キャッシュレス時代到来。安全性と利便性を両立する仕組みとは?

利根川 舞

山本国際コンサルタンツ 代表 山本正行氏 山本国際コンサルタンツ 代表 山本正行氏

決済の多様化が進んでいる。信頼や信用に関わる話題でもあるが、ECサイトにとってはカゴ落ち防止施策など、そうした面でも重要視されるものでもあるが、昨今、ネットを離れたリアルな場面でも決済の話題は身近なものとなり、ネットとリアルの両面から決済の知識が求められるようになった。
先日PayPalは「電子決済時代のセキュリティセミナー」と題し、セミナーを開催。電子決済のコンサルを行う山本氏による講演をはじめ、メルカリやPayPalの取り組みなどが語られた。

進まぬキャッシュレス、日本人は”現金”好き?

まず登壇したのは山本国際コンサルタンツ 代表取締役の 山本正行氏。山本氏は電子決済(キャッシュレス)関連事業を専門としており、事業会社の決済サービスへの参入や法制度などの支援を行なっている。

「日本人というのは現金が好きなんですよ。」と山本氏が言うように、日本でのキャッシュレスの普及はまだまだこれから、というところ。

しかし、日本は海外に比べて決済手段が多様化しており、支払い方法は3、40種類にものぼるという。では、多様化する決済にはどのような傾向があるのだろうか。

山本氏によれば、決済サービスの潮流として「グローバルからリジョーナル(地域・商域)」、「BtoCからPtoP」「スマホに依存」の3つがあるという。

■グローバルからリジョーナル(地域・商域)
決済手段として最もメジャーと言えるのはVisaやMasterCardが世界共通化させたカード決済システムだが、現在EUではSEPA(単一ユーロ経済圏)、中国ではUnionPayの利用が多く、VisaやMasterCardに依存しない域内経済ネットワークを確立しており、今後もさらに分断が進む可能性があるという。

■BtoCからPtoP
またフリマアプリや送金システムなど、小売環境や技術の進歩により、個人間での決済というのも増えており、”企業”や”個人”という括りにとらわれない決済も増えている。

■スマホ依存
決済をする際には何かしら媒介するものが必要なわけだが、スマホ決済などの普及に現れているように、事業者はスマートフォンなくしてはサービスを提供できないという時代になってきている。

これからの電子決済のポイントとしては、「若年層が利用形態を大きく変え、当面は多様化が進むと思う」と語った。また、決済を媒介するものがクレジットカードからスマートフォンに移行したように、スマートフォンも何らかに変化していくのではないかと締めくくった。

メルカリの「健全なプラットフォーム運営」

メルカリの「健全なプラットフォーム運営」株式会社メルカリ CSグループマネージャー 中野 健太朗氏

続いて登壇したのは株式会社メルカリ(以下、メルカリ社)のCSグループマネージャーの中野 健太朗氏。

2017年にはメルカリのダウンロード数はグローバルで1億を突破。ここで課題となるのが、利用者が拡大する一方で、規約違反や意図しない利用の増加だ。

若年層や主婦層を中心にフリマアプリが消費のインフラとなりつつある中、メルカリ社にとっても健全なプラットフォームの運営は最重要課題だ。

そこでメルカリでは①未然防止 ②迅速な把握・対応 ③再発防止のサイクルを環境変化やテクノロジーの進化に合わせ、常にアップデートしているのだという。

まず、メルカリでは初回出品時に出品者の本人情報登録を必須化しており、決済方法はエスクロー決済を導入。これにより、代金の未払いを防止しつつ、商品に問題があれば取引をキャンセルすることが可能だ。

また、もし何らかの問題が発生した場合も、約400名体制のカスタマーサポート部隊がユーザーからの問い合わせや規約違反対者への対応を実施。権利者との連携も行っており、偽ブランド品などへの素早い削除体制を構築しているほか、AIを活用した安全対策や保証対応なども行っており、いざというときにも心配の無い仕組みが整っている。

再発防止のための施策としても、消費生活センターや全国の警察との連携によって、再発防止策を協議・実施しているという。

中野氏は「AIに関しては専属チームを作るなど、全力で安心・安全対策にあたっていこうと思います。」とコメントした。

アクティブユーザー2億2700万人突破、PayPalのセキュリティ

アクティブユーザー2億2700万人突破、PayPalのセキュリティPayPal Pte. Ltd.
ディレクター ラージ・マーチャント統括 兼 ビジネス・オペレーション 瓶子 昌泰氏

最後に、オンライン決済サービスを提供するPayPal Pte. Ltd.(以下、PayPal社)のディレクター ラージ・マーチャント統括 兼 ビジネス・オペレーションの瓶子 昌泰氏。

PayPalは現在、200以上の国のユーザーが利用可能となっており、世界では2億2700万人、日本では200万人のアクティブユーザー(*1)がいるという。

PayPalはアカウントにカード情報や住所を登録することによって、個別のECサイトで会員登録をせずに決済できる仕組みであるため、セキュリティは非常に重要だ。

そこでPayPalでは、世界各地の専門チームによる365日24時間の監視システム体制を敷いているほか、PCI-DSSにも準拠するなど世界最高水準のセキュリティで個人情報を保護している。

また、「買い手保護制度」や「売り手保護制度」など、トラブルがあった際に利用者を保護する制度も整っている。ゲームなどの無形商品であっても、条件を満たせば返金の対象になるそうで、記憶に新しいピョンチャンでのチケット問題の際にもPayPalでの支払いを行ったユーザーには返金がなされたという。

最後に瓶子は「PayPalは日本だけでなく、グローバルで成長している会社です。買い手と売り手、ともにPayPalに価値を感じていただくことが重要だと思いますので、情報発信をしながらPayPalを拡大していきたい。」と語った。

(*1)12ヶ月の中で1度でも利用したユーザー

多様化する決済、消費者は何を選択するのか

近年、クレジットカード情報の非保持化に対する取り組みや、6月の改正割賦販売法など、決済関連の動きは確実に増えている。EC業界としても対応しなければならないことも多いため、情報収集は必須とも言える。

また、山本氏が語るように、決済の種類は多様化が進んでおり、LINEやBASEなど決済以外のサービスを提供していた企業が、決済サービスを新たにリリースすることも増えている。

そのような環境の中で、まだまだ現金の利用が多い日本人に対して、いかに利用促進をしていくのか、そして刻一刻と変化する環境の中で利便性と安全性をどのように維持していくのかが、決済業界の課題となるのではないだろうか。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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