Shopify日本上陸から1年で成長した理由「1周年記念戦略発表会」潜入レポート

左から、RiLi渡辺麻翔さん、Shopify徳満泰彰さん、Shopifyマークワングさん、COHINA清水葵さん、COHINA田中絢子さん

 時代は刻々と移り変わっていて、今まで以上にボーダーレスな世の中になってきており、またECの在り方も多様化しているように思う。昨今、時代の波に乗っているのを実感するのがShopifyであり、一年前から日本でローンチして以来、ECに新しい風を起こしてきた。

 昨日、行われたShopify Japan(以下、Shopify)による「1周年記念戦略発表会」ではECにおけるそんな新しさを感じることができた。会場内では、20代の女性を対象とするメディアコマース運営する「RiLi」と155センチメートル以下の小柄の女性をもっとも綺麗に見せる服を提供している「COHINA」が来場して、Shopifyについての魅力を話していて、なるほどと思った。両方に共通するのはSNSを有効活用してECサイトを運営していることだ。

「RiLi」はメディアコマースで世界観を大事にお客様を掴む

「RiLi」はメディアコマースで世界観を大事にお客様を掴む

 「RiLi」は、サイトを見ると、メディアである。商品というよりはそこにまつわるストーリーを大事にしている様に見える。「RiLi」代表 渡辺麻翔さんの話を直接、聞いたのだが、その世界観を大事にしており、それが醸しだす雰囲気に合わせて商品を提案している。

 商品単体でものを見るのではなく、雰囲気を重視するから、世界観の理解が進むうち、サイトへの愛着を生み、女性ならではの“共感”が生まれる。気持ちが通じ合っているから、商品の提案が響くのだ。当然ながら、お客様との意思疎通が大事になってくるわけで、その点、ShopifyはまさにSNSとの親和性が高く、ECの中で、このSNSを通した交流が生かされているわけだ。

「COHINA」はニッチな市場だから世界的視野を取り入れて

「COHINA」はニッチな市場だから世界的視野を取り入れて

「COHINA」もまた僕にとっては印象的な店で、そのターゲットを155センチメートル以下の小柄の女性とニッチなところに設定している。当然、細かな問い合わせが欠かせないわけで、「RiLi」と同じくお客様との意思疎通は大事な要素であり、思うに、共感も大事。そこで力を発揮しやすいのはSNSである。

 特に、僕が興味が惹かれた点でもあり、同店の田中絢子さんと清水葵さんもまた強調していたのは「毎日インスタライブを実施し、インスタライブから商品購入へと導くその流れを重んじていること」である。いよいよこのようなショッピングスタイルを前面に押し出す店舗が出てきている点だ。海外での最新鋭の機能を備えて、自然にSNSからの購入を演出できるからこの点においてShopifyは強みがある。

 これも感じたことだが、かつニッチな商品だからこそ国内だけで見ればマーケットは小さいが、これをShopifyであれば世界との接点が取りやすく、その広大な販売フィールドに向かって、可能性が広がる。おまけに、SNSがテキストでなく、インスタなどの動きのある演出で、伝えやすいという要素がShopifyであれば、販売と直結する。そのメリットは越境ECのハードルが低いという利点と共に最大化されて、商品の勢いを生み出しているわけだ。

Shopifyの世界から始まった成長ぶり

 日本にローンチしてまだわずか1年のShopifyではあるが、勢いに乗る理由がわかったように思えた。僕は従来の型にハマった様な売り方に依存していてはいずれお客様から見放されると思っていて、上記の様な売り方で新しいショッピングシーンを提案するこの会社を面白いと思った。だから「1周年記念戦略発表会」での具体的な数値も気になった次第だ。

 カントリーマネージャーのマークワングさんは、この会見の席上「Shopify は2006年にローンチして以来、成長をづづけ、175ヵ国82万店舗となり、今では利益額が10億7300万ドル(過去12ヶ月)にも登る。その間、会社も社員数4000人を超える規模感となった」と話しており、その勢いを印象付けた。

 また、日本に関しては2017年に参入。ショッピングカートとしては後発ながら2018年における店舗数に関しては一年で3倍増の伸び率、店舗流通額の成長率は2倍の推移を見せる。その背景にあるのはローカライズを進めたことにあり、管理画面などを日本語化したことにある。また、お客様側の決済手段もAmazon Payを筆頭に様々なものを用意してサイトとしての敷居を低くしている。

 これらの成長の中でも伸び率が高いのは、アパレルファッションジャンル。これは先ほどの2店の説明でも書いたところだが、感度の高い若いユーザーが多いファッションでは、フラットな環境でECを提供するこのShopifyの力が発揮されやすいからではないだろうか。

収益のその中身については?

 どこでシェアを握っているのか。国別に見るとアメリカが一番で全体の70%を占める。以下カナダ7%、イギリス6%、オーストラリア4%と続く。店舗数の成長率で見ると大陸別で南アフリカらしく69%。気になる日本を含むアジアは48%。ここでの説明によればそのアジアの中でも日本の成長は著しいとのことだ。

 収益率の割合についても明らかに。Shopifyにはアプリがあり事業者が店に付加価値をつけるためにこれらを利用できるようになっていて、実はこれらソリューションが全体の収益のかなりの割合を占めている。それだけアプリを使いやすく、現に使っているから数字に表れている筈だ。ちなみにこのアプリは続々と日本語化を進めており、日本でもこれらの海外で伸びている要素を取り入れやすくなっているのは注目すべきことだろう。これからはプラットフォーマーもどんなソリューションを備えて、それを事業者にいかに簡単で手軽に提供できるかが、重要な要素になってくるのだろうな、という印象を抱いた。

 なお、アプリは初心者でも実用的なものも多く、例えば、物流といった王道のものもあるが、コンサル的なものもあって、「この商品であれば、Googleショッピングの広告を幾ら使った方がいい」といった指摘をしてくれるものもあったりするようだ。それぞれの店の状況に合わせてカスタマイズして利用できるこの利便性の高さこそが、新しい価値を持つ人たちの心を引き込み、そして、冒頭話した、新しいショッピングシーンを生み出しているのだろうと思った。

 一歩先を行く海外のEC事情の要素を取り入れ、日本に限らず、ECの多様化を推し進めて、日本のコマースにも新たな風を送り込むShopifyは、わずか一年の間で、ECの魅力を引き立たせてくれている。Shopifyを持ち上げるつもりはないが、ただ僕は、多くの店の型にとらわれない一歩先ゆく“オリジナリティ”を期待したいのだ。