トクホの通販での販売が急増!その理由とは? 特定保健用食品の市場動向などに関する調査が実施される
公益財団法人日本健康・栄養食品協会(以下「同協会」)は、特定保健用食品(以下「トクホ」)の市場動向などに関する調査を実施し、その内容を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。
調査概要
[調査方法]
特定保健用食品の表示許可を取得した企業に対して、アンケート方式で2018年度の品目別販売見込額および販売経路別市場構成について調査
[調査対象品目]
1056品目
[実数回答品目]
1055品目
2018年のトクホ市場は微減
特定保健用食品(トクホ)制度とは、厚生労働省の説明を引用すると、平成3年に制度化されたもので、栄養改善法第で定められている「特別用途食品」の一つだ。
具体的には「身体の生理学的機能や生物学的活動に関与する特定の保健機能を有する成分を摂取することにより、健康の維持増進に役立ち、特定の保健の用途に資することを目的とした食品」となっている。
「保健の用途」については「整腸・中性脂肪・体脂肪・歯」などがあり、トクホ製品としては、コンビニやスーパーで「トクホ」食品あるいは飲料として置かれており、消費者としても一般的な小売市場で目にする機会も多いところだろう。
その市場規模について同協会が調べている。トクホの市場規模は、6432 億円となっていて、2018 年度は前回を僅かに下回ったそうだ。
用途は「整腸」が安定のトップ
またトクホの用途別の構成比は、2007 年度から 2016 年度まで「整腸」、「中性脂肪・体脂肪」、「歯」の順にほぼ横ばいで推移していたが、2017 年度に「歯」とコレステロールの順が替わり、2018 年度は、前年度に比べ、「整腸」が59.0%と最も大きく、「中性脂肪・体脂肪」が23.6%、「コレステロール」が5.1%
と続いた。
販路は通販が前年度比129.7%の急成長
販売経路別の市場構成は、調査開始以来、「スーパー」、「コンビニ」が全体の約 5.5~6割を占めていて、構成比率はほぼ同規模で推移している。「スーパー」は、約4割を占めて増減しながら推移しており、2018年度は前年度に比べ100.8%と微増した。
「コンビニ」は、2011年度より増加を続けていたが、2018は前年度に比べ 87.8%と大幅に減少した。「戸配」は、2009 年度を除き約3割を占めて推移してきたが、2011年度をピークに減少し、その後、2015年度に再び増加し、増減しながら推移していて、2018年度は前年度に比べ109.5%と増加した。
「ドラッグ・薬局」は、2009年度に構成比率が倍増し、さらに2013年度も構成比率がほぼ倍増したが、2014年度から減少し、その後ほぼ横ばいで推移していて、2018 年度は前年度に比べ102.9%と微増した。
「通信販売」は、調査開始以来、構成比率が小さいまま推移しているが、2009 年度に大幅に増加し、その後は微増しながら推移していたが、2018 年度は前年度に比べ 129.7%と大幅に増加した。
トクホとECは親和性が高い?
同協会は次のように調査結果をまとめている。調査開始以来、2007年度をピークに減少し続けていた特定保健用食品の市場規模は、2013年度に大幅な回復を示した後、2014年度はやや減少したものの、2015年度から再び増加傾向を示し、2018年度は6432億円と前回を僅かに下回った。
保健の用途別では、トクホ制度発足以来、トクホ市場を牽引してきた「整腸」分野は、2014年度に減少したが、その後は主力の乳酸菌分野の回復により伸長し 2018年度は大幅に増加した。
メタボリックシンドロームの診断基準に関連する保健の用途では、「コレステロール」は2015年度より増加を続けており、今回も前年度に続き調査開始以来の規模となった。「血圧」は 2013年度より減少を続けていたが、2018年度は増加した。「血糖値」は2015年度をピークに減少を続けており、2018 年度も減少した。
2011年度以降、顕著な伸びを示してきた「中性脂肪・体脂肪・肌」は、2007年度をピークに増減しながら推移してきたが、2018年度は大幅に減少した。2005 年度をピークに減少をしている「歯」は、2018年度も微減した。
販売経路別では、「スーパー」、「コンビニ」が全体の約 5.5~6 割を占めており、2018年度は「スーパー」は微増し、「コンビニ」は大幅に減少した。2013年度まで伸長を続けていた「ドラッグ・薬局」は 2014年度より減少を続けていたが、2018年度は微増した。「通信販売」は、2016 年度より増加しており、2018年度は大幅に増加した。
食品の種類別では、2018年度は「清涼飲料水」は大幅に減少し、「乳製品」は大幅に増加した。「加工食品・調味料」は大幅に減少し、「菓子・その他」は増加した。
特定保健用食品は 1991(平成3)年に特別用途食品として制度化され、生活習慣病の一次予防を目的とした健康の維持増進や医療費削減への寄与が期待されており、消費者庁では、2019 年度に特定保健用食品の疾病リスク低減表示の拡充に関する調査事業が予定されている。
同協会では、特定保健用食品が消費者をはじめ、事業者、医療専門家などが理解し、正しく活用できる環境が醸成され、特定保健用食品制度が拡充されることで、国民の健康の維持増進のさらなる向上が図られ、国民医療費の削減にもつながるものと考えられるとしている。
このように安定成長期に入ったトクホ。コンビニでの販売が減少しているということは、同チャネルが限られた販売スペースに数多のアイテムの中から特に「売れ筋」を並べる戦術をとっていることからしても、健康に対して意識の高い特定の層からのニーズが高いということになるだろう。
つまり、かなりターゲットが絞られるとも言える。その意味でロングテールでの販売がしやすいECをはじめとした通販は販売チェネルとしては親和性が高く、実際に同協会の調査でも通販での販売の大幅な伸びが示されている。トクホはECにとっても魅力的なアイテムのひとつとも言えそうだ。