可能性十二分の伸び代 TV通販事業の市場規模拡大へ

景気回復など時勢を追い風に 消費者のニーズをつかむTVの底力

通販新聞が行った調査結果によると、2013年度のTV通販各社の売上合計金額は、5,208億円であるという。これは前2012年比で3.6%の伸びとなる。幅広い世代に急速に普及しているネット通販に劣らず、市場規模の拡大を実現した。
24時間生放送テレビショッピングでお馴染みの「ジュピターショップチャンネル」や、世界最大級のテレビショッピング「QVCジャパン」など、業界大手の通販専門放送局をはじめ、放送枠をテレビ局より買い取り通販番組を運営する「テレショッパー」分野での最大手「ジャパネットたかた」の業界復帰など、消費者の生活に馴染みの深い業者の活性化が業界全体の拡大路線のカンフル剤となっているだろう。
景気回復による消費欲向上を狙い、新しい商品の販売を積極的に進めたほか、消費税増税前の駆け込み購入などへの時勢対策という切り口で、番組コンテンツや販売商品そのものの強化を図るなどアグレッシブな取り組みの成果といえる。
これにはECからTV通販へ興味を喚起されたユーザーもいるだろうし、その逆のパターンも考えられるだろう。伸び率の高いECとの相乗効果で、紙媒体のカタログ通販なども含め、通販事業そのものの伸びが話題にあがることも多くなっている。通販への知識を高めたユーザーが、ネット、紙、TVと各媒体を使い分け購入するようになってきている印象が非常に強い。

TV通販事業の今とこれから

名物社長による考えるスキを与えず衝動買いさせてしまう絶妙なプッシュトークや、話術のプロによる実演販売など、「煽り」を最大の武器としてきたTV通販番組であるが、全盛期の勢いと比較してしまうとやはり若干のペースダウンは感じざるをえない。そのような背景でも市場拡大を実現した今、業界の中では次のステップとして海外、特に東南アジア方面への進出を目指す動きも徐々に増えてきているようだ。ECの伸び率も高まる同地域であるが、ユーザーが能動的に欲しい物を探し購入に至るというシチュエーションにネット通販は非常に強いが、逆に、ユーザーの購買欲を促進させ思いもよらなかった商品を受動的に購入へ運ばせるシチュエーションでは、TV通販の持つ商品提案力はネット通販の比ではないだろう。TV通販の本場であるアメリカでの同事業成長と日本での成長を比べても、日本独自の進化を進めてきたことは伺える。その国の文化に沿ったガラパゴス的進化を遂げる性質は、ネット販売と比較しても、よりユーザーの生活に根付いたテレビという接点を介したTV通販の方が伸び代があるといえる。そういった側面で考えると、未だ定着がなされていない地域での驚異的な独自進化を遂げるTV通販市場というものは、決して蜃気楼ではない。
東南アジア進出を始め、まだまだ思わぬ可能性を秘めているであろうTV通販の世界に注目しておいて損はないだろう。