、アメリカやアジアなど13カ国・地域でネット通販を展開しているが、知名度が低いのが問題で、今後グローバルにビジネスを展開するのであれば、もっと知名度を上げる必要がある。楽天を通じて取引された昨年の流通総額1兆7000億円のうち、海外比率は6%。イーベイツが加われば16%まで高まることから、海外での利用者増につなげるのが狙いだ。

楽天は同日に、購買データの解析技術を開発する米スライス・テクノロジーズの買収も発表した。楽天は2013年7月にスライス・テクノロジーズの株式を22.6%保持しており、残りの77.4%を取得した形だ。取得額は1億400万ドル程度だという。
スライス・テクノロジーズは小売店やネット通販での購買データをレシートなどから抽出、分析する技術を持っている。同社の技術を取り込むことは、データを活用するEC事業へシフトしていくのに有効だ。

次の課題は、世界の大手に追いつくこと

楽天は2010年に米バイ・ドット・コムを、2011年には英プレイ・ドット・コムなどECサイトを運営する海外企業を買収してきたが、流通総額の海外比率は約6%程度にとどまっていた。そのため、投資家からは海外展開の遅れが懸念材料とされていたが、長年の懸念材料とされてきた課題に応えたことになる。

今回の米2社の買収によって楽天が得るものは大きい。ECサイトそのものを運営する企業ではなく、関連サービスを提供する企業を買収することでシェアの拡大を狙うことができるだけでなく、資本を集めるのにも役立つと思われる。

楽天の三木谷浩史楽天社長は、「楽天市場の会員がイーベイツに連携する企業の商品を購入できるようになる。2020年には、海外での売上比率50%を目指す」と抱負を語る。

しかし、楽天と世界大手との取引額の差はまだ大きく、この隔たりを埋めるには年数が必要だ。それでも「遅れ」を巻き返す一歩となった意義は大きい。