攻めの姿勢で顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」その夜明けはまだ来ず?

ECのミカタ編集部

アイティクラウド株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:倉光 哲男、以下「アイティクラウド」)は、同社との間でカスタマーサクセス領域における協業推進で合意したバーチャレクス・コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:丸山勇人、以下「バーチャレクス」)と、カスタマーサクセスに関する実態調査を実施した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

[調査名]
カスタマーサクセスに関する調査

[調査方法]
ンターネットアンケート

[調査実施期間]
2019年3月20日~2019年3月21日

[対象地域]
全国

[対象者]
20歳から65歳のビジネスパーソン(有職者)26,296人
※パート・アルバイト、専業主婦・主夫、学生を除く

カスタマーサクセスを「よく知っている」は3%

カスタマーサクセスを「よく知っている」は3%同社資料より(以下、同様)。

両社が全国20~65歳のビジネスパーソン26,296人を対象に調査を行ったところ、「カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがありますか?」という質問に対して「聞いたことがある」と回答した人は13.7%の3,603人、対して「聞いたことがない」と回答した人は86.3%の22,693人に上る結果となった。

またカスタマーサクセスという言葉を「聞いたことがある」と回答した人に、「カスタマーサクセスがどういうものか知っているか」と尋ねたところ、「よく知っている」と回答したのは全体の3.0%に当たる793人、「少し知っている」が全体の8.2%の2,170人、「全く知らない」と回答した人は全体の2.4%の640人だった。

「取り組み中」は「知っている」企業の中で2.8%

「取り組み中」は「知っている」企業の中で2.8%

次にカスタマーサクセスを「よく知っている」「少し知っている」と回答した人のうち(N=2,963)、「勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいる部署、または担当者がある/いる」と答えた人は25.5%(757人)、「今後取り組む予定」と答えた人は16.5%(489 人)だった。全体で見ると、こちらも取り組み中企業は2.8%と一部の企業でしか実践されていない実態が明らかとなったとしている。

日系企業と外資系企業で大きな意識の差

日系企業と外資系企業で大きな意識の差

回答者の属性別で見ると、外資系企業に勤務する人のうちカスタマ―サクセスを「聞いたことがある」人は51%、「聞いたことがない」人は49%とほぼ半数ずつだったことに対し、日系企業に勤務する人の認知度は「聞いたことがある」人はわずか15%、「聞いたことがない」人は85%と、大きな認知の差がみられた。

カスタマーサクセスの取り組み状況については、勤務先に「取り組んでいる部署、または担当者がいる」と答えた人は、外資系企業が48%、日系企業が23%。また、「取り組んでいる部署、または担当者はおらず、今後も取り組む予定はない、かつ必要性も感じていない」と答えた人は、外資系企業が3%、日系企業が22%となった。

顧客の成功に向けて「攻め」の姿勢で対応する施策

調査結果にあるように、外資系企業勤務者におけるカスタマーサクセスの認知と取り組み率は高く、必要性を感じている割合も高くなっている一方で、日系企業勤務者の中での認知は低いうえ、必要性を感じていない割合が高い結果となった。

事業形態等の違いはあるものの、カスタマーサクセスが進む欧米の影響を受けやすい外資系企業と、そうでない日系企業とでカスタマーサクセスに関する認知や取り組みに関する温度差がある現状が表れた結果といえるとしている。

さらに従業員規模別で取り組み状況を見た場合に10,000人以上の企業で一番高く、「取り組んでいる部署、または担当者がいる」と回答した割合が44%となった。一方で一番低かったのは10人未満の企業で8%だった。従業員規模が大きいほど、カスタマーサクセスの取り組み実績があり、必要性を感じている企業が多いことが見てとれる。

昨年の2018年は「カスタマーサクセス元年」という声が良く聞かれた一年ではあったが、今回の調査により、全体の3%という限られた人しかカスタマーサクセスを理解していなかった事実が明らかとなった形だ。

米国ではビジネスSNSの「LinkedIn」が昨年初めに発表した「2018年最も将来性のある仕事ベスト2」、そして今年初めに発表した「2019年最も将来性のある仕事ベスト15」のいずれにも、「カスタマーサクセスマネージャー」職がランクインしており、求められるスキル(マネジメント、セールス、カスタマーサービス、リーダーシップ、CRM)や報酬が高く、人気の職種になっているそうだ。

アイティクラウド社は、調査結果については引き続きバーチャレクスと共同で分析を行い、数回に渡って調査結果を発表していき、カスタマーサクセスに関するセミナー等も、アイティクラウド、バーチャレクス両社で今後開催していく予定だとしている。

今回の調査をみても、今後、日本でもカスタマーサクセスが浸透していくのか大いに気になるところだ。カスタマーサクセスは、顧客からの問い合わせ対応など「待ち」の姿勢であるカスタマーサポートと違い、顧客の成功に向けて「攻め」の姿勢で対応する施策だ。

今後カスタマーサクセスが浸透してくれば、顧客との信頼関係醸成や上客を確保した上での持続的な売り上げ向上に向けた施策の主戦場は、カスタマーサポートからカスタマーサクセスへ移行する可能性もある。日本のEC事業者においても、まだカスタマーサクセスが浸透していない今こそ、そこへの注力を通して先行者になり得るチャンスが横たわっているとも言えそうだ。

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