国内EC市場規模は2018年に20兆円超、影響し合うネットとリアル/野村総合研究所
■拡大を続けるEC市場
野村総合研究所によると、2012年度に10兆2千億円だった市場規模は18年度には20兆円を超える見通しだ。とくに現在1割程度とされるスマホ経由の取引は「18年度には3割を超える」という。
ECでは近年、食品や衣類、雑貨などの利用が急速に伸びている。
衣類・靴などのファッション分野では、楽天、アマゾンをはじめとする大手ECサイトのほか、ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイなど専門ECサイトの躍進が著しい。
また、大手スーパーの多くが既にネット事業に参入しており、今後も都市部を中心に利用が増えると見込まれる。野村総合研究所では、「今のところ、利用者は20代から30代の共働き世帯や子育て世帯が中心だが、徐々に利用者層は拡大していく」と予測している。
■ネットに「食われる」リアル市場も
一方、店舗では商品を購入せず、携帯電話や自宅のパソコンからECで購入する「ショールーミング」が問題になっている。
消費者が店頭でECサイトの価格をスマートフォンで検索し、店頭価格と比較して、店頭の方が安ければその場で購入し、ECサイトが店頭より安ければECで購入するという購買行動だ。リアル店舗ではこの打撃を受けているところも多い。
今後はリアル店舗とECサイトの競争激化もひとつの軸となっていくと予測されるが、消費者が複数の店舗の同一商品を見比べること自体は、昔からある行動だ。ただ、その比較作業が格段に容易になり、どちらかというとリアル店舗が受ける影響が大きいのが、リアルにものを売る側にとっては怖いところである。
■リアルからネットへ、ネットからリアルへの波及
野村総合研究所では、オンラインとオフラインの購買活動が連携し合う、または、オンラインでの活動が実店舗などでの購買に影響を及ぼす「O2O(オーツーオー)」の活用にも注目している。「O2O」はOnline to Offlineのことだ。インターネットで見たものをリアル店舗で探すこともあるので、消費者はリアルからネットへ一方的に流れるわけではない。
野村総合研究所では、O2Oでのマーケティングモデルとして「ARASL」を提唱している。 ARASLとは、「Attention(認知)」、「Reach(誘客)」、「Action(購入・利用)」、「Share (共有)」、「Loyal(再利用)」のそれぞれ の頭文字を取ったものだ。
商品やサービスをネット上で認知してから店を訪れて購入・利用し、周囲の人々に感想や評価を広げつつ、商品などが気に入れば再度利用する、という一連の流れを示している。
現状では、ARASLの要素すべてを一貫して提供できている企業は多くはなく、今後、「ARASL」を抑えることで、企業は伸びるというのが、野村総合研究所の考えだ。
また、O2Oから発展、または着想を受けた形態として、ネット、リアルを問わずさまざまなチャネルから顧客にアクセスし、最終的にリアル店舗かECサイトで購入してもらうオムニチャネルにも注目している。
オムニチャネルを実践するにはそれなりの企業規模が必要だが、セブン&アイ・ホールディングスなどが力を入れていることで、概念の認知そのものは急速に広がりつつある。
いずれにせよ、インターネットとリアルビジネスは複合的に影響し合うと見るべきだろう。