『世界の消費者意識調査2018』が発表される【PwC調べ】

ECのミカタ編集部

PwC Japan グループ(グループ代表: 木村 浩一郎)は、「世界の消費者意識調査2018」(日本語版)を発表した。

世界の消費者22,481人が回答

当該調査は同社が、世界の消費者を対象に購買行動を追跡し、小売業の将来に関する世界規模での分析と示唆を得ることを目的に毎年実施しており、今回は日本を含む世界27ヶ国・地域22,481人の消費者から回答を得たそうだ(調査時期:2017 年9 月)。日本語版レポートには、日本の消費者1,009人の回答結果などが追記されている。

日本でのAIデバイスの伸びしろは大きい

日本でのAIデバイスの伸びしろは大きい

世界の回答者のうち、Amazon Echo、Google Home をはじめとする自動パーソナルアシスタントやロボットなどのAI デバイスを所有している人の割合は10%という結果だった。また、今後購入予定があるとした回答は32%と、関心が高まっていることがうかがえるとしている。

国別の所有率では、最も早くに販売を開始した米国は16%、日本と同時期(2017 年以降)に販売開始の中国が21%で最上位、次いでベトナム(19%)、インドネシア(18%)とアジア勢が続いている。これに対し、日本の所有率は4%程度にとどまっており、「今後購入予定もなく、関心がない」との回答も約70%と、他国より関心が低い結果になったようだ。

また同社は、日本においても企業に関しては、店頭に設置したデバイス(マジックミラー、動画カメラなど)にAI を組み合わせ、来店者の行動や商品への関心などを把握して品揃えやプロモーションに活用するなど、成果をあげる事例が見られ、消費者の認識していないところでAIを導入したサービスが展開されており、企業によるAI活用のさらなる拡大には期待が高まっていると分析する。

いまだ実店舗での購入が際立つ日本市場

いまだ実店舗での購入が際立つ日本市場

モバイルデバイスを利用した購入は世界で17%と過去6 年で倍増しており、PC を利用した購入(20%)を超える勢いだ。e コマースの成長は依然として続いており、回答者の59%が大手eリテーラーで買い物をしている。また、日本における大手eリテーラーの利用は90%を超えている。

しかし、実店舗が主要チャネルであることに変わりはなく、その利用も伸びている。今回の調査では、実店舗で週1 回以上購入する消費者の割合は、2015年調査を底に増加傾向にあり、2018年は44%に回復しているそうだ。日本の実店舗利用の割合はさらに高く、64%になっている。

同社はこの点について、実店舗を訪れる消費者が今なお確実に存在していることから、すべての小売業者にとって新たな挑戦によって成功を手に入れる余地は残されており、その際に鍵となるのは、感性に訴える社会的体験で消費者を引き付け、実店舗での買物に繋げることだと分析している。

データ利用に寛容でもプライバシーには敏感

データ利用に寛容でもプライバシーには敏感

小売業者による消費者データの活用に関する調査結果では、世界の回答者の41%は、小売業者が自分の購入パターンを把握して、自分に合った提案をしてくれることを容認している。その一方で、小売店の近くにいることを検知してモバイルにパーソナライズされたオファーが送られてくることを望まない消費者は37%に達し、望むとの回答(34%)を超える結果となっている。

買い物をする際に考慮するポイントについて日本と世界で差

買物をする小売店を選ぶ際に、価格のほかに考慮する要素の第1位から3位までを尋ねたところ、世界では「品揃え」(37%)に次いで「ブランドへの信頼感」(35%)が重視されている結果になった。中でも、ブランドへの信頼を「第1位」に選んだ人の割合は14%と、他の要素を抜いて最多となりました。この比率は、中国では21%、米国では16%になっているそうだ。

一方、何を買うかを決める上では他人の意見を判断材料として重視している。買物に関する情報を得るための利用メディアは、第1位が「SNS」(37%)、次に「小売業者のウェブサイト」(34%)と「価格比較サイト」(32%)が続いている。一方、日本の第1位は「価格比較サイト」(47%)で、「SNS」は第3位の24%となったが、若い年齢層では両者の割合は僅差になっているとのことだ。

日本人は無料配送好き

今回の調査では、大手eリテーラーが、配送サービスに関する消費者の期待を引き上げていることが明らかになった。大手eリテーラーの各種特典つきサービスにおいて、利用者の3 分の1 が最も重要な特典の第1 位に「無制限の無料配送」を挙げており、その割合は72%に達している。日本の同回答は85%で、より重視する傾向にある。

追加費用なしのオプション評価では、「返品時の配送無料」が世界(65%)、日本(60%)ともにそれぞれ最も大きな魅力となっている。日本において次いで多かったのは「指定時間配達」の56%で「同日配達」より上位となった。日本では約束した条件で着実に届けられるサービスの実現が求められている結果になった。

同社はこの結果から、配送面での高いハードルを乗り越えて、なおかつ収益性を維持できる体制を構築することには、いまだ明確な答えはないといえるが、今後はさまざまな新しいアイデアを試してみることで突破口が開ける可能性がある。特にラストワンマイルの配送については、ドローンや配送ロボット、スマートロッカー、クラウドソーシングによる配送など、複数の手段の組み合わせが有効になってくるものと見込まれると分析する。

日本の消費者は悲観的?

世界の消費者は今後の自国の景気動向については楽観視しており、現在より良くなるもしくは同程度との回答は7割を超えている。今後1年間の消費傾向として、支出を増やす(37%)もしくは同程度(38%)と回答した消費者は全体の4分の3程度となり、当面財布のひもが締まる傾向にないとも言える。一方で、日本の消費者では、これまでと同程度との回答が43%で、世界の消費者ほど楽観的ではない結果になった。

PwCコンサルティング合同会社の消費財・小売・流通担当パートナーである矢矧晴彦氏は、今回の調査結果を踏まえて、以下のように述べている。

「今回の調査結果においても依然として日本は、eリテール市場の成長、および消費者・企業双方でのデジタル技術の活用などの面で、欧米や東南アジア諸国(開発途上国含む)と比べ進展が遅い結果となりました。世界に事業を展開している日本の小売り企業がグローバル競争に勝つためには、中国のように進んでいる市場に、オンライン・デジタルの研究開発拠点を設けて推進していくなど、より大胆な施策が必要になってくるでしょう」

世界的に拡大を続けるEC市場だが、今回の調査結果からは、日本の同市場での遅れを示唆する内容が多く含まれていたようだ。この点はすでに従前より各方面から指摘されてきた事ではあるが、これからの世界市場で生き残るためにも、官民をあげた具体的案施策が求められていると言えそうだ。

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